アンペラ
「ゴールドマン教授? ええ、知っていますとも」
パークスは、ちょっと不思議そうな顔をした後、笑顔で答えた。
「やった。今日の俺は、とてもツイているようだ。どうか彼に会わせて欲しい」
「……同じ地球人同士なのに、まだ顔を合わせていないのですか?」
パークスは、秘書のフレネルを車から呼び出した。パークスと同じパンツスーツ着用だったが、スレンダーなパークスとは真逆で背が低く、ぽっちゃりとした豊満なボディが特徴だ。ショルダーバッグのような肩掛け式の携帯端末を持っており、逐一何かの数字を気にしてチェックを入れていた。
丸顔に四角い眼鏡のフレネルは挨拶の後、こう言った。
「ゴールドマン教授と言えば、数少ないS級奴隷ですね。私も常日頃から彼に、ビジネス目的のアプローチを積極的に試みております」
「前に一度だけ、オーミモリヤマ市でお見かけした事がある。ゆっくり話はできなかったが、この時計を貰ったよ」
僕はゴールドマン教授から渡された腕時計のケースを胸ポケットから取り出すと、彼女らに見せた。
「おや、まあ! すごい貴少価値のある品……欲しい」
さすがに商売人だな。金目の物に目を輝かせるように感じるのは、僕の先入観なのか。時計を見せている間にシュレムやアディーの方も見たが、何だかキョトンとしていた。
パークスはフレネルに何か伝えて、ゴールドマン教授の居場所の検索を開始したようだ。
「教授は我々の商売上の注目株ですから、以前より何度も商談はさせてもらっております」
「ふ~ん。それで教授は、どちらにお住まいなんだ?」
パークスとフレネルは顔を見合わせて、微笑んだのだ。
「我々は、日々の商取引にいそしみ、ビジネスを生業としています。当然、有用な情報も商品の一つなのですよ」
「何だ、タダでは教えられないという事か?」
無論、パークスは否定も肯定もしなかった。
「早速ですが、取引に移りますか?」
「いいだろう……何が望みだ。言っておくが地球人の俺は、あまり金を持ってないぜ」
だんだん言葉使いが荒くなってきたような……まあいいか。
「あちらのしゃべる犬が私の望みですわ」
パークスの示す方向にはカクさんがいた。フレネルも彼を指差して眼鏡の下で、にっこりとしたのだ。




