アレーテ
艀はスタリオン高機動車と荷物を満載したトラック、それに高級車をバランス良く乗せたまま、オーミハチマン市のゲートに向かって運河をゆっくりと進んでゆく。
揺れが少なくなった時、高級車の後部ドアが開いたかと思うと、中から女性が颯爽と降り立った。30代後半ぐらいの、まだ若くてメイク上手な美女だ。ウエーブがかかったロングヘアに黒のパンツスーツ、胸元まで大胆に開いた白いカットソーを着用していたが、残念ながら胸の大きさはブリュッケちゃんと同レベルだった。
「大きくて立派な車ね……フロントさえ壊れていなければ、譲ってもらっていたかも」
静かにスタリオンまで歩み寄ったスレンダーな美女は、運転席の僕に向かって微笑みかけた。
「いや、どうも」
我ながらアホな挨拶の仕方だ。どうも美女の前では緊張する。ぶっきらぼうなシュレムも、彼女には素直に頭を下げた。
後席のアディーが小声で言った。
「出た~、すごい偶然。豪商パークス、前に言っていたパークスさんですよ」
「ええ~! あなたが、この街の実力者であるパークスさんなのですか!」
僕は、すぐそばまで来てくれた美女が、まさか話題の人だったとは思いもよらなかった。
「これでは、どこに隠れようが、すぐに分かってしまいそう! あなた……車からしてずいぶんと派手に目立つわよ、オカダ査察官!」
「おお、私の事をご存知でしたか。だったら話が早い」
僕はドアを開けて車から降りると、パークスと話してみることにした。植民惑星査察団の一員である勇敢なスケさんのダメージを修理できる人物を紹介してもらおう。オーミハチマン市で一番の情報通であるパークスならバイオニクスの専門家であるゴールドマン教授の居場所を知っている可能性大である。




