フティア
それを聞いたブリュッケちゃんも、僕の毛布の中に猫のように入ってきた。
右の腕にはマリオットちゃんが絡みつき、ブリュッケちゃんは左の二の腕を枕にして僕に背中をぴったりと密着してくるのだ。
「おいおい……風邪かどうか分からんが、うつるかもしれないぜ」
「遠慮しないで。こんな機会は滅多にないわよ」
右からマリオットちゃんが耳元で囁いてきた。寝る時はノーブラのはずだが、抱き付いてくる腕にムニュッとした乳房の感触が伝わってくる。
「ボクって体温高めでしょう? 暖が取れるといいね」
左からはブリュッケちゃんが、ぐいぐいお尻をくっ付けてきた。
「……あなた達、いい加減にしないと……オカダ君が困ってるじゃない」
右の奥のシュレムが体を起こして僕らの様子を伺った。そして僕の苦しそうな、それでいて嬉しそうな表情を見るなり、ため息をついて再び枕に側頭部を埋めたのだ。
「ふふふ! オカダさん、良かったですね、若いコに囲まれて。私もそこに参加してもいいですか?」
左の奥のアディーが茶化すようにウインクした。……もう十分であります、寒くはありません。
ブリュッケちゃんと、ひとしきりはしゃいだ後、マリオットちゃんは急に静かになった。
落ち付くと、彼女から伝わってくる呼吸と心拍が何だか心地いいな。
「ブリュッケちゃん……お父さんってこんな感じなのかな?」
「え? ヒコヤンは……父はいつも外出して、あまり家に帰ってこなかったから……まあ一緒に寝たのも幼い頃だけだし」
ブリュッケちゃんは顔を上げて、僕の体越しにマリオットちゃんに答えた。
「私、あ~、もちろん姉さんもだけど……自分のお父さんの顔も知らないんだよね」
……確かシュレム・マリオット姉妹は精子バンクを利用して人工授精で生まれてきたんだっけ……。
「父親について何も知らされていないの。今生きているのか、それとも死んでいるのかどうかさえも分からないし……」
マリオットちゃんの言葉に、シュレムは窓の外を眺めながら答えた。
「そうね、私も時々鏡を見ながら思うの、私ってどの辺りが父親似なのかなって。似ているのは、どんな所なんだろう……ひょっとして性格? 成績のいい頭脳? ……何てね!」




