デヨペヤ
第十五章 眠りたい夜
スケさんのおかげで、デュアン総督の元にサバクオニヤドカリの目玉を持って帰ることができる。だが彼女は、我々を守るため身を挺して奮戦し、殊勝にも自らを犠牲としたのだ。
応急措置としてスタリオン高機動車を介して衛星軌道上のインディペンデンス号のコンピュータと、スケさんのそれをコンタクト・ドライブシステムで無線接続する。このバックアップで万が一スケさんが完全停止した時でも、今までの記憶が失われることはなかろう。
「スケさんの生体反応は、戦いのダメージで不安定になっている。この星のテクノロジーでは再起は難しいかもしれない」
「一応30年前のバイオニクス技術はあるみたいだけど、オイラ達のような第4世代は手に負えなさそうだな」
カクさんと会話していると、アディーが話しかけてくる。
「警察署に警備用ロボット犬がいるけど」
僕は腕組みして彼女に答えた。
「そいつは第3世代だろうな……アニマロイドは生体アンドロイドみたいなもんだ。人間の手を離れても自分で食料を確保してエネルギーに変換するサバイバル機能を搭載しているし、少しの怪我ならば自己増殖して治癒することもできるんだ」
「よく分からないけど、すごいのね」
アディーは最初、カクさんを本物のオオカミと勘違いしていたようだ。どこの世界に人語を話すオオカミが存在するというのか。
「えーと……確か奴隷長のゴールドマン……前回地球からやって来た植民惑星査察団のたった一人の生き残りが、生体工学の専門家だったような」
アディーがスマートフォンのような銀色の携帯端末をいじくって的確に教えてくれた。
「生体工学という知識のおかげで、ゴールドマン教授はS級奴隷の地位を獲得していますよ」
「さすがは現職警察官。貴重な情報をありがとう」
更にアディーはゴールドマン教授が現在、オーミモリヤマ市の隣のオーミハチマン市在住と伝えてくれた。
最新型アニマロイドの先端技術は教授にも手に負えないだろうが、スケさんの修理に何らかの力を貸してくれるかもしれない。




