アタラ
僕はコンタクト・ドライブシステムにアクセスして、インディペンデンス号からの衛星画像を分析した。
スケさんから脳内通信が入る。
『オカダ君、カクさんと協力して二人倒したわ』
『ご苦労。熱線映像情報から湖賊は全七人なので、残りは五人だ。ビルショウスキーは市役所から見て10時の方向にあるビルの路地に、護衛と一緒にいる。そいつはRPGを持っている』
『微弱だが熱線反応からみて、パリノーはガソリンスタンドのトイレの中だろうな』
僕とスケさん、カクさんはコンタクト・ドライブシステムによって戦闘情報を共有している。二頭が見たリアルタイムの視覚情報も皆で脳内共有できるのだ。
「シュレム、アディー、それにマリオットとブリュッケちゃん、今度は俺が出てパリノーを回収してくる。催涙弾と煙幕弾を風上に発射するから、窓やハッチは閉めておいてくれ」
「オカダ君~、無事に帰ってきてね」
恐怖に怯えるマリオットちゃんは僕の手を握った。
「心配すんなよ。ほら、ブリュッケちゃんの方が落ち着いてるぜ」
「いや、カルキノスは怖くないけど、湖賊は本当に怖いよ」
ブリュッケちゃんはマリオットちゃんにぴったりと寄り添った。
「アディー、君の拳銃を貸してくれないか? 武器はなるべく軽いほうがよくてな……」
彼女は何も言わず9mm拳銃を渡してくれた。
「シュレム、皆を頼むぜ」
僕はシュレムに握手するとガスマスクを装着した。すると何と、ガスマスクのゴーグル越しにキスしてくれた。彼女の意外な行動にびっくりしたが、幸運のおまじないのつもりらしい。
「こんな所で武器の無駄遣いはしたくないんだがな……」
グレネード弾の爆発を合図にスタリオンから飛び出した。アディーがすぐにドアを閉める。
「フン、どこを狙ってんだい。爆発なんて威嚇にもならない」
双眼鏡を覗くビルショウスキーは、偶然捉えたアディーの婦警姿に酷く反応した。嫌悪感で顔が歪むくらいだ。
「あたしの大嫌いな警官も乗っているよ。母親は警察に殺されたんだ! 絶対に許さないね」
ビルショウスキーは護衛のヒゲの兵隊くずれに命令した。
「RPGを奴にぶち込んでやれ」
「そんな事すると、車はスクラップになるし、積み荷も女もパアになりますぜ!」
「気が変わったんだよ……うっ!」
催涙ガスと灰色の煙幕が、風上から波のように湖賊を包み込んできた。




