プロトゲネイア
第十二章 湖賊ビルショウスキー
パリノーは荷物を取り戻して一安心。だがしかし、バイクのガソリンを、ほとんど失っている状態だ。
「廃墟でガソリンを見付けるのは一苦労だろうよ。ガソリンスタンド跡地でゲットできるまで、しばらくスタリオンで移動してもいいぜ」
僕がパリノーにそう言うと、親切ね、と彼女から感謝された。
「この廃墟では装甲殻類よりむしろ盗賊に注意した方がいいです。湖賊や追い剥ぎが出没して、根こそぎ持って行かれたり、命を奪われたりもします」
婦警姿のアディーが、パリノーに注意を喚起した。
「あなた一人で本当に大丈夫なの?」
シュレムも心配しているようだ。
「ええ、少し油断して捻挫とかしたけど、強盗もカルキノスも今までこいつで撃退してきたわ」
彼女は自慢げにステアーAUGを掲げた。弾切れになっていたはずだが、我々が使用するM4カービン用の弾薬5.56x45mm NATO弾と共通なので補給する事ができる。
ここで改めてスタリオンの車内で重大発表を行う。カクさんは言った。
「怪妖洞が前線基地として使用できないと分かった以上、問題が生じました」
スケさんも続けて言う。
「これからいよいよ北の砂漠地帯に赴き、サバクオニヤドカリを狩りに行きます。当然危険を伴いますし、命の保証もありません。実は女性達は全員、前線基地に残ってもらう予定を組んでいました」
最後に僕も責任ある植民惑星査察官として伝える。
「そこで一旦、南のオーミマイバラ市まで後退して、君達にはそこで待機してもらおうと思っているんだ……」
白ワンピに着替えたブリュッケちゃんは立ち上がる。
「それには反対だ。ボクも連れて行ってくれる約束だったじゃないか」
「協力してくれてありがとう……もう十分だよ。小学生を戦いに参加させる事はできない。亡くなったヒコヤンも反対するだろうし、怪我なんかさせたら申し訳が立たない。大人失格だな」
アディーも強い意志を伝えてきた。
「私には案内役としての使命があります。オカダさん、最後まで付き合いますよ」
黙って聞いていたシュレム、マリオット姉妹は……。
「ここで降ろして、と言いたい所だけど……お目付役として、あなたがカルキノスに食べられちゃうのを見届ける必要があるわ。それに負傷したら誰に手当てしてもらうつもりなの? ねえ! マリオット」
「うん、私もこの星では成人女性だよ。大人の意思を尊重してよね」
アマゾネス達は、サバクオニヤドカリとの戦いに付き合う希望を示した。ただ一人を除いて……。




