アエトラ
「ちょっと~、シュレムさん! どこ触ってるんですか……イヤだ~」
大笑いするシュレムは、背中からアディーの右の膨らみを脇腹ごと手の平で転がしたのだ。
「やめて! やめて! マリオット」
「傷つきやすいピュアな私に、あやまれ~!」
マリオットちゃんは姉をくすぐるのを止めなかった。
「シュレムさんもちょっと、デリケートな所は~!」
アディーも揉まれないように両腕でガードしながら悶絶する。
足湯状態のブリュッケちゃんは、あっけにとられて、ますますのぼせたように赤くなったのだ。
露天風呂の湯気は喧騒を包みこみ、仔猫のようにはしゃぐ4人の笑い声は夜空に吸い込まれて、いつまでも静まる事がなかった。
「……おい、カクさん。静かだが、生きているのか?」
『おお……瞬きするのが、もったいないぐらいだ。生きててよかったな』
「これからどうするんだ」
『全員あれはピンク色だったが……角度を変えて、正面から見たい』
「そいつは、ちょっと危険だ。いくら辺りが暗くなってきたとはいえ……」
……言わんこっちゃない。サウナから出てきたオバ様に、カクさんはあっけなく見付かった!
「あらまあ! こんな所に大きな野良犬が入ってきてるわよ! 誰か~!」
『オカダ君! 緊急事態発生! スタリオンから煙幕の展開を今すぐ頼む!』
「まずい! 早く逃げろ、カクさん!」
ちょうどその時、スタリオンの後部ドアが自動で急に開いた!
「うわぁ!?」
「……あら? オカダ君? 一人で何をしているの?」
非常にまずいタイミングで、スケさんが食事から戻ってきたのだ。
「いや、今晩泊まるホテルを調べている所だけど……」
口から出まかせを述べた後、コンタクト・ドライブシステムを強制終了。露天風呂の撮影も中断し、何とか映像記録のファイルを閉じた。
「スタリオンが移動していて焦ったわ。置いていかれたのかと思った」
「……アマゾネス達は皆、スーパー銭湯に入っちゃったよ」
「4人とも? 気が早いというか、キレイ好きなのね」
マズイ、お風呂から話を逸らさなければ……。
「そういえば、スケさん。アニマロイドなのにどうやって飲食店に入れたのだ」
「そりゃあ、動物好きの優しそうな人に頼んでテイクアウトしてきてもらったのよ」
こんな会話をしている場合じゃないのに。
今ごろ露天風呂では、どんな事態になっているのだろう。とてもじゃないが、スタリオンの装備で煙幕を張って、脱出の手助けができる状況ではなくなった。
カクさん! 何とか自力で脱出してくれ……。
心なしか外部が騒がしくなってきたような気がした。




