アルテミス
見かねたスケさんが、僕の両眼のナノテク・コンタクトを通じてテレパシーのように脳内通話してきた。
『オカダ君、さすがに体に悪いと思うわ。そんなに無理しないで』
『……大丈夫だ。たぶん……ね』
両手で口を塞ぎこむと、スケさんに涙目で合図した。
「どう? オカダさんのお口に合うかしら」
エプロンを握り締めた婦警姿のアディーが心配そうに訊いてくる。まなざしが昔の彼女とオーバーラップして、思わず咳き込んだ。思い出の彼女は料理上手で、僕は減量に苦労したものだったが。
「いやあ、見た目も味も個性的でいいね! 砂糖なしのチョコレートをまぶしたエビせん……ってところかな?」
それを聞いたシュレムとマリオット姉妹は、こらえきれず吹き出して笑った。
「あははは……あなた、面白いわね。何もそこまで我慢しなくてもいいのに!」
「うふふ、お姉ちゃん違うよ! オカダ君は優しい人なんだよ」
テーブルを叩きながら、姉妹の笑いは止まらない。お互いに抱き合ってへたり込む始末だ。
「何だ、何がそんなに可笑しいんだ……」
僕は汗を手の甲で拭きながら、少々血走った目で二人を睨んだ。
「そんな黒焦げのフライを美味そうに食べる人、初めて見たわ。あはははは!」
「嘘よ、冗談なのよ、オカダ君。アディーの失敗作はもういいから、私が作ったエビのチリソース炒めを食べてよ。ねっ! アディー」
アディーは恥ずかしさをごまかすため、両手で顔を覆った。う~ん、仕草が何だかちょっとカワイイ。
アマゾネス達にも、どうやって無理矢理食わせようかと5秒ほど思案を巡らせていたのだが、あくまで紳士的に振る舞うべきだと自分に言い聞かせ、何とか溜飲を下げたのだった。




