フローラ
いよいよ衛星軌道上にインディペンデンス号を投錨し、航星間飛行モードの解除を行った。すると動力区画から、不快な周波数の騒音や振動がブリッジにまで伝わってきて、思わず眉をひそめる。
「それでは48時間後、満を持してケプラー22bに入星する。補給物資をシャトルに積み込んだ後、当艦とシャトル、及び上陸用機器すべてにチェックをかけろ」
「了解! オカダ君、いやオカダ船長」
二頭は元気にシンクロ気味で返事した。
「違う! 俺は国際連合宇宙局所属太陽系外植民惑星一等査察官だ」
「分かってまんがな!」
「これから忙しくなるネ。がんばろうカクさん」
「まあ、ヒマよりはマシだぜ」
スケさんとカクさんは、すばやく持ち場に分散して行った。しゃべらなければ野生動物そのもの。しなやかな身のこなしで、とても人造偽生物とは思えない。
「うひひひ、久しぶりの陸だ。オカダ君じゃなくて、陸だ! ……酒にギャンブル、それに美女が待ってるぜ」
「あなた、いつの時代の船乗りみたいな事を言ってるのよ~」
「男は船、女は港」
「あらっ! そのフレーズもいつか聞いた事があるわ。100年ほど前だったかしら……」
「お見それいたしました、スケさん。いや、姉御!」
カクさんがメモリーを蓄積開始したのは、ほんの20年ほど前から。一方のスケさんはカクさんよりも5倍以上の年齢ということになる。




