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10/19

No.9 エリカ

初めに、謝罪します。

投稿遅くなって誠に申し訳ありませんでした!!orz(土下座)


どうも鬼無里です。

初めましてと、お久しぶりです。


ほとんど推敲されていない原文です。とてつもなく、どうしようもないくらいに読みづらいと思われます。


本当にすみません。

 魔物には、魔蟲や魔草と区別して呼ばれるタイプの魔物もいる。


 ……いや、だからって別に他の魔物と何か違うのかと言ったら大した違いはないのだけれど。

 定義上――(魔物と呼ばれる生物には、

・ある一定以上の魔力が備わっている。

・通常の生物とは違い空気中に含まれる魔力が濃い場所でないと弱体化する。

・食物を摂取する際に魔力も吸収する。

と、大まかにこの三つの条件があり。学問の中では定義化されているらしい。)

では、魔物には魔蟲や魔草といった区別はないが、漢字から分かる通り蟲の姿形をした魔物は魔蟲、植物の姿形をした魔物は魔草と一般では呼ばれている。

 もちろん、俺が生物学に詳しいわけではないので、これについてどうこう言うわけではないが。


 では、何が言いたいのか。


 正直に言おう。


 魔蟲、魔草は非常に面倒である。




 


 奥地に入って二十分ほど経過した今、俺とシテンは魔物達に囲まれていた。


「シテン、下がれ!!」

俺は反応できてないシテンの襟首を掴み、思いっきり引っ張る。

 

――そして、先ほどまでシテンがいた地面に全長3mほどはあるであろう巨大な鎌が突き刺さった。


隠れる刃(ヒドゥン・エッジ)』。

 木の枝に足の爪を立ててぶら下がるようにしてその巨大な体躯を固定し、鎌のように鋭く、また巨大な両腕を地面に突き刺してこちらを見ている魔物は、そう呼ばれている。

 カマキリとナナフシを足して巨大化したような外見をもち、名前に違わず高度な擬態能力を持っている。そしてあの鎌。巨大なだけでなくちょっとした木の幹なら両断するほどに鋭利である。


「ちっ!!」

 俺は戦うのではなく、どうにかして逃げ延びるためにシテンの腰をもって抱えるようにして――実際には体格差がありすぎて引っ張るだけになってしまうが、その場を飛び退く。


 次の瞬間――、


バグン。


 いや、そんな音が聞こえたわけではないけれど。

 効果音を付けるとそうなる。


 まるで砲弾のように飛んできたそれは、俺たちの頭上を通過してナナフシの腹に喰らいついた。


 キエエエェェとか。ナナフシがどこぞの悪役みたいな声を上げてじたばたと暴れてはいるが、ガッチリと喰らいついているそれを離すことはまず不可能だろう。

 よく見ると、ナナフシに食らいついているその緑色した丸いハエ取り草のような物体はツタのようなものが後ろに伸びている。

 そのツタを目だけで辿っていくと――いたいた、捕喰植物『魔物喰い《オーバー・イート》』。

 別名喰い殺しの木。

 見た目はどこにでもありそうな――強いて言うならただ大きいだけの樹木だが、魔力が高い生物が半径20m付近を通過すると、さっきのナナフシみたいに丸っこいハエ取り草が発射されて喰らいつかれて養分を吸い取られる。どうやら一度喰いつくと離すということができないらしく、本体である巨大な大木からツタを切り離しても喰らいついたまま養分を吸い上げる。

 

 よほどのグルメなのか、俺が近くを通っても反応しない。

 俺、というか一般人程度の魔力では反応すらしてくれないようだ。

 

 因みに俺の魔力を鑑定してもらった結果では一般人が持っている魔力の半分以下らしい。

 初めてそれを聞いた時にはかなりショックだったが。


 ナナフシ――というか『隠れる刃(ヒドゥン・エッジ)』のような魔蟲などは総じて外殻が堅いのだが、そんなものはお構いなしに『魔物喰い《オーバー・イート》』は喰らいつき養分を吸い取っていく。


 見る見るうちに『隠れる刃(ヒドゥン・エッジ)』の抵抗が弱くなっていきしまいには鎌ダランと下げて動かなくなった。

 ご愁傷様です。



 もちろん、その間に俺はその場から逃げ去りできれば上手いこと身を隠そうとしたが――、


 カチカチ、カチ。


 何が歯鳴らしをするような、不快感を煽る微かな音を前方から聞いて咄嗟に進路を右に向けて走り出す。

 逃げ切れれば御の字ではあったが、背後から羽音が四匹分鳴りだして近づいてきている。

 飛んでいる相手に対して地面を駆けて逃げるのは流石に無理がある。

 また、この奥地において走り回るのは危険極まりない自殺行為に等しい。


 そう判断をしてすぐさま身を翻し、同時に学ランのポケットから小型のナイフを二本それぞれ両手に握りしめ、音が聞こえてくる方向にほぼ直感で投げつける。


 反応を待っている暇はない。


 先程とは違いシテンを抱きかかえて――いわゆるお姫様抱っこで持ち上げて、近くにある樹へ駆け上がる。両手ふさがっている状態なので足だけで登るといったキツイ行為だが仕方がない。

 ていうか、シテン。お前重い。体格からしてそれなりに体重はあると思ったが、100㎏はないにしても80㎏近くはあるな。少なくとも俺の体重を超えていることは確かだ。

 まあ、でも。まだ軽い。


 その時シテンが無表情ながらも嬉しそうな悲しそうなそんな反応していた。


 無視、無視。


 上手いこと、枝と枝の間で身を隠して辺りを窺う。

 すると少しも経たずに羽音を鳴らして体長50㎝はあるであろう、黄色と黒の警告色に紅いラインが入った甲殻を持った大きな蜂が二匹飛んできた。

 

『火炎蜂』


 蜂。しかしながら、通常5㎝程度大きさの蜂とは違い、『火炎蜂』は平均で20~30㎝の体躯を誇る。

 あくまでも平均で。この奥地においては50㎝を超えるものしか見たことがないが。

 大きさもさることながら、しかし、やはりもっとも危惧すべきは普通の蜂と同じく腹の先についている毒針だろう。


 カエンダケという名のキノコを知っているだろうか。元いた世界では最も毒性が強く手に触れただけで炎症を起こしてしまうほどの強い毒性を持ったキノコである。

 火炎蜂も同じく、名前が毒の強さから由来しているほどひどい毒性を持った毒針を有している。

 

 刺されると、まず焼けて爛れたかのような激しい痛みに襲われ刺された箇所が赤く大きく腫れてしまう。その後三分もしないうちに全身が炎に包まれているかのようなインフルエンザに似た高熱を発するようになる。放置しておくと五分もしないうちに全身麻痺及び呼吸困難and幻覚といった症状に陥り、そのままだと三分以内に死に至る。


 ……。うん、まあ……。アナフィラキシーショックとか言っている場合じゃないな。


※刺された時の対処法


1.毒針を少し厚めの手袋をはめた手で途中で折れないように慎重に抜き取る。

(ゴムだと溶け落ちる場合があるので、革製――鍛冶場などで使う特に丈夫なものが最も好ましい。棘抜きを使ってもいいが酸に強い金等の金属でないと熱を帯びて溶け始めるのでお勧めできない。また、刺された部位が足や腕などの場合刺された箇所の上部を圧迫して血を止めておくと尚更よい)

2.左腕上腕部に10秒毎一本のペースで中級用の解毒薬を三本注射(打ち込む)

3.同じく中級者用の活力剤を二本のみ干して体力を落とさないようにして安静に毒が分解されるのを待つ。

 ここまでの処置を三分以内に終わらせればほぼ100%の確率で救命できる。

 とは言っても、後遺症が残る場合がほとんどだが。

 運がいいと、二回目からの症状が若干軽くなる。

 

 ……解毒中に襲われてしまったら元も子もないが。


 刺された瞬間から激しい痛みが続くので戦闘に集中するのは厳しいし、そんな体ではまず飛び回る『火炎蜂』を倒しきることは不可能だ。それに、完全に息の根を止めておかないと仲間を呼ばれてしまう可能性もある。さっき聞こえた『カチカチ、カチ』という音がまさにそれだ。


 俺たちを探しているのか、やたらと辺りを徘徊(飛んでいる蜂に対して徘徊は流石に無いか)している『火炎蜂』二匹の様子をうかがう。 


 本来ならば毒に警戒して、遠距離から魔法で仕留めるか魔道具(魔方陣的なものが組み込まれていて人の魔力を勝手に吸い取って自動で魔法を発動する魔法を習得していない人でも使える便利アイテム。お値段が大抵100万を超え、月の生活費を考えると手を出すことができない代物だ)や火薬を使って一撃で殺すか。


 しかし、今の現状では魔法は“阻害(ジャミング)”されているため使えないし、魔道具は残念ながら所持していない。また、火薬の類を使ってしまえば音や威力が派手すぎてほかの魔物を呼び寄せてしまう危険があるため使えない。

 ……持ってきてはいるけどね。手榴弾を改造しすぎて自爆しそうなほど吹き飛ばす超危険な奴。

 

 作ったのは俺じゃない。俺の相棒だった奴。生死は不明。恐らくこちらの世界にはいないだろうが。いたら殺すか、半殺しにする。多分、あれは何で俺がこの世界に来ることになったか知っていて、尚且つそれに手を貸した。偶然、あの帰り道で俺がこの世界に来る前にバイトのシフトがどうのこうのでどこか行きやがったからな。しかもその時、一緒に帰っていた委員長を無理やり半強制的に連行していた。


 あの時の爽やかさを気取った笑顔が記憶に懐かしい。


「……よし殺そう。」

「よ、“ヨウ”様。さ、殺気がダダ漏れですが。どうかなさいましたか?」

「うん?何でもないよシテン。ただ、この件が終わったら徹底的に(あれを)ボコボコやろうと思っただけだよ。」

「っつ!!――ぼ、ボコボコに虐めぬくのですか!?」

「そうそう、他意はないよ。言葉通りの意味さ。」

「そ、そんなことを急に言われましても……その、いろいろと。何といいますか。……できればそのまま進展してベットまで連れて行って欲しいです……。」


 シテンの言葉徐々に小さくなっていき最後にはほとんど聞こえなくなった。

 

 何故かものすごい間違い、いや、誤解を起こしてしまっている気がするが。


「――まあ、そんな暇は今はないけどね。」

話を戻すか。


 さて、それではどうやってこの二匹の蜂を殺すかな。

 そんなことを脳内で嘯きながら既に手は打っている。

 

 ――罠は既に仕掛けてある。

 後はもう。まあ。……言いたくないな。


「…………、さ、細工は流流。後は仕上げを御覧じろ。」


 この瞬間俺は、二度とこのキメ台詞を使わないと生涯に誓った。

 

 両手を引き揚げる。

 スッと、外れてしまった餌を取り換える為に竿を引くような雰囲気で。気軽に。


 どこからともなくひゅおんといった音がして、二匹の『火炎蜂』はそれぞれの翅と頭をもぐような形で綺麗に切断されバラバラになった。


生命線(ライフ・ライン)


 軽い音を立てて死骸となったそれが地面に落下した。

 断末魔を上げる暇などないし、あの不快な羽音ももう聞こえなくなった。

 

 辺りが完全に沈黙していることを確認して、樹から飛び降りて静かにほとんど音を立てずに着地する。


 仲間を呼ぶ前に殺せたこともあり、近くには少なくとも魔蟲の気配はなくなっていた。

 どうやらほかの魔物を呼びよてはいないみたいだ。

 流石に、どこにでもある植物と大して変わらない気配である魔草は分からない。


 それでも、少なくとも魔草は向こうから襲ってくることは基本的になく、ある一定以上に近寄ってきた者にだけ反応するため多少警戒を解いても此方が動かなければある程度は大丈夫だ。

「ふぅ。」

 そこまで考えて一息つく。


 すると、少し重い音が背後から響く。

 ドスって感じな。

 

 ……。


 まあ、










「流石は“ヨウ”様。お見事です。」

 シテンなんだけど。

「先程使ったのは、糸?ですか。」


 うん、優秀。いつもの通りシテンである。

 俺は小さく頷いてから、思いっきり両手で手繰り寄せるようにして引っ張った。


 シュルシュルとそこらへんの木の枝枝を滑車のように利用し、絡まらずに上手く集まってくる。

 そして途中からズル、ズルと地面から乱雑に生えた草を引きずるようにして蜂の死骸がナイフに刺されて絶命した状態で運ばれてきた。


「!!」


 やっぱりシテンは驚いているようで、しかし普段は無口なだけあってオーバーなリアクションはしないようだ。

 

 俺の指先――正確には制服のそこらじゅうに『生命線』隠し忍ばせて、袖を通し指先に絡み付けて操っているといった具合だ。

 もちろん、使っている糸は武器屋で買えるような安物――いや、まず武器屋に暗殺者でもまず使わないこんなマイナーていうか専門的な道具が売られているわけないか。まあ、武器屋を通して買ったのだが。とにかく、この糸は特注品で、試したことはないが『飛龍(ワイバーン)』のようなランクの低いドラゴンの鱗ぐらいなら易々と切断できるそうだ。

 入手方法は完全なるツテである。

 暗殺稼業をやっていると良くも悪くも人の弱みを握れるわけで。

 


 それはそれとして。

 そんな切れ味がいい糸を両手の人差し指・中指・薬指合わせて六本を使い、先ほどの『火炎蜂』を仕留めたわけである。

 しかし、あまりコイツは便利なわけではない。多角的に不意討てるというのは、確かに弱点を無視してもよいほどの利点だがあまりの細さのため通常では目視できず、操るのがほとんど感覚作業になり難しい。繊細で正確な技術と、それを実行するための集中力が必要になってくるし、それに遮蔽物がない場所では全くと言っていいほど使い物にならない。


 “奥の手”や“切り札”としては効果絶大なものがあるが基本的には搦め手の小細工であり、同じ相手に何度でも使用するべき道具でもない。

 

 メインウェポンがない今の現状では出し惜しみをしている暇はないが、『生命線』はやはり“(トラップ)”として使うのが一番効果的で、特性はいかせる。拘束術として発展した技術なのでさっきみたいに殺すことよりは、雁字搦(がんじがら)めに縛って動きを止める方が適していたりするしな。



「さてと、糸を回収して先を急ぐか。」

そう、考え『生命線』を解いていった。


 手先を集中する作業ではあるので、索敵はシテンに任せた。






 ――さて、お立会い。

 

 皆様方。特にこの森――つまりは【ラドン森林】の奥地が思ったより簡単だと思っている皆様方にはここからが本編といったところだろう。


 言うのを完全に忘れていたが。俺はこの奥地に過去二回足を踏み入れてその二回とも死にかけている。

 

 一回目も二回目も【ドルガーノ】村で二週間近く介抱してもらってどうにか生き延びられた次第である。

 それは別に森の主であるアイツと出会ったからではない。

 この奥地に惨敗しているのだ。

 『捕喰の森』とは、本当にうまいこと名前を付けるものだな。あのギルドマスターは。


 この森は。人を食って食って喰らい尽くす。

 肉も臓器も骨までも。

 生きて帰れるものがいないことが常識となってしまっている異常地帯。

 

 そして、この森は人の油断を特に好む――。



 ブブブ、ブブ、ブブブブブブ。


 その音に俺は警戒を全開にして、今行っている糸を解く作業を放棄して背後を振り向いた。

 シテンもほぼ同時に気付いたらしく、立ち込める霧と木々乱立して薄暗くなっているその先を睨みつけている。

 

 いる。完全にいる。

 

 羽音がするところから、魔蟲であると見当は付けられる。

 『火炎蜂』か?――いや、違うな。

 さっきの四匹が仲間を呼んでいたと仮定しても遅すぎる。

 この羽音は一匹の単独で、微妙に『火炎蜂』の不快感を煽る羽音とは違う。

 何よりもこの気持ち悪い胸騒ぎが絶対に違うと告げている。



 心中を察してか、まあ絶対にありえないが、ソレは現れた。


 全身大よそ2m近くある黒色で統一されている体。腹と胸に当たる部分にだけ黄色い蛍光色のようなラインが入っており、目を紅く光らせている。四枚ある半透明な翅を目では追えない速度で動かし、ぎろりと複眼でこちらを睨みつけている。最も特徴的なのは胸から腹へかけての、人間でいえばウエストに見れる部分が有り得ないほど細く引き締まっていることだ。


生け贄蜂(サクリファイス・ビー)


「っ……!!」

 見た目は完全なトックリ蜂であるそいつの魔物としてのランクは文句なしの――SS。


 語っている暇は無かった。

 

 俺は咄嗟に腕を交差させ『生命線』を操った。

 当然、回収途中であった六本の糸は使うことはできないし、再びわなを仕掛ける暇もない。

 だから奥の手の奥の手。残りの指――小指に絡めておいた糸を思いっきり引っ張る。


 

 『生け贄蜂』が動くよりも速く、その翅にワザと絡まるように糸を操る。

「シテン。逃げろ!!」

 

 異変を感じた『生け贄蜂』が激しく暴れ出す。できれば、ここで『火炎蜂』のように翅ごと断ち切ってしまいたいところだが、両手の小指から延びる二本の糸だけではパワー不足である。

 もちろん、この拘束も長くは続かない。

 『生命線』の強度『生け贄蜂』程度の力では千切れたりしないが、滑車となっている枝や、俺の小指の方は簡単に持っていかれることだろう。

 相手のランクも考慮してこの拘束が続いている間に仕留めるのが最善策、――ならば。


 『生け贄蜂』の拘束を解かないままにして糸が絡まないように気を付けながら腰につけてあるポーチを探る。ポーチの中からちょうど拳大の大きさのソレを掴んで片手で安全ピンを外し、『生け贄蜂』に投擲する。


 改造されているその手榴弾の威力は凄まじく狂っていて、半径30mほどを爆風のみで吹き飛ばす。

 だから同時に背後へと駆け出す。

 既に、逃げているシテンはこちらを窺いながらもそれなりに距離をとっていた。


 俺は思いっきり地面蹴り抜く。

 一秒も経たずに10m。二秒も経たずに20m。 

 

 それができなければこの距離では死ぬ。

 

 一気にシテンに追いつき並走する。


 手榴弾が地面に落下する音が聞こえた。


 拘束はまだ続いているため、『生け贄蜂』は仕留められるだろう。


 が――、間に合わない!!


 とっさの判断でシテンを脇に抱えて庇うようにして跳躍し、茂みの中に突っ込んだ。


 シテンの胸辺りをガッツリ掴んでいるが気にしている精神状態ではなかった。


 と、耳を劈く爆音と体ごと吹き飛ばす強い爆風の衝撃がほぼ同時に襲い掛かり、茂みごと吹き飛ばされる。


 水平投射で飛んでいき、地面を二回三回とバウンドし俺とシテンは転がる。


 どうにか、俺が庇い、下敷きにしたことでシテンに掛かる衝撃は吸収されすぐに慣性は収まった。


 俺は、シテンより遠くに転がり葉っぱが敷き詰められている地面に投げ出され、そこで背中から受け身をとろうとした。


 


 ――葉っぱ?


 突然、俺が落とされるはずだった地面に敷き詰められていた葉っぱが、蜘蛛の子を散らすように四散した。

 

 思考が急激に冷やされる。背筋の温度が一気に氷点下を下回った。


 葉っぱが割れた奥には、落とし穴が仕掛けられたように穴が空いており、その穴の中は人間の口内を思わせるように紅く、そして――刀のように鋭い棘が穴の中に数多く生えていた。


『人地獄』――別名、“犠牲草”。


 詳しい説明はいらない。落ちたら最後。喰われるだけ。

 

 這い上がることはできない。蟻地獄に飲まれた蟻のように。


 そして、口のように開いた消化袋でゆっくり溶かされて消化される。

 血が固まらない特殊な液体を分泌しているため数分でショック死する。


 この体勢から『人地獄』へ落下することを止めるのは不可能だった。

 生は既に諦めた。

 ――だから、望むのは殺すことだけだ。


 俺の意識は飛んでいく。同時に僕の意識は無為になる。


 完全なる無意識。


 腰に付けたホルダーに手を伸ばす。

 体はズブリと落下する。

 捕食が始まり、刀のような棘が迫って来るよりも速く。

 無意識のナイフはその中身をズタボロに引き裂いた。


 











 

 

 血は相も変わらず流れていく。

 目は閉じたまま開けない。

 体は重く。

 背中が痛い。





 ……誰か、が、足首を……掴ん、で、いる。


 し、テン。じゃ、ない、な。


 この、かん、かくは――、



















 目は開いた。けれども視界は暗い。

 

 それでも生きていると分かった。温もりを感じるからだ。



『うふふ。お目覚めになりましたか。”ヨウ”。』


 この声は聞き覚えがある。






「……エリカ。」


 紛れもなく、この森の主。奥地に住まう、【ラドン森林】全体を管理する化物。


『はい。正解です。“ヨウ”――小布施 陽。生きていて何よりです。』


 アイツの――エリカの声だった。

後書きです。


前書きで書いたとおり、大幅に投稿が遅くなったことをここにお詫び申し上げます。


《ここから下言い訳タイム。》

実は、下書きの方は9/10辺りで半分以上書き終わっていたのですが、読み返したところとってもつまらない。全くもって面白くない。くどい。

 と、自分で思って、ダメ出しをするほど酷いものになってしまいました。

 少し張り切って説明を多くし過ぎてしまったのが失敗でした。

 そこから、構成を再び考え直し、魔物や戦い方、また説明の仕方を改めて書き直そうと思ったのですが、現実世界での時間が取れずに、今日のような祝日と土日を使って書き終えました。


 誤字脱字のオンパレードとなっていると思われます。

 お気づきになった読者の皆様方は、存分にご指摘、ご指導ください。


 お粗末さまでした。


10/1 毒針を少し集めの手袋をはめた手で

           ↓

    毒針を少し厚めの手袋をはめた手で

    同じく中級車用の活力剤

        ↓

    同じく中級者用の活力剤

    餌を取り換えるとに竿を引くような

       ↓

    餌を取り換える為に竿を引くような

    『飛龍(ワイバーン)』レベルの低いドラゴン

              ↓

    『飛龍(ワイバーン)』のようなランクの低いドラゴン に修正。

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