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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

後宮の冒険者

作者: 九條葉月


 ――大華国において、ゴブリンは『小鬼』と呼ばれている。


 正直、あんな緑色の肌で『鬼』と評すのは違和感しかないのだけど……。他に適した言葉もないし、頭に小さな角が生えているので仕方ないのだと思う。


 まっ、私は欧羅(おうろ)で使い慣れた『ゴブリン』という名称を使うけどね。


 そんなゴブリンたちは食料を求めて依頼主の寒村に侵入してきた。数は五匹。村を攻め落とすにしては少なすぎるから、たぶん食料を盗みに来たのだと思う。


 ゴブリン五匹。

 寒村となるとそれだけでも十分な脅威となる。例えば飢えた野犬が5匹連携して襲いかかってくると考えればその恐ろしさは理解してもらえると思う。働き手の男性の多くが徴兵されてしまったとなれば尚更だ。


 しかし、それはあくまで舞台が寒村で、鉄製の武器を準備するのが難しい場合に限った話。栄養ある食事で身体を維持し、十分な戦闘経験を積み、良質な鉄の武器を装備すれば、ゴブリンたちは大した脅威ではなくなる。


 ……まぁ、そんなゴブリン相手に油断して命を落とした冒険者(・・・)たちを何人も知っているので、気を抜くことはないけどね。


 人気(ひとけ)がなくて油断しているのか、ゴブリンたちは警戒することなく村の中を進み、食料が収められた倉庫を探している。


 そんな彼らの背後に物陰から忍び寄った私は、小さな声で呪文を唱えた。


「――焔よ、燃えよ(エンナ)


 初級攻撃魔法(・・・・)

 大華国では神仙術とも呼ばれるけど、私は馴染みある『魔法』という言葉を使っている。


 もう少し強力な魔法を使えば一気に殲滅できるのだけど、それをすると村の建物に被害が出るので手加減した形だ。


 しかし近距離からの攻撃魔法の威力は絶大であり。5匹のうち2匹のゴブリンが炎にまかれ、すぐさま酸欠で気絶。その場に倒れ込んだ。


『ゲゲッ!?』

『ゲゲッ!?』

『ゲゲッ!?』


 やっと私の存在に気づいた生き残りのゴブリンが振り返るけど、待ってやる義理はない。私は腰に下げていた2本の短刀を左右の手で引き抜いて、迷うことなくゴブリンの首を切り裂いた。


 何度経験しても嫌な感触。


 頸動脈と気道を切り裂かれたゴブリン2匹は叫び声を上げることなく絶命した。


『ゲゲッ!?』


 最後の一匹は勝てないと察したのか逃げ出した。


 想定通り(・・・・)だ。


「さぁ、巣まで案内してもらいましょうか」


 酸欠で倒れたゴブリンたちにトドメを刺してから、私は逃げたゴブリンを追跡し、巣として使われている洞窟を発見することができた。


 あとはもう簡単な話。洞窟の中に攻撃魔法を放り投げれば終わりなのだから。


 一応炎が治まってから中を確認。……よし、生き残りはいないわね。


 正直、銀級(Sランク)冒険者が出るほどの敵じゃなかったのだけど、まだまだ大華国では馴染みがない『冒険者』という職業を知ってもらうための実演宣伝(デモンストレーション)なのでしょうがない。


 討伐の証明となる鼻を切り落とし、寒村の村長に報告。この辺は何度も経験しているので手慣れたものだ。


「さて。永安に帰りましょうか」


 寒村にはちゃんとした宿泊施設もないだろうし、さっさと都に帰ることにした私だった。





 ――転移魔法。

 大華国においては『縮地』とも呼ばれる魔法を使って、私は寒村から永安……つまりは大華国の首都へと転移した。


 もちろん、いきなり町中に出現しては大騒ぎになってしまうので首都近くの岩陰を目標地点にした私だ。


 そのまま近くの街道を歩き、しばらくすれば首都への入り口となる安化門に到着する。


 都の中に入る前には検問があるのでそれなりに混雑していた。

 これでお貴族様ならすぐ隣の明徳門を使って素通りできるのだけど、平民の私では望むべくもない。


(面倒くさいから、転移魔法用に空き家を一軒借りようかしら?)


 でも空き家を空き家のままにしていると盗賊とか浮浪者が勝手に使い始めるのよね。

 そんなことを考えながらおとなしく列に並んで待っていると――


「――おい見ろ、銀髪(・・)だぜ!」


「ひゃあ、しかも別嬪(べっぴん)じゃねぇか!」


 いかにもゴロツキといった風貌の男二人が私に近づいて来た。


 銀髪は珍しい素材なので欧羅商人に高く売れるらしい。なので彼らからすれば銭が歩いているように見えるのでしょう。


 まぁ魔術がほとんど広まっていない大華国では『山姥!』とか『気味が悪い!』って反応をされることの方が多いのだけどね。


 金に目が眩んでいるか、怖がるか。もうちょっと素直に『よっ! 美少女!』って反応をしてくれないものかしらね……。


 私が自分の不幸を呪っていると、下卑た笑みを浮かべた男二人が私の目の前で止まった。


「おう嬢ちゃん。うまい話があるんだが、乗らねぇか?」


「ついでに楽しいこともしようぜぇ?」


「……残念だけど、お金には困ってないの。別の人を当たってくれない?」


 冷たくあしらう私だけど、ゴロツキたちは諦める様子がない。


「おいおい、つれねぇなぁ」


「大人しく言うことを聞けば、痛い目に遭わずに済むんだぜ?」


「…………」


 なんかしつこいなぁ面倒くさいなぁ、というのが本音。こっちはわざわざ寒村にまで遠征してゴブリンを退治してきたばかりだというのに。


 あの戦闘自体はすぐに終わったけど、その前の村長とのやり取りや、訝しむ村人に対して実力を見せたりとか、そういう細々としたことにはそれなりの時間が掛かり、精神的にとっても疲れているのだ。こんなゴロツキ共に優しくする余裕は、ない。


 なので私はさっさと切り上げることにした。


「――息がクサい。話しかけないでくれない?」


「っ! こいつ!」


「美人相手だから下手(したて)に出ていれば! つけあがりやがって!」


 一瞬で顔を真っ赤にしたゴロツキたちを交互に見て、私はわざとらしくクスクスと笑うのだった。


「わぁすごい、あれで下手に出ているつもりだったんだ? 大した実力もないのに態度だけは一人前。とっても可哀想ね?」


「こ、この野郎! 舐めやがって!」


 激高した男が拳を振り上げる。ただし、(ろく)に鍛練も積んだことがないのか遅すぎる動きだ。それはもう「私は女で、野郎じゃないんだけど?」という指摘(ツッコミ)ができる程度には。


 これでよし。

 女性相手に向こうから殴りかかってきたのだから、悪いのは完全にあっちだ。多少やりすぎて(・・・・・)も大丈夫。周りの人たちもちゃんと証言してくれるはず。


 と、思っていたのだけど。


「――おい待て。女性相手に殴りかかるとは何事だ」


 私とゴロツキたちの間に割り込んできた若い男性が、ゴロツキの拳を易々と掴んで止めた。


 へぇ、中々に鍛えている。

 動く拳を掴んで止めるなんてそう簡単にはできないはずなのだけど。冒険者として勧誘(スカウト)したいくらい立派な筋力と動体視力だ。


「てめぇ!」


 もう一人のゴロツキが動いたので、私は若い男性に加勢することにした。砂を蹴り上げてゴロツキに目つぶしをしたあと――股間を蹴り上げる。


「っ!? ぐ、ぐぅう……!?」


 空前絶後の痛みが襲いかかってきたのか股間を押さえながら地面に倒れるゴロツキ。そんな彼に仲間のゴロツキが駆け寄ろうとして、


「おいおい。よそ見をするとは余裕だな?」


 私を助けてくれた男性が、ゴロツキの腹を容赦なく蹴りつけた。わぁ、丸太のように鍛えられた足での一撃。あれはしばらく立ち上がれないわね。下手をすれば内臓が破裂するけど……まっ、ケンカ慣れしている人はその辺も上手く手加減するでしょう。


 悶絶するゴロツキ二人。

 行動不能になった彼らには興味がないのか、助けに入ってくれた男性が私の方を向いた。


「まったく、お嬢さん。男二人相手に喧嘩を売るとは――」


 そのまま、ぴくりとも動かなくなる男性。なんだか頬もほんのり赤くなっているような?

 もしかして、私に見惚れている……のかな?


 向こうがジッと見つめてくるのだから、私も遠慮なく見つめ返すことにする。


 ふむふむ? 中々の偉丈夫ね?


 年齢は20歳前後? 私より少し年上くらいかしら?

 顔の作り自体は欧羅で言う『イケメン』だと思う。整った睫毛に、涼やかな目元。欧羅人のように高く一本筋が通った鼻。何よりも、自信に満ち溢れた瞳。


 ただし、鍛錬を欠かしていないのか首は武人のような太さだし、肩幅を含めた肉体はガッシリとしている。


 正直、なんとも私好みの男性だった。外見はもちろんのこと、見ず知らずの女性を助けてくれる性格も素晴らしい。今になって私に見惚れて(?)いるのだから、見た目が気に入って助けてくれたわけじゃないだろうし。


 けど、いつまでも見つめ合っていては周りからの注目を集めるだけだ。


「あの、助けてくださってありがとうございました」


 にっこりと。

 穏やかに笑ってみせる私。好みのイケメンに対するサービスを込めたことは言うまでもない。


 対する男性は、やっと正気に戻ったみたいだ。


「あ、あぁ、いや。えっと、ゴロツキに喧嘩を売るのは感心しないな」


 まだ混乱しているのか、先ほどと同じようなことを口にする男性だった。

 はっきり言えばあの程度のゴロツキは一人で何とかできたし、助けが入らない方が早く終わっていたと思う。


 しかし、それはそれ。見ず知らずの女性を助けに入れる勇気と気高さに感謝の念を伝えないとね。


「その通りですね。今後は気をつけるようにします。改めまして、ありがとうございました」


「お、おぉ、分かればいいのだ」


 ゴロツキ二人に平然と喧嘩を売った女が素直に非を認めたり感謝の念を伝えてくるのが珍しかったのか、ものすごく戸惑っている男性だった。


「えっと……そうだ。お嬢さんは冒険者というものかな?」


 欧羅風のズボンにシャツ。武装自体は空間収納(ストレージ)に収納してあるけど、それでも『女性らしくない』格好にそう判断したらしい男性だった。


「はい、冒険者です。なにか依頼がありましたら永安の冒険者組合へどうぞ。『銀髪』と言ってくだされば伝わりますので」


「銀髪……。確かに、特徴的で美しい銀髪だ」


「う、美しいって」


 大華国では髪色を褒められることは滅多にないので、少し照れてしまう私だった。いやまぁ一番の理由は『私好みの男から言われた』からなのだけど。


「あ、いや、変な意味ではなくてだな……」


 まるで口説くような自分の発言に気づいたのか、頬を赤く染める男性だった。ちょっと可愛いかも。


 いやぁいいものを見た。これはお茶に誘っても許される流れでは? 大華国では女性から口説くなんて『はしたない』とされるし、欧羅においてもあり得ないこと扱いされるけど……私がしたいのだから、それでいいのだ。


「あの、」


 門を抜けたらお茶でもどうです? と、誘おうとした矢先に門番が駆けつけてきた。どうやら騒ぎを聞きつけてしまったらしい。


「おっと、まずいな。――君には冒険者組合に行けば会えるのだな?」


「えぇ、はい」


「ならば、また会おう。俺の名は(シャン)。覚えておいてくれ」


「はい。私は凜です」


「凜。良き名だ。では、また」


 ニカッと笑ってから都とは反対側に走り去る勝だった。たぶん私とは反対で、都から出てどこかに向かうのでしょう。


 それはまぁ理解できるのだけど……門番への説明を私に丸投げかい。ちょっと好感度が下がってしまう私だった。





 あのあと門番から事情聴取されたけど、ゴロツキたちはゴロツキとして有名だったのかさほど時間を取られることなく解放された。


 ……私を見た門番が『うげっ』という顔をしていたものの、私と関わり合いになりたくないから早めに解放してくれたのでは無いと思う。たぶん、きっと、おそらくは。


 まぁとにかく。

 依頼は順調に終わったし、好みのイケメンと出会えた。この際ゴロツキに絡まれたことは忘れようと決めた私は、上機嫌のまま大通りを歩いていた。


 到着したのは、特に変わったところのない二階建ての建物。看板には『冒険者組合』と掲げられている。


 欧羅で言うところの、冒険者ギルド。

 あっちで様々なノウハウを学んできた私が、仲間と共に一から作り上げた組合だ。今年で設立3年目になる。


 本来なら私が組合長(ギルドマスター)になるべきなのだろうけど、私はまだ若すぎるから適任者に押しつけた――否、席を譲ったのだ。


「ギルマスー。依頼終わったわよー」


 ドアを開けながら組合の中へ。


 組合活動を広く知ってもらおう、ということでギルドの一階は受付の他に酒場が併設されている。まぁ飲んだくれているのはほとんどが冒険者なので、一般人に名前を広めるのは失敗していると思う。


 冒険者と言えばやはり魔物退治が主になるのだけど、大華国は欧羅ほど魔物が溢れていないので、裕福な商人の護衛や役人と協力しての盗賊退治が活動のメインとなっている。冒険者より傭兵の方が近いかもしれないわね。


 酔っぱらいたちの喧噪の中。ちゃんと私の声が聞こえたのか受付の奥からギルマス(ギルドマスター)が顔を出した。


 年齢は30代半ばくらい。

 大華国には珍しいスキンヘッドに、人を易々と殴り殺せそうな肉体という一度見たら忘れられない外見だ。噂によると国の偉い役人だったのに、頭が禿げて冠を被れなくなったから引退したとか何とか。ほんとかどうかは知らないけど。


 私を見つけたギルマスは『ニカッ』笑いかけてきた。


「おう、(リン)。早かったな」


「面倒くさいから転移魔法使ったわ」


「羨ましい限りだ。俺も使えるようになりたいねぇ」


「こればかりは才能がないとねぇ」


 私が討伐の証明であるゴブリンの鼻を提出すると、ギルマスはさして興味もなさそうに事務処理を受付嬢に任せてしまった。私の仕事を信頼しているのか、面倒くさい仕事を受付嬢に任せたのかは分からない。


「帰って来て早々で悪いが、次の依頼だ。しかも銀級冒険者である凜をご指名の」


「あら、大人気ね?」


「しかも特大だぜ? なんと依頼主は宮殿だ」


「宮殿? 天子様(皇帝)のおわす?」


「おう。正確に言えば宮殿に勤めるお役人様だな」


「……私平民だけど、宮殿に入っていいの?」


「そりゃあ、向こうが『銀級冒険者である凜を寄越せ』と言っているんだから大丈夫だろ。それに、消耗品を扱う商人とかは平民でも普通に出入りしているしな」


「よく考えれば、それもそうね」


「とりあえず今日はゆっくり休んでもらって――明日の朝にでも宮殿に向かってくれ。この札を見せれば取り次いでくれるそうだ」


 ギルマスが差し出してきたのは木製の板。大きく文字が書かれているのだけど、不自然に欠けている。

 たぶん一枚の板に大きく文字を書いたあと、それを二つに割った『割り札』というものだと思う。宮殿にいる役人が持っている割り札と、私が持って行く割り札を合わせると一つの文字になると。


「こういうのって命令書とか勅命が来るものじゃないの? 銀級冒険者の凜を招聘する~みたいな感じで」


「あぁ、事情はよく分からんが……宮殿に『魔物』が出たというのは隠しておきたいんじゃないか?」


「魔物? そういえば、宮殿からの依頼ってことが衝撃的で確認し忘れてたけど……依頼内容は?」


 私がそう問いかけると、ギルマスはイタズラの相談をする悪ガキみたいな笑みを浮かべた。


「なんでも『雷獣』が出たそうだ」













 翌朝。

 私が出立の準備をしていると、副ギルドマスターの(シャン)さんが部屋にやって来た。


 香さんは長い黒髪を後ろで一つに纏めた美人さんであり、欧羅風に言うとクールビューティーなのだけど、面倒見がいいのでついつい甘えてしまう人だ。


「香さん。どうしました?」


「……どうしたもこうしたもないわよ。まったく、出発前で良かったわ」


 私の服装を見て深い深いため息をつく香さん。え? 何かマズかったですか?


「あなたねぇ? 宮殿に行くのに、そんな冒険者服(仕事着)を着ていくつもり?」


「え?」


 今の私の格好。西洋風のズボンとシャツ。動きやすくてポケットも多い、まさに冒険者向けの衣服なのだけど。


「冒険者として招聘されるのだから、冒険者としての格好でも問題ないのでは?」


「駄目よ」


「駄目っすか……」


「そもそも凜ちゃんは冒険者の代表として宮殿に行くのよ? この国唯一の銀級冒険者。あなたが舐められると、この国の冒険者全てが舐められるの。その辺を意識してもらわないと」


「……はぁい」


 宮殿に相応しい衣装となると……ドレスか。こっちの言葉でドレスってなんて言うのだっけ……?


 呼び方はともかく、冒険者の広告塔という意味もあるなら着慣れない衣装(ドレス)も我慢しようと覚悟を決める私だった。これも銀級冒険者の役目ってことで。


 ちなみに銀級冒険者とは欧羅におけるSランク冒険者を意味している。その次に凄いのがAランク相当の金級冒険者、Bランク相当の銅級冒険者って感じだ。


 欧羅では銀よりも金の方が高くて貴重だったのだけど、大華国は逆。それなりに金は産出されるし、特殊な精錬が必要な銀の方が貴重なので金より銀が上に位置づけされているのだ。お金に使われているのも銀だしね。


「納得してくれたなら早速着替えましょうか」


 香さんが手を叩くと、組合の女性職員が木製の箱を持ってきた。中にはいかにも高級そうな衣服が収められている。


 私はまだこっちの衣服には詳しくないけど、貴族の女性が着ていそうなドレスだ。無意味なまでに布がついていて動きにくそう。

 とはいえ、欧羅みたいにコルセットじゃないだけマシか。アレは本気で肋骨が折れそうになる。


「あとはお化粧ね。ちゃんと欧羅製のものだから安心して?」


 私がお化粧嫌いなのを見越して、そんなことを言う香さんだった。もちろん化粧という行為自体が嫌いというのもあるのだけど……なによりも、以前『鑑定』してみたら鉛が入っていたのだ。あんなもの肌に塗ったら鉛中毒になるわ。


 それに比べて、どこに鑑定眼持ちがいるか分からない欧羅製の化粧品は変な混ぜ物ができず安心安全。私は欧羅との伝手を使って化粧品を輸入しているし、親しい人には欧羅製を使うよう強く勧めている。


 あと、単純に欧羅の化粧品は効果が高いので、今では常に品薄状態になるほど売れている。それはもう冒険者をやらずに貿易商をやった方がいいんじゃないかってレベルで。


 そんなことを考えながら、されるがままに化粧を施される私。


「そういえば、今度の依頼は雷獣みたいね?」


「みたいですね~」


 ――雷獣。


 地方によって姿形は異なるけど、だいたいは四足歩行の小型動物だ。犬っぽいだの、狐っぽいだの、イタチっぽいだの……。


 外見は様々あれど、特徴的なのは『雷を使う』ということだ。というか、そういう動物をひとくくりに『雷獣』と呼んでいるのだと思う。


 欧羅的に言えば雷魔法を使う魔物。大華国風に言えば雷を呼ぶ神獣。


「この国では、かつて吉兆とされていたのよ」


「吉兆ですか?」


「えぇ。雷獣が現れるのは天子様が正しい(まつりごと)をしている証だ、みたいな感じで」


「じゃあ、おめでたいじゃないですか。なぜ冒険者に依頼を?」


 冒険者が出てくるとなれば、それは討伐を意味する。まさか『雷を纏った魔物を生け捕りにしろ』なぁんて無茶は言わないだろうし。


「そんなのはしょせん言い伝えでしかないし、先々代の皇帝は『雷獣が出た!』と嘘をついて暴政を敷いたからね。雷獣に対する評判は悪くなっているのよ」


「へー」


 幼い頃から欧羅で過ごし、大華国に帰って来たのは3年ほど前なのでその辺はよく分からない私だった。


「あと、最近は欧羅から魔物が流入していて、被害が増えているでしょう? 魔物は討伐すべきという声も大きいみたいよ? ……それに、雷が落ちると建物が燃えちゃうし」


「あー……」


 大華国の建物は多くが木製だものね。落雷は火災に繋がるし、忌み嫌われるのかぁ。


「他の逸話としては……雷獣は主と認めた者にはよく仕えるといわれているわね。まぁそういう逸話のほとんどは『天子様が主となり――』って感じになるのだけど」


「魔物をですか。従魔化(テイム)みたいなものですかね」


「凜ちゃんでもできないのだったかしら?」


「えぇ。あれには特殊なスキルが必要なので。それに、従魔に任せるより自分で倒した方が早いですし」


「さすが脳き――銀級冒険者ね」


「今『脳筋』って言いそうになりませんでした?」


「気のせいよ」


「いや誤魔化(ごまか)し方が強引ー……」


 しかしこの3年間で上下関係はしっかり出来上がっていたので、それ以上は強く言えない私だった。





 化粧とお着替えが終わり、鏡の前に立ってみる。……うんうん、お妃様っぽく見るのでは? まぁ銀髪と大華国風の衣装が似合わなすぎてケンカしてしまっているけど。やっぱりなぁ大華国の衣装は黒髪を前提として色味を決めているからなぁ。


「あとは凜ちゃん自体が欧羅人風の顔つきだしね」


「一応出身は大華国のはずなんですけどね」


 それも『師匠』の言葉だけで何の証拠もないんだけどね。両親がどこで何をしているか知らないし。


 と、外で馬車が止まった音がした。お客さんかな?


「あら、馬車が来たみたいね。いいタイミングだわ」


 冒険者組合の人は私の影響で欧羅語を使うことも多い――じゃなくて。


「香さんが呼んだんですか?」


「正確には、組合で呼んだのよ。なにせ今の凜ちゃんは組合の顔。馬車に乗って宮殿に向かってもらわないと」


「へー」


 そんなものかぁ庶民が馬車を借りるって高いのになぁと他人事みたいに考える私だった。だって組合のお金から出してくれるみたいだし。


 準備も終わったので外に出る。ちなみに着替えた冒険者服は他の装備と一緒に空間収納(ストレージ)に突っ込んである。そのまま雷獣退治になる可能性が高いし、さすがにこんなひらひらした服で魔物と戦う勇気はない。


 冒険者組合の外で待っていた馬車は――なんというか、豪華だった。お貴族様が乗るんじゃないのかってレベルで。そこら中に金箔が貼られてキラキラだし、屋根の軒先には提灯まで付いている。


「え? こんな派手な馬車で宮殿に行くんですか?」


「宮殿に行くのだからこのくらい見栄を張らなきゃ駄目よ」


「うっへぇ……」


 メッチャ目立つじゃーん。とは思ったけど、別に馬車から顔を出すわけじゃないからいいかと思う私だった。それにこんな馬車に乗れる機会なんて二度とないだろうし。


「じゃあ、行ってきます」


「はい、行ってらっしゃい。あまり暴れては駄目よ? 宮殿なんて簡単に首が飛ぶのだから」


「うへぇ、怖い話しないでくださいよ……」


 なんともいつも通りなやり取りをしつつ、私は馬車に乗り込み、宮殿を目指したのだった。





 宮殿も近づいて来たので、窓から外を眺めてみる。


「おー」


 相変わらず、大きなお城だった。欧羅みたいに宮殿そのものが高層建築になっているわけじゃないけど、その代わりに広さと城壁の高さが勝っている感じだ。


「今目指している門は……なんだろう?」


 欧羅のお城は東西南北に東門、西門、って感じで覚えやすかったけど、大華国はたくさん門がある上にそれぞれ変わった名前が付いているので覚えにくいのだ。よく使う門の名前なら覚えられるのだけど……。


「ま、いいや。どうせ覚えても意味はないのだし」


 ここで普通の乙女なら「もしかして皇帝陛下に見初められちゃったり!?」なぁんて夢を見るのかもしれないけど、私は残念ながらスレてしまっているのだ。というか欧羅での経験からして、王族とか皇族なんて面倒くささしか感じないし。


「おっ」


 馬車が止まったので窓から顔を出してみると、恰幅のいい女性がこちらに近づいて来た。後ろに甲冑を着た兵士二人を伴っているので、たぶん偉い女官あたりだと思う。全体的な雰囲気は『酒場を切り盛りする女主人』って感じなんだけどね。


「あのー、すみません。この割り札を渡せば引き継いでくれると聞いてきたのですが……」


「あぁ、はいはい。話は聞いていますよ。どうぞこちらへ」


 私が窓から差し出した割り札を女官さんはにこやかな笑顔を浮かべながら受け取り――それに目を通すことなく懐に入れてしまった。え? 宮殿の審査ってそれでいいの?


「ではこちらへ。部屋にご案内しますね」


 部屋?

 あぁ、偉い役人さんとやらの手が空くまで待機する部屋かなと納得する私。宮殿に勤める人って忙しそうだものね。


 女官さんが先導するように歩き始め、馬車がその後に付いていく。降りるタイミングを失ったので私は馬車に乗ったままだ。


 女官さんに連れられてきたのは、大きな水堀に囲まれた城壁だった。さすがは宮殿。防御のために城の中にさらに城壁があるらしい。欧羅の城壁は一重だけど、大華国は二重三重になっていると聞いたことがある。


 水堀に架けられた橋を渡り、城門の前へ。私の身長の三倍も四倍もありそうなデッカい鉄製の門だった。


(……なんだろう?)


 なんだか、嫌な感じがする。門の向こうから怨念が渦巻いているというか……。


(まっ、怨霊だったら殴り飛ばせばいいだけよね)


 深く考えないでいると城門が開かれた。宮殿の門を通るのってこんな簡単でいいの? まぁ今代の皇帝になってから戦もないと聞くし、色々と緩くなっているのかもしれないけどさ。


 馬車は門をくぐり抜け、そのまましばらく道なりに進んでいく。せっかくお城の中に来たのだから見物するかーっと窓を開け、首を出してみると――


「うわっ」


 なんだろう? なんというか……そう、白粉(おしろい)。白粉のニオイが私の鼻腔を刺激した。


「どこか近くで女官か妃が集まっているのかしらね?」


 そんなことを考えながらボーッと車窓を眺めていると、馬車は大きな宮(宮殿)の前で止まった。大華国にしては珍しい三階建てで、そこかしこに精巧な彫刻が施されている。皇帝陛下や上級妃の住まいと紹介されても信じられるほど。


(迎賓館みたいな?)


 いやいやそれはないかと頭を横に振る私。外国からの賓客ならとにかく、ただの平民の冒険者であるのが私だ。いくら欧羅でSランク冒険者にまで上り詰めたと言ったところで、大華国では無名に等しいのだからこんな豪華な宮で迎えられるいわれはない。


 だというのに。私は馬車から降りるよう促され、迎賓館っぽい建物に通されてしまった。


(まさか、豪華な衣装と馬車だから新入りの妃と勘違いされた……とか?)


 さすがにないかーっと思いつつ、そういえば割り札の管理も杜撰だったわねと思い出す。いやいや、しかしまさか。天下の宮殿で。いやいやいや。


 心の中で一人ツッコミ続けていると、広めの部屋に通された。部屋の中心に据え付けられた大きな(しょう)(ベッド)に、ソファのように広めの椅子……。まず間違いなく寝室だ。


「では、この部屋でお待ちください」


「あ、はい。いつ頃になりますか?」


「そうですね、やはり夜になるかと」


「夜……」


 役人は忙しいものだと思っていたけど、そこまでかぁ……。


「お付きの者は別に来ると聞いております。では、ごゆっくり」


「へ?」


 お付きの者? 従者って意味?

 そんなもの、平民の冒険者である私にいるわけない。


 さっさと部屋を出ていこうとする女官さん。


「ちょっと待って――」


 違和感を問い糾すため追いかけようとした私は――着慣れない服の裾を踏んづけて、思いっきり転んでしまった。


 超痛い。

 身体はもちろんのこと、心が痛い。20歳にもなって、Sランク冒険者の私が、服の裾を踏んで転んじゃうとか……。


 女官さんは大声を出せば戻ってきてくれたと思う。

 しかし、転んだ姿を見せるわけにはいかなかったので沈黙を保ってしまった私だった。こういうところが悪いんだと思う我ながら。





「……暇ねぇ」


 あれ以降、誰も部屋にやって来ない。

 空間収納(ストレージ)には水や保存食が入っているので飢える心配はないとはいえ、暇だけはどうしようもない。


 せっかく宮殿の中に入れたのだから冒険したいな~探索したいな~とも思うけど、今はお仕事できているからね。依頼主がやって来たときに留守にしているのはマズいでしょう。


 あと、変なところに迷い込んで『貴様! スパイだな!』と首を刎ねられたら大変だし。いやこの国の兵士はスパイなんて言葉は使わないか。


「あとは~、読書とか?」


 部屋の中には本棚があって、いくつかの本が収められていた。王都とは違って紐綴じの本には背表紙にタイトルが記されていないので、一つ一つ取り出しながら表紙の文字を確認していく。


「……難しいタイトルばかりね」


 これはあれだ。庶民向けの『小説』じゃなくて、君主様が読むような『大説』だ。政治やら経済やらについて記されている本。


 試しに一冊取り出してみて、ソファの上に移動して読んでみる。えーっと、しーのたまわーく?





「――おーい。そろそろ起きろー」


「んあ?」


 どうやら大説を読んでいるうちに眠ってしまっていたらしい。寝ぼけ眼を擦ってから、声を掛けてきた男性を見据えると……。


「……あれ? 昨日ゴロツキたちから助けてくれた?」


 私好みのイケメンが、私の顔を覗き込んでいた。


「おぉ、やはり俺の見間違いではなかったか。いやその顔と銀髪を見間違うはずもないのだがな」


 イケメンさんが私が寝ていたソファに腰掛けた。身体が触れあうような近距離だ。


「たしか、勝。名前は勝よね? 門番への対応を私に任せてさっさと逃げちゃった」


「ぐっ、そ、そう言ってくれるな。あそこで騒動に巻き込まれると色々とマズかったのだ」


「何がまずいのかは分からないけど……つまり、面倒ごとになる可能性があったのに助けてくれたのね?」


「理解が早くて助かるな。まぁ、銀級冒険者である凜には助けなど要らなかっただろうが」


「ふふっ、助けてくれるという行為自体が嬉しいものなのよ。……あれ? 私、銀級冒険者って説明したっけ?」


「あぁいや。今朝、冒険者組合に顔を出してみたのだ。そうしたら宮殿に向かったと教えられてな。急いで戻ってきたのだ」


 ごほん、と。わざとらしく咳払いをする勝。


「いや、まさか李家のご令嬢(・・・・・・)でありながら冒険者としても活動しているとは。よくあの腹黒親父が許したものだ。……だが、そういえば娘が銀髪であるという噂は聞いたことがあるし、よく見れば面影があるような気もする。しかし、『妃』だとは驚いた。実を言うと今日仕事を抜け出して冒険者組合に行ったのだが、宮殿に向かったと聞いてな――」


「ちょ、ちょっと待って?」


 なんだか一人で盛り上がっている勝に手を伸ばし、語りを中断させる。


「李家のご令嬢? 妃? どういうことよ?」


「む?」


「いや、『む?』じゃなくて」


「…………。……お前は李凜風(リンファ)ではないのか? 凜というのは偽名だとばかり」


「少なくともご令嬢だったことも、妃になった覚えもないわ」


「……どういうことだ?」


「こっちが聞きたいわよ」


 なんだか盛大な誤解がある気がしたので、私は今日ここに来るまでの経緯を説明し始めた。冒険者として依頼を受けてー、女官に連れられてー、この宮に案内されたらいつの間にか眠っていたーっと。


「……はぁ? なんだそれは? 仕事でやって来た冒険者と、今日新しくやって来る妃を取り違えたとでも言うのか? 宮殿に仕える役人が?」


「でも、私は案内されてここに来ただけだし」


「……依頼の際に渡されたという割り札は?」


「あの女官が持って行っちゃったわよ」


「……そもそも、冒険者に依頼を出すという話もなかったはずだ」


「え? そうなの?」


「うむ。雷獣が出るという噂は確かにあるが、しょせんは噂だしな。あとは宮殿に冒険者を招くというのなら会議の議題に上がるはずだし、俺にも許可を取るはずだ。こう言っては何だが、冒険者は『(きょう)の者』扱いされているからな。宮殿に入れるとなれば反対する者も多いだろう」


 侠。

 よく言えば義侠心に溢れ、弱きを助け強きをくじく者。悪く言えば法律ではなく力で物事を解決する荒くれ者。欧羅風に言えばアウトロー。

 まぁ、冒険者っぽいと言えなくもないかもしれないわね。冒険者はちゃんと法を守るけど。


 しかし、「俺にも許可を取る」ねぇ……?


「今さらの確認で悪いのだけど。あなた、もしかしなくても偉い人?」


「おう、偉いぞ。こう言っちゃ悪いがとんでもなく偉い男だ」


「……私は凜。名字は分からない。銀級冒険者をやっているわ」


 わざわざもう一度自己紹介をしたのは、『偉い人間は自分から自己紹介をすることはない』という知識があったから。


 我が意を得たり、とばかりに勝が口角を吊り上げる。


「名乗られたからには名乗り返そう。()こそは大華国八代皇帝・劉勝である」


 なんかわざとらしく胸を張る天子様だった。今さら『朕』なんていうご大層な一人称を使われてもなぁ。


 というか、


「……あなたねぇ。皇帝陛下ともあろう御方が、宮殿の外に出てケンカに割り込んだの? もうちょっと立場というものを考えたら?」


「……俺が言うのも何だが、もうちょっと驚いたり敬ったりするべきではないか?」


「今さらじゃない?」


「……まぁ、今さらか」


 くくくっと笑う勝だった。


 だって最初から『皇帝と平民』として出会ったならまだしも、一緒にゴロツキ共を倒した仲だしねぇ。


 と、いきなり真面目な顔になり、私を見つめてくる劉勝。


「取り違えとはいえ、凜が俺の妃になってくれるなら喜ばしいのだが」


「あらまぁ積極的ね? 昨日、私の顔を見ただけで顔を赤くしていた男と同一人物とは思えないわ」


「……言ってくれるな。この後宮で、『皇帝』とは格好付けなければならぬのだ」


「さすがは皇帝陛下。後宮に数多くの美人美女を監禁して乳繰り合っているだけはあるわね」


「監禁……乳繰り合う……」


 事実なので言い返せないのか渋い顔をする劉勝だった。


「そうねぇ。妃、妃かぁ。皇帝陛下に(かしず)くなんて御免被るところだけど、あなたなら悪くないとは思えちゃうわね。何もなかったらお茶に誘っていたのだし」


「なら――」


「でも、駄目ね。ここにいるべきなのは別の女性なのだから。そもそも、本来のお妃様はどこ行ったの? 早く探すべきじゃない?」


「……それもそうだな。まずは凜がここに連れてこられてしまった理由と、ここにいるべき『凜風』の捜索。凜を口説くのはそのあとだな」


「はいはい。あとは依頼の件が本当はどうなっているか確かめて欲しいのだけど」


「そうか、それもあったな。まずは丞相への確認と、冒険者組合に問い合わせもしなければならないか。どちらにせよ今晩すぐに解決する問題でもないな」


「私はどうすればいいの?」


「ふむ……。無いとは思うが、妃を害してこの部屋に居座っている可能性もあるからな。しばらくはここで寝泊まりをしてもらおう。もちろん、食事や生活に必要なものは何不自由させないと誓おう」


「うへぇ、退屈……」


 まぁ、牢屋にぶち込まれないだけマシなのだけど……。


「妃並みの生活ができるのだから喜んでいいはずなのだがな」


 クククッと笑った劉勝は立ち上がり、気合いを入れ直すように襟を正した。そのあと部屋の中をじっくりと見渡していく。


「そういえば、侍女もいないのか?」


「私を案内してくれた女官さんによると、後からやって来るらしいけど……」


「ふむ……。さすがの俺もその辺の流れまでは知らないな。貴人用の門を通らせるわけにも行かないし、そんなものか? ……だが、侍女が来ても赤の他人である凜の言うことなど聞くまい。一人では何かと不便だろうし、あとで信頼できる侍女を派遣しよう」


「ずいぶんと気を使ってくれるじゃない?」


「ここで臍を曲げられたら口説くどころではなくなるからな」


「口説くって」


 あまりにストレートな物言いに私がちょっと呆れていると、劉勝は手慣れた様子で私の髪を一房取った。


「こういうとき、欧羅では接吻するのだったか」


 軽く、私の髪に唇を落としてから「またな」と部屋を出ていく劉勝。


「……さすが皇帝陛下。女の扱いに慣れているわ」


 ちょっと赤くなってしまった頬をごまかすため、手のひらで自らを扇ぐ私だった。




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