表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/11

第七章:勇者軍団の初クエスト




 勇者軍団の初クエスト――それは、廃城野調査だった。


 

 王都から少し離れた森の奥。そこには、かつて魔王軍が拠点としていたという古びた城がそびえている。


 

 高い石壁は風化し、ツタが絡まり、瓦礫が散らばっている。城門は半ば崩れ、入口は暗闇に沈んでいた。




 

「うわぁ……めっちゃダンジョン感ある!!」


「すげぇ、本当に異世界の遺跡って感じ!!」


「これぞ冒険の醍醐味ってやつだな!!」



 

 勇者たちはワクワクした様子で城の中へと足を踏み入れた。

 



 城の内部は、年月の経過を物語るように荒れ果てていた。


 崩れた柱、割れた天井、そしてホコリまみれの絨毯が、かつてここが威厳ある城だったことを物語っている。



 

「結構広いな……」




 足元には砕けた石や散らばった装飾品の残骸。

 どこかに潜んでいるかもしれない魔物の気配を警戒しながら、勇者たちは慎重に歩みを進める。



 今回の調査依頼は、「夜になると廃城から何か物音が聞こえる」というもの。

 正体不明の怪異がこの城に巣食っている可能性がある。


 

 勇者たちは緊張しながらも、探索を進めていく。


 

 だが――




 ザザ……ザザザ……



 

 どこからか、不気味な音が響いた。




「……今、何か聞こえなかった?」


「え……?」



 

 勇者たちは一斉に立ち止まり、辺りを見回す。



 

 ひゅううう……


 


 風が吹き抜け、古びたシャンデリアが軋む音を立てた。


 勇者たちの背筋に、ゾクリと冷たい感覚が走る。


 何かがいる。


 

 彼らの背後で、闇に沈んだ廊下の奥から――



 

「クスクスクス……ククク……クハハハハハ!!!」



 

 奇妙な笑い声が響き渡った。




「ハァ~イ、よく来たねェェェ!!!」


「ッ!?」



 

 勇者たちが声の方向を振り返ると、暗闇の中から一人の男が姿を現した。


 

 道化の仮面をつけた、異様な雰囲気を纏う男。

 着ている服はカラフルなピエロ風の衣装だが、どこか不気味な気配が漂っている。

 


 背筋が凍るような笑みを浮かべながら、ゆっくりと勇者たちに近づいてくる。


 


「初めましてェェ、勇者サマたちィィ!!」

 

「お前は……何者だ!!?」


 


 勇者・天野拓斗が剣を構える。

 


 道化の男は、ゆっくりと両手を広げながら、口を大きく歪めた。


 


「ボクの名前は《カリオ・ザ・ジョーカー》!! かつての魔王軍幹部の一人!!!」


「魔王軍……幹部!?」



 


 勇者たちの顔が青ざめる。



 


「さァァァァ!!! 楽しいパーティーの始まりだァァァ!!!」



 

 カリオが手を叩いた瞬間――



 カチッ


 

 足元の床が突然、沈み込む。



 

「なっ!?」



 

 次の瞬間、大量の矢が壁から発射され、勇者たちを襲う!!!



 シュババババババ!!!



 

「くっ!!」


「罠だ!! 伏せろ!!!」



 

 勇者たちは慌てて回避するが、そこに次の罠が待ち受けていた。




 ズガァァァァン!!!



 

 天井から巨大な鉄球が振り下ろされる。



 

「うわああああ!!?」



「何なんだよ、このトラップの量!!!」


「モチロンだヨォォォォ!!! だって、ここはボクの遊園地だものォォ!!!」



 

 カリオはケタケタと笑いながら、さらに手を打ち鳴らした。




「くそっ、いい加減にしろ!!」



 

 天野拓斗が叫び、剣を振るいながらカリオへと突撃する。


 


「おォォっとォォ!?」



 

 カリオは異常なほど軽やかに後方へ飛び、まるで踊るように宙を舞った。



 

「ンッフッフッ! そんなノロマな剣、当たらないヨォォ!!!」


「っ……この動き、速すぎる!!?」



 

 カリオの動きは常軌を逸していた。

 ピエロのように軽快なステップを踏みながら、まるで地面に足が触れていないかのような異様なスピードで勇者たちを翻弄する。



 

「さァァァ、もっと面白い顔を見せてくれよォォ!!!」


「ふざけんなァァ!!!」


 


 魔法使いの白石玲奈が火炎魔法を詠唱する。


 


「ファイアランス!!!」



 

 轟炎の槍がカリオへと向かって放たれた。


 しかし――



 

「アハハハハハ!!! そんなモノォォ……!!!」



 

 カリオは空中で回転しながら火炎槍をかわす。


 


「ハズレだヨォォォ!!!」


「なっ!?」


「こんな動き、人間の反応速度じゃ……!」


 


 カリオはニヤリと笑いながら、右手をクルリと回した。



 

「はい、オカエシィィ!!!」



 

 その瞬間、カリオの指先から魔法弾が放たれる!!!




 ズガァァァァン!!!



 

「ぐああっ!!」


「くそっ……!!」


 


 勇者たちは次々と魔法弾の直撃を受け、吹き飛ばされる。


 


「フッフッフ……やっぱり勇者サマは最高のおもちゃだネェェ!!!」


「もっともっと楽しもうじゃないかァァァ!!!」



   

「クッ……!! なんてヤツだ……!!」


 


 天野拓斗が歯を食いしばりながら、剣を握り直す。


 しかし、彼の腕はすでに震えていた。



 

「このままじゃ……ダメだ……!!」


「まだだ!! 戦える!!!」



 

 勇者たちは再び立ち上がる。


 しかし――


 


「ンッフッフッフッ……!! いいねェェ、まだやる気はあるようだァァ!!!」


「けど、そろそろ時間切れだヨォォ……!!!」



 

 カリオが高らかに笑う。


 その瞬間、城全体が揺れた。



 ズガァァァァァァン!!!!



 

 勇者軍団の足元が、一瞬にして崩れ落ちる!!!



 

「うわあああああ!!!?」



 

 勇者たちは、なすすべもなく落とし穴へと落下していった。


 


「クハハハハハハ!!! まさに滑稽!!!

 勇者サマたち、しばらく地下で大人しくしていてねェェ!!!」



 

 勇者軍団、敗北――!!!




 こうして勇者軍団は、魔王軍幹部・カリオの手によって捕らえられてしまうのだった――。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ