表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/59

見えない心

夢芽は盗賊たちの元アジト、正確には風の力場を探索していた。

クリフと夢芽、休憩がてら食事をしようということになり、食べることができそうな物を探していた。


本当はクリフを守りながら行動したい。

しかし、多少腕を上げたといっても、かつての英雄の足元にも及ばない。

なんせ彼の実力は、世界を救うことができるほどなのだ。

満面の笑みで「二手に分かれて集めたほうが効率がいい」と言われてしまえば、「はい」と答えるしかなかった。


『もっともっと強くなってみせる。

あと、料理とかも頑張る!』

炊飯器もないレンジもない、なんだったら火をつけるのも火の魔術か、お金があればマッチ、無ければ火打ち石だ。

『ああ、レトルト、チルドに、冷凍食品ありがたや。便利な文化に万歳』

へへへ……と力なく笑ってみるが、情けなさに涙が出た。



以前訪れた時は、草木が生い茂り、森のような印象をもっていたが、よく見れば人工的な建物が見られる。

恐る恐る中に入ってみると、機械的な物も見受けられて、そういった知識がない夢芽でも、かつてここには高度な文明があったのではないかと考えることが出来た。

『クリフに聞いたら分かるかな。分かってても答えないかな?

………………………、チャッ◯マンとか無いかな』

辺りを見渡しても残念ながら点火棒は無いので、ブチブチと雑に草を引っこ抜いて、食べれるか分からないがとりあえず集めてみる。


ふと、視界の隅に人間の影を見てドキリと心臓がはねる。

落ち着いてみれば姿見鏡であることが分かり、ホッとする。


鏡には自分の身体に刻まれた、ツタのような文様がハッキリと映っていた。


『お洒落と言えばお洒落、でもタトゥーっぽいっちゃあタトゥーっぽい』

自分の中に、タトゥー=ヤクザなんて考えはないが、それでもまだまだ日本では偏見があるものだ。

『あれ?もし私が日本に帰ったら、銭湯とか無理なのかな??スーパー銭湯とか温泉、けっこう好きなのに……』

その思考に違和感を感じる。

違和感の正体を考えてみると、答えは案外すんなり出てくる。



『ああ、私、帰る気ないんだ……』


『この世界で、クリフを守りたい』


『なんでこんなに気持ちが揺るがないんだろう』


そちらの気持ちには、なぜか答えは出なかった。


『真穂………、ごめんね。

いっぱい巻き込んで、困らせて……。ひどいお姉ちゃんだ。

それなのに、私はこれからもそんなことを繰り返すんだ……』


風が吹き、その冷たさに身体が震えた。




同時刻



真穂は幸太の病室にいた。

まだ目覚めないその顔を、じっと見つめる。

一切動かないのは、とても不安だった。

何度か手を鼻や口元に当てて呼吸を確認した。

手を握り脈に手を当て、動くことを確認した。

視線を動かし、上下する胸を動きを確認した。


『生きてる、大丈夫』


何度も繰り返し、涙が出そうになるのをこらえた。


『はやく目を開けてほしい』

『大丈夫だと笑ってほしい』

『くだらない話で安心させてほしい』



『僕はどうしたいんだろう……』

『この気持ちは友情なんだろうか』

『本当に恋だと言える?』

『力ほしさに自分に嘘をついてはいないだろうか』


まとまらない感情をもて余す。

『自分のしたいことが分からないなんて、姉さんならないんだろうな……』

姉のことは心配だ。

ゴートンが無事に逃げたというが、国の外は未知の領域だ。想像もしていないような、とんでもない事故が起こったとしても不思議ではない。


『姉さんのことだ。それで何かあっても気にしないんだろうな。僕が気を揉むことを望んでないってことくらいは分かる。

それでも心配だ。どうか無事で……』


祈ることしかできない。

祈ることばかりが増える。

『神様が本当にいて、僕の望みを聞いているのなら、なんて欲深なのだと呆れるのだろうか。

でも、昔、何か本で読んだことがある。

祈るのは、願いを叶える為じゃなくて、祈ることで自分の見つめ直すことができるのだと。

なら、祈って祈って、脳が擦りきれるほど祈れば、僕は僕の気持ちがわかるようになるのだろうか』


無意識に手を組んでいた。


幸太の為に祈った。

夢芽の為に祈った。


どれだけの時間が流れたか。

幸太の指先がピクリの動く。

閉じた瞼にも動きがあるように見えた。


「幸太!幸太!」


真穂は繰り返し名前を読んだ。


「僕だ!分かる?真穂だよ。

目を開けて!幸太」


手を強く握った。

その瞬間、幸太の手が真穂の手を強く握り返す。


そして、ゆっくりと瞼が開いた。


「ま、ま………ほ?」

かすれていたが、幸太の声は確かに聞こえた。


「あ、ああ、あ、ありがとう、ありが……とう」

感謝の言葉は、誰にむけたものなのか、真穂自身にも分からなかった。

それでも、この瞬間に感謝せずにはいられない、感情が濁流のように、流れ込んできた。

大きく見開いた真穂の目から、ポロリの涙がこぼれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ