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わかりやすくも複雑な……

テーブルの上には山程のさやいんげん。

エレナは嫌な顔を隠そうともせず、筋取りをしている。

「なんで…、こんなこと」

「沢山いただいたんだ。エレナはスナップエンドウのが好きだよね。でもこれはこれで美味しいものだよ。

何にしようか?サラダ、スープ、あ、ナッツと和えるのはどうだろう」

「別に……、胃に入れば同じだわ」

「料理が違えば、胃に入るものも違うだろ」

「今は研究で忙しいのよ。真穂も来たし、したい実験が山程……」

「そう言って食べるのを忘れるだろ?食事は大切なエネルギーだ。不足すれば研究も滞る」

「携帯用の補助食品を食べればいいのよ。最近出回ってる大豆の補助食品は、なかなかの味だったわ」

「お馬鹿さんは自分が言ってる言葉の意味が分からないのかな?補助食品は補助なんだよ」

「馬鹿とは何よ!!!」



「イチャイチャ中、すみません。話、いいですか?」

台所のドアの前に、客人がいた。

「一応メイドさんには一声かけて入ってきましたからね。どうせここでイチャついてるだろうと思って、案内を断りましたけど」

声の主は、バーサル。

メガネにソバカス、白い肌と濃い緑色の髪を三つ編みにしている。背が低く、ひどく幼く見えるが18才になる。

エレナの助手であり、チアの末娘でもあった。

「真穂君の契約の手続き完了しました。あとで最終確認と今後の実験計画についての確認お願いします。

あと、まぁこれはついでなのですが、幸太君がイラついてます。彼にしては珍しいので、精神の状態が人魔術にどの程度影響するかも確認したいです。それについても提出した書類に詳細が書かれてますので確認お願いします」

「分かったわ。あと、別にイチャついてないから」

「へー、幸太君も困ったものだと思っていたけど、それはそれで役にたつんだね」

ゴートンはそう言いながらも苦笑いし、手元は止まることなく筋取りをしている。

「え?あなた、なんで幸太がイライラしてるのか分かるの?」

エレナは少し驚いたように話す。

元々あまりやる気のない筋取りの手は、しっかり止まっていた。

「え?分からないの?」

「分からないわ」

エレナは二人の表情から、幸太の心境は一般的に考えれば分かるものだということを理解する。

理解はするものの、自分にはわからない。

「え?なんで?どういうこと??」

「鈍いとは思ってましたから、まぁ、想定内と言えば想定内」

「ちょっとバーサル!私に失礼だわ」

「自分の為にも少し考えたほうがいいですよ」

「だからなんなのよ!もういい!仕事に戻るわ」

エレナは立ち上がると部屋をあとにする。

その後ろをバーサルがついてくる。

「いいんですか?筋取り。別にこっちは後でいいんですけど」

「いいのよ、仕事したかったし。いいきっかけだったわ」

「二人ともお忙しいんですから、共有の時間は大切にしないと嫌われちゃいますよ」

心配しているかのような言い方だが、口調は冷たくトゲがある。

だがいつものことなので、エレナはそれについては気にしていなかった。

「元から好かれてないから問題ないわよ」

「は?」

「あら知らないの?

私は生まれが訳ありだから、彼の家に籍を置いたほうが城や研究施設、貴族街、そういった所をウロチョロしやすいの。周りの目が多少は違う。あくまで多少だけど。

彼は私に研究を成功させてほしい。私は後ろ盾がほしい。つまり利害の一致婚なのよ」

突き放すような言葉。

言葉とは裏腹に、エレナの表情は曇った。

それを見たバーサルが、苦虫を噛み潰したような顔をする。

「な、何よ、その顔」

「ぼく、失礼承知で言わせていただきますと、ゴートン団長、嫌いなんですよ」

「は?何!?!?」

「まぁ、それについては、ゴートン団長も気づいているでしょうから問題ないとは思います」

「無いの!?!?」

「ゴートン団長は嫌いです。嫌いですが、今ちょっとだけかわいそうだと思いました」

「はぁ?????もう!ほんとなんなのよ!今日は!!」

エレナの叫び声が、屋敷の中に響き渡った。

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