表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/59

離れていても

青い鳥が空を駆ける。

幸太は夢芽の運転する飛行艇に乗っていた。

形状はオープンカーのように座席の上部は開いているので、全身に風を受ける。

心地よく感じはするものの、風量はかなり強い。シートベルトという便利なものはなく、そもそも後部座席なんてものもない。人が乗れるスペースが、運転席を含め少し広めにあけられているだけだ。

そのため、振り落とされないようにと、幸太の腕はしっかりと夢芽の腰に手を回されていた。

「ねぇ幸太、あそこで馬に乗って走ってるのが騎士団で、その先に盗賊がいて、更にその先に盗賊のアジトがあるんだよね」


「そうだけど、あまり前に出ないほうが良い。

騎士団はつかず離れずで距離をとっている。その方がアジトに誘導しやすいからな。変に感づかれると混戦になるかもしれない。この機体は目立つから、むしろもっと高く、後方からつけるんだ」


「た、高く……。うん、分かった」

「で、できるか?」

「感覚的には自転車乗ってる感じだから、うん、できる」

自分に言い聞かせてるように聞こえるが、とりあえず突っ込まないでおいた。

『正直なところ、夢芽が来てくれて助かった。

ゴートンの作戦は聞いてはいたけど、どうにも自分が合流する手段があいまいで、ああ、これは自力で合流できないような奴は足手まといという、無言の指令なんだって思ったんだよな』

ゴートンは幸太に危険な任務はさせない。

実力がともなわなければ、善意の名の元に優しくさりげなくはぶかれる。

幸太の実力なら、国の中ならまぁ安全だが、おそらく国の外。国を囲う塀の外である可能性が高いのだ。

そこは魔物や無法者が闊歩する、国の法が及ばぬ世界。

ゴートンの倫理観なら、「ああ、すまない。手違いがあった」の一言で蚊帳の外になりかねない。

そうなることはなんとしても阻止したかったのだ。


そんな幸太の思惑など知る由もなく、夢芽は無邪気に話す。

「青い鳥はね、風の魔力を定期的に入れないといけないんだって。充電式ってやつだね。当然私には出来ないから、クリフにやってもらったんだ。

クリフは地水火風、全部の魔術を使えるんだよ。それってめっちゃレアなんでしょ?すごいよね」

「そうだな。俺なんて火の人魔術がちょこっと使えるだけだもん」

『しかもまだ未完成な技術なもんだから、まるで筋肉痛のように翌日節々が痛い……ということはなんかカッコ悪いから黙っていよう』

明日間違いなく訪れるであろう痛み。

考えたところでどうにもならないなら、深く考えない。

ならば明るい話題を続けよう。

「クリフ様には感謝だな。俺の伝言も伝えてくれたし、青き鳥も貸してくれた。

本当にありがたい」

『思っていたよりずっと信頼できる人だったんだな。認識改めないと……』


「え?伝言?なんのこと?」

「え?」


詳しく聞いてみると、真穂の件を聞いたのはエレナからで、クリフは何も言ってなかったと……。

でもなんだかんだで青き鳥は貸してくれたと……。

でもとんでもない契約はしたと……。


『こ、これは、本当に何を考えてるのか分からない……』

敵なのか味方なのか……。

いや、立場を考えるならやはり敵なのか。


しばらくの沈黙の後、夢芽は少し気まずそうに言った。

「あのさぁ、まぁ、そんなわけで、私、完全に教会側の人間になっちゃったわけなんだけど、それでも、その……、友達でいいかな」


幸太は迷いなく、まっすぐに答えた。

「当たり前だろ?」

精神的肉体的に離れていても、夢芽と幸太の関係になんの変わりはない。

幸太は心の底からそう思った。


「そっか!そっかそっかそっかーーー」

夢芽はニカッと笑って、幸太の返事を心の底から喜んだ。

その姿には素直に好感が持てる。

幸太がまっすぐに贈った言葉を、夢芽はまっすぐに返してくれる。

『夢芽が人に好かれるのは、こういう所なんだろうな。夢芽自身は否定しそうだけど、真穂が言った通り、愛されやすい性格をしてるんだろう………。

もし真穂が、同じ状況だったら、こんなに素直に友達かどうかなんて聞かない。

自分の中に抑え込んで考え込んで苦しむのだろう。

誰にも気づかれずに………』


真穂と幸太が共に過ごした日々はとてつもなく短い。

自分が知る幸太の姿など、本当にほんの一部にしか過ぎない。

分かっているはずなのに、それでも幸太は自分の中にある幸太のイメージになんの疑問も持たなかった。

そして、続けてこうも想う。


『そんな不器用な真穂の力になってやりたい。

夢芽の性格に好感は持てるが、それはイコールして真穂の本質を否定できるものじゃなくて、むしろ守ってやらなくてはならないって気持ちになるんだ……。

だから…、真穂……

待ってろよ。この世界のどこにいても、必ず見つけ出して助けてやるからな』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ