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全力疾走

『闇夜に紛れる。

そんな忍者のような生き方が出来るとは、忍者アニメを夢中で見てた昔の私に教えてあげたい。これが感慨深いというやつだろうか……。たぶん違うな』

教会近くへと進めば、ローブを着た人物が複数視界に入る。年齢は10代に見える者、50代にも見える者とまちまちだ。顔は見えないが、男性女性、どちらもいるように思えた。

『あの人たちが聖軍士ね』

警戒し、隠れながら進む。

しかし、やはり教会の中へは入れない。聖軍士の死角など、仮にあったとしても夢芽には見当がつかなかった。

『でも、行くっきゃない』

見当がつかなくても、とりあえず考えては進む。

木の影、建物の影、ジリジリと、少しずつ進んでみる。

それでも

『やば!見つかった!』

何人かの聖軍士がこちらに駆け寄ってくる。

ならば

『逃げるしかないでしょ!でも後ろに逃げるんじゃない』

「突進だーーーーー!!!!」

うまく不意をつけたらしく、聖軍士に体当たりすると、一人体勢を崩して倒れた。その隙に教会の奥へと走っていく。

当然、大勢の聖軍士たちが追いかけてきた。

一人追いついて羽交い締めにされるが、今度はおもいっきり噛みついた。

緩んだ腕から逃れ、再び奥へと奥へと走る。

しかし、やはりそう思い通りには行かない。

再びおいつかれ、今度は後ろから殴られた。

夢芽は倒れ込む。頭がグラグラするが、再び立ち上がり、一心不乱に走り出す。


『まともに戦ったって勝てない。動けるなら、前に進む』


そんな夢芽の考えを読み取ったのか、聖軍士たちは剣を抜いた。

捉えるのではなく、殺すことに決めたということなのか、それとも生きてさえいればあとはどのようなケガを負っても良いと判断したのか。

鞘から剣をぬく音が、夢芽の耳に届く。

本来なら聞こえるはずのない音が、この距離で届く。

極限状態は、防衛本能を呼び覚まし残酷なまでに夢芽の精神を揺さぶった。

『走れ!走れ!走れ!』


ふと、夢芽の前に影が出来る。

この影は夢芽の後ろ、上空に何かが飛び出てきたからだ。

本能的に夢芽は前に飛ぶ。

着地がうまくいかず転んだが、先ほど自分がいたであろう場所は己の目を疑うほどの石材が重なり合っていた。

何か重いものが地面を叩き、割れた床が盛り上がっていたのだ。

その何かとはなんなのか。考える必要はなく、すぐに原因は夢芽の目の前に現れた。


「ファ、ファナさ………ん」


そこには、ファナがいた。

手には一見巨大なハンマーにも見える。しかしよく見るとそれはロッドだ。

ファナの身の丈程あるであろう長くて、先が平たく、豪華な装飾品がつけられた武器は巨大なロッドだった。

それを片手で振り上げ、夢芽に警告する。

「夢芽さん、ここは聖域です。無断で立ち入ることは許されません。今すぐ投降してください。

そうすれば、命をとるようなことはいたしません」


「ごめん、ファナさん」


夢芽はゆらりと立ち上がると、再び教会奥へと走り出した。


ファナは飛び上がり、振り上げたロッドを下ろす。

夢芽はギリギリ回避する。

しかし二撃目が腹部を直撃し、そのまま壁に打ちつけられた。

『苦しい……。でも石材を砕いたほどの威力はない。まだ、殺すつもりはない。なら………、私は』

「進むんだーーーー」

夢芽自身も、どこからこんな力が湧いてくるのか分からなかった。

全身が痛くて苦しい。

それでも足は前に進んでくれた。

『まだ走れる。走れる。今ここで頑張らないと、ダメな気がする。ここなんだ!踏ん張る所は。絶対に止まれない』


ファナは、後ろに控えている聖軍士に伝えた。

「仕方ないですね。足を折りなさい。命と目、そして考えることの出来る脳があればかまいません」 

聖軍士は頷き、走り出した。

夢芽の目の前にドアが見える。

荘厳で装飾の美しい、大きなドア。今まで見てきた入り口とあきらかに違う。


『あそこが誓約の間かな。分からないけど、何かしらはあるはず。重そうだし、特別な時にしか入れないなら、鍵がかかってるよね』


力を振り絞り更に勢いをつけ、おもいっきりドアに体当たりした。

「って、鍵かかってなーーーーい!!!」

意外にもあっさりドアは開き、勢い余って顔面からスライディングした。

たが、その勢いのおかげで聖軍士に追いつかれることを防げたのだが、本人が気づくことは無かった。

『い、痛い………』

それでも必死に立ち上がろうと顔を上げる。

目に入ったのは美しい作りの祭壇。だが夢芽の心を震わせたのはそこに安置された石像だった。


「きれい………」

真っ白な石像、胸には七色に輝く宝石。

長い髪が体を絡みつくように流れ、伏し目がちな瞳は博愛も憐れみも映すかのように見えた。


女神


その言葉が何より相応しかった。

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