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魔法少女クリミナル  作者: 影野龍太郎
episode15【アントリューズ誕生秘話】

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ep15-4 突然の出撃命令!

「ところでぇ」


 と、ここでキョーコが口を開いた。またこいつは……今度はどんないらんことを言い出すつもりなのか……。微妙にイラつくあたしだったが、それは彼女には伝わることなくキョーコは無邪気な笑顔で問いかける。


「今の話で白井優希さんの儀式がアントリューズ誕生のきっかけじゃないってーのはわかりましたけどぉ、それは彼女がアントリューズと関わってない証拠にはならないと思うんですけどぉ?」


「私も……それ、思った……。それだけじゃ、決めつけられない……」


 眠夢(ねむ)ちゃんまでもがそう言った。確かにそうだ。マリス様とクリッターが1年前に出会いアントリューズを結成したことが事実でも。それによって否定されたのは優希黒幕説やマリス様=優希説だけであり、アントリューズが彼女の失踪に関わっていない証拠にはならないのだ。


「それはその通りですね」


 マリス様はあっさりとその意見を肯定した。


「しかし、残念ながら、関わっていない証拠を出すことなど出来ません。ないことを証明するのは非常に困難なのですよ」


「でも、逆は簡単ですよねぇ? 優希の痕跡を見つければ、彼女がアントリューズに関わってる証明になる」


「キョーコ!!」


 あたしは思わず叫んだ。だって彼女の言葉はあまりにもマリス様やクリッターに喧嘩を売るものだったからだ。実際にその意図があるかどうかは分からない。キョーコが何を考えているのかは分からないが、少なくともあたしにはそう感じられたのだ。


 しかし、マリス様は軽く手を上げあたしを制すると、むしろどこか嬉しそうにキョーコに向けて言った。


「キョーコちゃん。私はあなたのそういうこところ、好きですよ。私はですね、常に自分の意見を疑いもなく受け入れ肯定するだけのイエスマンというのは好みません。もちろん無闇矢鱈に反抗したり否定することを好むわけではありませんがね。あなたの先程の疑念もそうですが、疑問に思ったり違和感を覚えた時には遠慮なく指摘する、その姿勢は大切にすべきです」


「あっ、ありがとうございますぅ! やっぱりマリス様は偉大な存在ですぅ! キョーコますます惚れちゃいますぅ!」


「うふふ。あなたも梨乃ちゃんに負けず劣らず可愛らしい方ですね」


 マリス様の言葉にキョーコは心底嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべる。……なんかちょっとムカつくわね……!


「お褒め頂き光栄ですぅ!」


 キョーコはそう言うと軽く頭を下げた。


「それはともかくとして、先ほどの話ですが、もしも疑うというのならば、アントリューズを徹底的に調べてくださっても構いませんよ? 優希の痕跡など見つかる筈がない、いないのだから当然ですね」


「マリス様は……優希の行方を知らないの? だって、マリス様は……何でも知っているんでしょう? 別にアントリューズにいなくても、その気になれば、わかるんじゃ……?」


「眠夢ちゃん、あなたもなかなか痛いところを突いてくれますね。しかし、残念ながら私にもわからないことはあるのです。ふふ、失望しましたか?」


「……逆、そういうことを平然と言えるマリス様はすごい……」


「ふふふ」


 そんなやりとりをしている二人を尻目にあたしは心中でため息をついた。キョーコと言い眠夢ちゃんと言い何故こんなに遠慮がないのか。


 まあ確かに、マリス様はそういったことを嫌う性格の人ではないし、アントリューズのメンバーに対して平等に接してくれている。だけど、だからといってあまりにも遠慮がなさすぎじゃないだろうか……。


 二人は別にあたしの部下ではないのだけど、一番の年上かつ暗黒魔女歴も一番長いわけでその言動に対しての責任はあたしが負わされることになるだろう。だというのに、まったく……。


 そんな中間管理職的な悩みにこっそりため息が漏れる。


「ただ……。推測は出来ますよ、優希が今どこでどうしているのかは」


「え?」


 ボソッと呟くように言ったマリス様の言葉にあたしは思わず聞き返す。マリス様は独り言のように続ける。


「きっと、自分をないがしろにする両親や、目の上のたんこぶだった姉のいない静かな世界にいますよ……幸せかどうかは私にはわかりませんが、ね……クク……」


 やっぱり、この人、本当は知ってるんじゃあ……?


 でも、きっとこれ以上ツッコんでもおそらく答えてくれないし、たぶんアントリューズを調べてみたところで、優希の痕跡なんてきっと出てこないんだろうなぁ……。


 そんなことをぼんやりと考えるあたしだったが、マリス様はふと目を閉じると軽く顎に手をやりどこか感慨深げに呟いた。


「しかし、改めて実に興味深い事象です。三人目の暗黒魔女である眠夢ちゃんが加入し、同志として仕上がりつつあるこのタイミングで、白井優華とあなたたちの接触が起こった。これはもしかするともしかするのかも知れません。だとすれば今が好機か……」


「あの、マリス様……?」


 何やら一人でブツブツと呟いているマリス様にあたしはおずおずと声をかける。マリス様はさっと顔を上げると真剣な表情を見せる。


「梨乃ちゃん、キョーコちゃん、そして眠夢ちゃん。少々事情が変わりました、今から出撃をお願いします」


「は? え? い、今からですか? な、なんのために……?」


 いきなりの出撃命令にあたしは混乱し何とも情けない声を漏らす。しかしマリス様はそんなあたしの様子など気に留めることなく続ける。


「白井優華の件ですが、妄想にしか過ぎないあのような話など捨ておいても構わないと最初は考えました。しかし、思い直したのです、もしも、それが魔法少女たちの耳に入れば厄介なことになる可能性があります。白井優華と魔法少女が接触し、周辺を嗅ぎまわる、そうなれば優華と同じ学校に通っている、そして接触を持った梨乃ちゃんやキョーコちゃんに奴らが接触してこないとも限りません、そうなれば当然二人の正体バレのリスクが発生します、それ以外にもアントリューズに不都合なことが起こる、そんな気がするのです。杞憂かも知れませんが用心に越したことはありません。ですので奴らがその情報を掴む前に白井優華と魔法少女の接触を阻止する必要があります。そこであなたたちの出番というわけです」


 な、なるほど、確かにそうなる恐れがある以上、白井優華と魔法少女の接触を防ぐことは必要不可欠かも知れない。


 で、でもそれって、要するに……。


「つまりぃ、白井優華を始末しろってことですねぇ♪」


 ゾクンとあたしの背筋に寒気が走る。あたしの思考を読んだかのようにキョーコがサラッと残酷なことを言い放ったのだ。


 しかし、マリス様は静かに首を振る。


「いえ、狙うべきは白井優華ではありません。魔法少女たちの方です」


 へ? 魔法少女? あいつらを?


「一般人を狙い、ましてや殺害するなどまだ時期尚早、特に優華は白井財閥の令嬢、今までの比ではないほどの騒ぎになってしまうでしょう。梨乃ちゃんも一般人に危害を加えることは嫌なようですしね。どっちにしろ魔法少女たちさえ倒してしまえば優華が何をしようと恐れることなどないでしょう?」


 あたしは思わずホッと息を吐いた。良かった、優華を殺せと言われなくて……。


 しかし同時に自分でも驚くほどの後ろめたさに苛まれた。あたしは今安堵したのだ。白井優華を殺さなくて済んだという事実に。でもそれはつまり、魔法少女なら殺しても構わないと思っているということになる。自分で自分の気持ちがよくわからない。魔法少女は憎いけど殺したいとは思っていない、しかし同時に彼女たちを排除してやりたいという欲望も確実に心の奥底にある。


 それは、どこかあいつらに対して、フィクションの中の存在のような認識があるからかも知れない。マジカルブリス、マジカルカレッジ、あたしはあいつらの本当の姿を知らない。あたしと同じ中学三年生の少女なんだろうと予想はしているが、それも確実な話とは言えない。素顔も知らない、どこに住んでいるのかも知らない。あいつらのあの性格だってもしかしたら魔法少女としてそれっぽく振舞うための演技の可能性だってある。知らないからこそ心が麻痺しているのかもしれない。


(……そう重く考えることないわ、浦城梨乃。マリス様だって“倒せ”としか言ってないでしょ? 前みたいになんとかしてあいつらの心を折り二度と魔法少女として活動できなくさせる方法を考えればいいだけの話じゃない。こんなことじゃ勝てるものも勝てないわ、とりあえずボコボコにして、それからどうするか考えればいいのよ!)


 あたしは頭の中で自分にそう言い聞かせた。あたしは魔法少女のことが憎い、あいつらをどうにかしてやりたいという欲望は確かに存在するのだ。だったらそれを肯定すればいい。どうせいずれ倒さなければならない敵なのだから……。


(出来るのよ、勝つことも、殺さずに無力化させることも……。こっちは三人よ? 二対二の時ですら割と優勢だったじゃないの)


「梨乃ちゃん。どうしますか? 勿論無理にとは言いませんよ。嫌だと思うのなら嫌だとハッキリ言ってくれて構いません」


 マリス様はいつもの穏やかな声音でそう問いかけてきた。もはやあたしの心は決まっていた。


「行きます。マリス様のご命令なら喜んで従います」


「頼もしい言葉ですね」


「センパイが行くなら、もちろんキョーコも行きますよぉ♡」


「今からはちょっと面倒くさい……でも、命令なら、やる……」


 キョーコに続いてくああっと欠伸をしながら眠夢ちゃんが言った。初出撃だというのに全く気負っていない。


「だけどマリス。眠夢の()()についてはどうするクリ? 処置無しで出撃させるクリか?」


 そうして話が決まりかけていたところで、クリッターが訊ねた。そう言えば、色々あって忘れてたけど、眠夢ちゃんの処置(これに関しては未だになんのことか判然としないが)はどうするのだろうか。


「ふむ、そうでしたね。処置無しで出撃させるのは危険かもしれません。ではこうしましょう、少々疲れますが、“力”を多めに使うことで、処置に掛かる時間を早めます。そんなわけで、眠夢ちゃんはこちらに、梨乃ちゃんやキョーコちゃんはその間準備をしておいて下さい」


 言ってマリス様は眠夢ちゃんに向けて手を差し伸べる。眠夢ちゃんがマリス様の元へ歩み寄って行くのを横目にあたしは一礼をしてから部屋を後にし、キョーコもそれに続いた。

お読みいただきありがとうございました。

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