ep14-4 優雅にして華麗、生徒会長『白井優華』
突如割り込んできた第三者の声に、全員の視線がそちらへと向けられる。
そこには、一人の女の子が立っていた。腰まで伸ばしたまっすぐな黒髪、切れ長だが決して冷たい印象を与えない優し気な光を宿す瞳、こちら側では一番高身長のあたしよりも背が高く、2、3歳は年上の高校生に見えた。しかし、もちろん高校生がこんなところにいるわけがない、事実、彼女はあたしたちと同じ制服を身に纏っている。そして、あたしは――いや、あたしたちは――その子の名を知っていた。
<白井 優華>――我が阿久野女子中が誇る才女にして生徒会長、そして白井財閥のご令嬢。
その美貌と聡明さは校内に留まらず、他校にまで知れ渡っているというまさに完璧超人だ。
ただ、ここ最近ではちょっと別の理由でも有名ではあるのだけど……。
「何か用?」と灯が問いかけると、彼女は、「ごめんなさいね。せっかくの楽しい時間を邪魔してしまって」と言いながらこちらへと歩み寄って来た。
何なのよもう、勘弁してほしいわ……。ただでさえ面倒くさい状況に陥っているというのに新たな登場人物だなんて……。
しかし流石というかなんというか、灯ときたら白井優華相手でも全く物怖じしていない、同じような完璧超人かつ生徒会の一員として彼女と面識があるはずの美幸ですら少し緊張気味だというのに。
そんなことを思いながらじろじろ見過ぎないように注意しつつ白井優華の顔を見ていたあたしだったが、ふと、何か不思議な感覚を覚えた。
(ん……? あたし、この子と会ったこと、ある……?)
同じ学年で顔や名前は知ってても彼女とはクラスが違うし、陰キャぼっち、成績も大して良くないあたしとは別世界の住人である。話したことはおろか半径50メートル以内で接したことすらないはずなのに、なぜかあたしはそう感じた。こう間近で対面したことがあるような、そんな奇妙な感覚を覚えたのだ。
(何かしら、これは……? まあ、どっちにしろ話を聞いてればわかるか……)
とりあえずこの子の相手はコミュ力の高い灯や美幸に任せておけばいいだろう、あたしはとりあえず空気の様に気配を消して成り行きを見守ることにする。
とと、キョーコが余計なことを言わないようにちゃんと監視しとかないとね。チラリと彼女へと視線をやるが幸いキョーコも白井優華には興味がないのか、傍観者を決め込むつもりか、大人しくしているようだ。
「盗み聞きするつもりはなかったんだけど、話が聞こえてしまって。あなたたち、アントリューズの話をしていたわね?」
ぎくぎくっとあたしは思わず身を震わせる。いや、落ち着きなさいよ、普通の話をしてただけでしょ。あたしは組織のメンバーとしての話なんてしてないんだから……!
「してたけど、それがどうかしたの?」
勝手に動揺しているあたしを他所に灯が少し訝しげな表情で問い返す。
「実は私、奴らについて調べているの。それで、アントリューズの話が聞こえたものだからつい声をかけてしまったのよ。ねぇ、もしもあいつらについて何か知っているのなら、私に教えてくれないかしら?」
そう言って微笑みかける彼女に灯と美幸は顔を見合わせる。
「いや、ごめんなさい。別に大した話をしてたわけじゃないの。アントリューズについてもみんなが知ってるレベル程度のことしか知らないし」
美幸がそう返すと、優華は「そう……」と言って少し残念そうな表情を浮かべた、がすぐに表情を戻すと、「謝る必要はないのよ。こちらこそごめんなさい」と謝罪の言葉を口にした。
そんな彼女にキョーコがどこか剣呑な口調で、「アントリューズのことを調べてどうしようって言うんですかぁ?」と問いかける。
まずい! とあたしは思ったが優華はそれほど気にした様子はなく、「ちょっと、ね……」と言葉を濁す。
「ちょっとじゃわかりませんよぉ、なんでアントリューズのことを知りたいのか、教えてくださいよぉ」
さらに詰め寄るキョーコにあたしは思わず心の中で頭を抱えてしまう。こいつには危機感がないの!? あたしやあんたがアントリューズ関係者だってバレたら終わりなのよ!?
しかし、意外なことにここで美幸と灯がキョーコへの援護射撃を始める。
「あの、白井さん。もし何か事情があるなら、話してくれないかな? ああ、もちろんどうしても話したくないならいいんだけど、もしかしたらわたしたち、力になれるかもしれないから」
「そうね。美幸の言う通り、何かあれば協力するよ? アタシたちもアントリューズにはちょっと因縁があるしね」
キョーコに負けず劣らずぐいぐい行く二人にあたしは思わず感心してしまう。しかも、組織のことを調べようとしている相手に探りを入れるという意図があるキョーコとは違って二人は完全なる善意で言っているのだから。
「福原さん、それに結城さんもありがとう。それにええと……」
「二年のキョーコ――真殿響子ですぅ。ちなみにこっちは浦城梨乃センパイですぅ。恥ずかしがり屋さんですけど、いい人なんで、遠慮なんてする必要ないですよぉ」
え、えぇ? こっちに話振らないでほしいんですけどぉ!
「え、ええと、ま、まあ、あたしにしろ他の三人にしろ、別に聞いた話を言いふらしたりはしないし、安心してよ」
「そう……。わかったわ、それじゃあ話させてもらうわね……」
あたしが引きつった笑みを浮かべると優華は小さく頷きそう言った後、少し間を置いてからゆっくりと語り出した。
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