ep14-2 助けて! この空間に耐えられない!!
「ねぇ、梨乃、あなたが魔法少女アニメ好きって噂、あれ本当?」
否応なしに始まってしまった奇妙な昼食タイム、灯が唐突に発した言葉にあたしはブッと思わず吹き出してしまう。
完璧に自分の趣味なんかに関しては隠しきってる美幸とは違ってあたしはどうにもわきの甘いところがあるらしく、一部のクラスメイトの間ではあたしが魔法少女アニメ好きだ話がまことしやかに囁かれているらしい。
おそらく灯はそれをどこかで耳にしたのだろうけど、何故にいきなりこんな話を……?
「い、いきなり何……!? だ、誰から聞いたのよ、そんなの」
平静を装いそう返すものの内心あたしはかなり動揺していた。
「ん~。特に誰からってわけでもないんだけどね、ちょっと小耳に挟んだもんだから、さ。それよりどうなの? ホントのところはさ」
「あ、あたしは……別に……」
灯は興味深そうにあたしを見つめてくるが、その目を直視することが出来ず思わず目を逸らす。
「ん? 何? もしかして恥ずかしがってる? だったら別に気にすることなんかないよ。いいじゃない、魔法少女アニメ好きでもさ。アタシも好きだし、この美幸だって……」
「あ、灯ちゃん……!」
戸惑ったように灯の名を呼ぶ美幸。相変わらず演技が上手い……。『親しくもない相手に自分の秘密の趣味をバラされ困惑している美幸ちゃん』を見事に演じている。
「大丈夫だよ美幸、梨乃ならきっとあなたの趣味を馬鹿にしたりしないから」
灯は美幸に顔を向けて安心させるようにそう言うと再びあたしに向き直る。
「そうだよね、梨乃?」
「ま、まあ、ね……。ふ、福原さんが魔法少女アニメ好きだったっていうのには驚いたけど、それで馬鹿にしたりなんて……」
あたしはねぇ、あんたより先に美幸の趣味のことを知ってんのよ! 馬鹿にしたりするわけないじゃない!!
と心の中で毒づきながらも、あたしは灯の言葉に同意する。
「キョーコもぉ、別に馬鹿にしたりはしませんよぉ。他人の趣味なんてどーでもいい話ですしぃ」
美幸や灯のパーソナリティー的なことなんて本当にどうでもいいことなんだろう、キョーコがそう言い放つ。
「で、梨乃。もう一度聞くよ、あなたも魔法少女アニメ好きなんだよね?」
「す、好きよ……。悪い?」
あたしが渋々肯定すると、美幸がわざとらしく「へーそーなんだー。浦城さんも魔法少女アニメが好きなんだー。じゃあ、わたしや灯ちゃんと同じだねー」と嬉しそうに言う。
ああ、最悪だ。美幸は灯という新風が吹き込むことであたしと彼女という閉じた関係が崩れ正常化されることを望んでいる。あたしはその関係が維持されることこそを望んでいるのに……。
わかってるんだけどね、このままじゃいけない、開かれた関係を望んでる美幸が正しいんだって。だけど、あたしにはどうしてもそれが耐えられないのよ……。
今後、この灯とも付き合っていかなきゃいけないと思うと憂鬱な気分になる。
あたしは閉じた世界の中にいたい……。
誰からも邪魔されず、静かに眠っていたいと言っていた眠夢ちゃんの気持ちがようやくあたしにもわかった気がする。
クスッ……そんなあたしの様子を横目で眺めながら、キョーコが小さく笑うが、あたしはそれに気づくことはない、何しろ灯がこんなことを言い出したからだ。
「魔法少女アニメ好きってことはさ。とーぜん、リアル魔法少女であるカレッジとかブリスにも興味はあるよね?」
地獄の時間は、いよいよ佳境を迎えようとしていた――
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