ep14-1 うそっ!? 美幸と灯からのお誘い!?
「あはは、それでこの間なんてさー……」
「そうなんだ、それは大変だったね~」
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ!!
昼休み、いつものように誘いに現れた灯に連れられて教室を出て行った美幸をこっそりつけた先で繰り広げられる光景にあたしはいつものように歯ぎしりをしていた。
ここしばらくは眠夢ちゃんの特訓やらなんやらで忙しかったし、あたしの精神も安定気味だったけど、こんな光景を見せられて――誰、勝手に覗いてるあたしが悪いとか言ったのは!?――しまったら、またイライラが再燃してしまうのは無理もないことでしょ。
くそっそっくそっ、なんでそんなに楽しそうに笑ってんのよ! 美幸の隣はあたしだけのものなのに……!
「はぁ……」とため息を吐くあたしの耳にさらにあたしを憂鬱にさせる声が飛び込んでくる。
「スェンパァァァァイ!!」
ドドドドドドドド! と、地鳴りのような足音を響かせながらあたしに飛びついて来る影。
「うげっ」思わずそんな声を上げてしまうあたしだったが、そいつはお構いなしにあたしに抱き着き頬ずりをしてくる。
「もぉー! センパイったらぁ、いつも言ってるじゃないですかぁ。お昼は一緒に食べましょうってぇ、なのにセンパイってばぁ、すぐにどこかに行っちゃうんですもん」
「キョーコ、『バイト先』であたしにベタベタしてくることに関してはもはや諦めたから、せめて学校では勘弁してよ……。あたしは目立ちたくないんだから」
「嫌ですぅ! キョーコのセンパイへの愛はそんなんじゃ満たされないんですぅ!!」
そう言ってさらに強く抱きしめてくるキョーコにあたしは思わずため息を吐く。
「ははは、またやってるねあの二人。まあ仲が良さそうで何より――ん、美幸どうしたの? なんか怖い顔しているけど……」
「え、あ……ううん。なんでもないの」
あたしとキョーコのやり取りを見守っていた灯が美幸にそう尋ねると、彼女は慌てて笑顔を作る。しかし、その表情はどこかぎこちないように見えた。
「ただ、り――浦城さん、なんだか楽しそうだなって思って……。ほら、いつも一人でいて、なんだか近寄りがたい雰囲気だったから……」
「確かにそうだね。ってかさ、美幸って割とあの子の事気にしてるよね。アタシと初めて会った時もあの子と何か話してたしさ」
灯が何気なく口にした言葉に美幸がハッとした表情になる。
「あ、そ、それはえーと。クラス委員としては浦城さんが孤立気味なのが心配というか、うん。そんな感じ」
美幸は相変わらずあたしとの仲を他言しないという約束を守ってくれているようで、慌ててそう取り繕う。
「そっか、美幸は優しいね。だけど、それじゃダメだよ。気にかけてるだけじゃ何も変わらない、もっと積極的に行かなきゃ。てなわけで……」
灯はそう言うと立ち上がりキョーコに抱き着かれ身動きが取れないあたしの元へとやってくる。
「何の用ですかぁ。センパイとの愛の時間の邪魔はしないで欲しいんですけどぉ」
キョーコはそう言って灯を睨みつけるが灯は気にすることなくあたしに向かって言った。
「あなたが一人が好きなのは知ってる。そっちの子としてはあなたと二人きりの方がいいのかもしれない。けど、あえて誘わせてもらうよ、浦城さん。アタシたちと一緒にお昼食べない?」
美幸の瞳が大きく見開かれるのが灯の肩越しに見えた。
しかし、あたしの驚きはそんなものを遥かに上回るものだった。
「え、な……なんで……」
あたしは思わずそう呟くと灯はあたしに向かって笑顔で言った。
「なんでって、みんなで食べたほうが美味しいでしょ。それに、アタシは浦城さんのこともっと知りたいし」
「あ、あたしは――」
「そうしよう! 浦城さん! 灯ちゃんの言う通りだよ!」
あたしの言葉を遮り、美幸が灯の提案に乗っかる。
み、美幸ぃ~。あんたこれを機にあたしとの関係をバラすつもりじゃないでしょうね……。
確かに、陰キャぼっちのあたしと人気者の美幸が親しくするというのは色々と問題が生じる可能性があるからという理由から始まった美幸とあたしとの秘密の関係は、灯やキョーコの出現によりお互いを苦しめるだけのものへと変わってしまった。
それを正常化させるための方法として、まず灯を介した知り合いとして徐々に周囲に認知させていくという方法があるにはあるのだけど、美幸のこの反応はあたしとしては不本意極まりない。
なので灯や美幸から誘われあたしは思わず「うぐ……」と言葉に詰まってしまった。
あたしがこの手段を取りたくない理由はいくつかあるのだけど、一番大きなものとして根本的にあたしは灯が嫌いなのだ。
美幸と表立って仲良くするためだけになんでこいつとまで仲良くしなきゃいけないのか……。
しかし、美幸が乗り気な以上はあたしのわがままでそれを潰すわけにもいかない。
こんな時に限ってキョーコも「確かにみんなで食べたほうが美味しいかもですねぇ」などと言い出すし……。
この変態としてはこの場であたしと二人きりになれなくとも、後――アントリューズの活動――でいくらでも二人きりになれるから問題ないのだろう。
くそ、肝心な時に役に立たないんだから。
「ほらほら、こっち来て。真殿――あ、キョーコでいいよね? キョーコもいつまでも梨乃に抱き着いてないでさ」
なんなのよこいつ! あたしに対しては断りもなく名前呼びに変えてるし。これが陽キャって奴なの!? キョーコも「はぁい」とあたしの体から離れる。
あたしはため息を一つ吐くと、仕方なしに灯たちの横へと移動するのだった。
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