ep13-3 候補者みっけ! 烏の羽根舞う森の奥!!
探索を始めてから10分、あたしは早くも自分の提案を後悔していた。
その理由はただ一つ、ここは一人で探索するにはあまりにも怖すぎる場所だったのだ。
「だ、誰も……いないよね?」
あたしは思わずそう呟くがもちろん返事はない。
周囲は鬱蒼と生い茂る木々に囲まれており、その闇の深さはあたしの恐怖心をさらに煽った。
「幽霊信じてるわけでもないし、そんな怖がりでもなかったはずなんだけどなぁ……」
あたしは思わずため息を吐く。しかし、戻ってキョーコやらクリッターに泣きつくという選択肢などあたしにはない、というかそれはあたしのプライドが許さない。
「よし! こうなったら意地でも見つけ出してやるんだから!」
そんな決意を胸にあたしは再び歩き出す。
「カァ! カァ! カァ!」
森に響き渡る鳴き声にあたしは思わずビクッと身を震わせる。
顔を上げて周囲を見渡してみると、いつの間にか、木々の上には無数のカラスが止まっておりあたしを見下ろしていた。
「な、何よ……別に何もしてないでしょ……」
真っ黒な瞳に見下ろされ、あたしは思わず後ずさる。しかし……。
「カァ!」
カラスが一声鳴くと一斉に飛び立つ!
「ひやぁっ!?」
そんなあたしをあざ笑うかのように頭上で旋回するカラスたちの姿に恐怖心が最高潮に達したあたしはその場にへたり込んでしまう。
「警戒しなくていい……その人、敵じゃない……」
その時、あたしの背後からそんな言葉が聞こえてきた。
誰かに語り掛けるような口調だが、あたしに向けてのものではない、まるでそれはあたしの頭上を飛び回るカラスたちに向けてのもののように思えた。
バサバサバサッ! とその声に応えるようにカラスたちが再び木の上に戻っていく。
呆然とその様子を眺めるあたしだったが、ハッと我に返ると、慌てて背後を振り向く。
「あ……」
そこに立っていたのは一人の女の子だった……。
年の頃は12、3歳。ところどころ跳ねた短い黒髪の美少女である。
どことなく気だるげな雰囲気を漂わせており、その瞳は眠そうに半分閉じている。
服装は黒い長袖のシャツに、同じく黒い短めのスカート、これまた黒いハイソックスに、黒いローファーという全身黒ずくめのコーディネートだ。
「あ、あの……」
問い掛けようとしたあたしを遮るように、少女は口を大きく開きふわぁぁと大きなあくびをした。
「ねむい……」
「は、はぁ……」
思わず生返事をしてしまうあたし。少女はそんなあたしに構わず言葉を続ける。
「ごめんなさい……この子たち、知らない人には警戒心が強いから……」
「そ、そうなの?」
このカラスたちってこの子のペットかなにかなのだろうか? いやでも……。
あたしは木々の上からこちらを見下ろしているカラスたちを見上げる。
「でも、この子たちはあたしに襲い掛かって来たんだけど……」
「……それは……あなたが敵かどうかを見極めようとしてただけ……」
あたしの疑問に少女は淡々とそう答えると、再びふわぁぁ~っとあくびをする。その気怠そうな様子はなんだかとても眠そうに見えて……。
「あ、あの……眠いの?」
「……うん」
思わずそう問いかけるあたしに少女はコクンと頷いた。
「いつも……眠いの……出来れば、一生寝ていたい……。でも、そういうわけにも……いかないから……」
「は、はぁ……」
あたしは思わずそう生返事する。いやだってさ、こんな鬱蒼とした森にいて眠たいとか言われたらどう返していいかなんてわかんないって!
そんなあたしに構わず少女は再び口を開くとこう続けたのだった。
「あなたは……なぜこんなところにいるの……? ここは、遊びで来るような場所じゃない……肝試しかなにかなら、やめといたほうがいい……」
「え、え~と……」
問い掛けられ、思わず言葉に窮してしまう。
暗黒魔女になってくれる子を探しに来ましたなんて言ったら、電波扱いされるか、下手したら病院送りにされてしまうだろう。
かと言って何か上手い言い訳も思いつかないし……っていや待て、肝試しか、それなら使えるかも……!
「じ、実は! 後輩がどーしてもって言うから肝試ししてたんだけど、ちょっと迷っちゃってね、あはは」
とりあえずあたしはキョーコに責任を被せる形でそう説明する。
「そう……なら、すぐに帰った方がいい……」
少女はそう言うと踵を返すが……。
「あ! あ、待ってよ!」
そんな少女をあたしは思わず呼び止めてしまうのだった。
「……なに?」と振り返る少女にあたしは慌ててこう続ける。
「あ、あなたこそいったい何者なの!? こんな森の中で何やってるの!?」
「別に何も……ただ好きなの、この場所が……ここの奥に昼寝にちょうどいい場所があって、そこで寝てただけ……」
「そ、そぉ……」
「他にないなら私は行くわ……さよ――」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「まだ……何か?」
慌てて呼び止めるあたしに少女が面倒臭そうに振り返る。
このまま帰してはいけない、そんな予感があたしの心を支配し、あたしは思わずこんなことを口走ってしまう。
「さっき言ったよね、あたし迷っちゃったって。森の出口まで、案内してくんない?」
「いいけど……」
「ありがとう、それじゃお願いね」
あっさりと了承してくれた少女。あたしが礼を言うと彼女はそのままゆっくりとした足取りで歩き出す。
「ついて来て……」
促されあたしは彼女の後に続く。
彼女の後ろを歩きながら、あたしはポケットの中からスマホを素早く取り出すと、クリッターに向けてメッセージを送った。
『候補者見つけたかも。集合場所まで誘導するからこの子に姿を見られないよう見極めて』
『了解クリ!』とすぐに返事が返ってくる。あたしはスマホをポケットにしまうと、前を歩く少女へと視線を向けた。
周囲ではあたしたちを監視するように、無数のカラスがこちらに目を向けていた……。
お読みいただきありがとうございました。
よろしければ、評価やブックマーク、感想お願いします。




