ep13-1 一人より二人がいいし、二人より三人がいいに決まってるけど……
『やったぁ! 勝ったーーー!!』
『やったね、イーグル!!』
『ありがとう、シャーク、パンサー! 今日の戦いに勝てたのはあなたたちのおかげだよ! あたし、改めて実感したの、やっぱり一人より二人がいい、二人より三人がいいって!』
『そうだね! 力も夢も勇気も、それだけ強くおっきくなるんだもんね!』
『よーし、それがわかったところで、みんなの結束を高めるためにも、カレー食べに行こ、カレー!!』
『もー、パンサーは本当にカレーが大好きなんだからぁ』
『『『あははははは』』』
今日も今日とてアントリューズのアジト、あたしは特訓の合間の息抜きとしてスマホで大好きな魔法少女アニメ『掴め太陽・プチピュア』を視聴していた。
「相変わらずですねぇ、センパイはぁ、そんなに面白いんですかぁ、それぇ?」
「面白いわよ! キョーコも観てみなさいよ、絶対ハマるから」
そんなあたしに呆れ顔のキョーコはため息を吐きながら首を振る。
「キョーコはぁ、そういうのキョーミないんですよぉ、どっちかと言えば、プチピュアの次にやってるやつとかの方がぁ、好きですしぃ」
キョーコの言葉にあたしは思わず「へぇ」と声を上げる。
「それって、仮面ファイターのこと? 意外ね、あんた特撮ヒーローが好きなの?」
あたしはそっちの方には全然興味はない、悪と戦うヒーローって点ではプチピュアと共通点はあるかもしれないけど、男の子向けだけあってあたしの好むキラキラ要素は極めて薄いし……。
出演してるイケメン俳優にはちょっと興味あるけど、そのためにわざわざ視聴しようとは思わない、まあ、プチピュアの次番組だから流れで観たりといった程度だ。
「だってぇ、仮面ファイターってぇ、朝ですけどぉ、たまーに怪人に一般人が無残に殺されたりするじゃないですかぁ? ああいうのキョーコ的にはポイント高いんですよぉ」
「あ、あんたねぇ……」
ああ……そうだ、こいつってこういう奴だったわ。要するにグロ要素がある作品が好きってことね。そりゃあプチピュアに興味ないわけだわ。
「でもぉ、さっきセンパイが見てたシーン、その中で一つだけぇ、共感できる部分があったんですよねぇ」
「あたしが見てたシーン? どこ?」
あたしが首を傾げると、キョーコはあたしのスマホに指を乗せ、動画のシークバーをある地点で止める。
『やっぱり一人より二人がいい、二人より三人がいいって!』
ピュアイーグルが仲間の大切さを実感して言ったセリフだけど、これがキョーコの共感できる部分?
「もしキョーコが一人で暗黒魔女として魔法少女たちと戦えって言われてたらぁ、絶対、途中で心が折れちゃうと思うんですぅ。でもぉ、センパイがいてくれたからぁ……キョーコも頑張れたっていうかぁ」
「あ……」
確かに言われてみればそうだ……。
あたしは最初一人であいつらと戦っていた、そのおかげで随分辛い思いもさせられた、だけど、キョーコが共に戦う仲間となってくれたおかげで、あたしはその辛さを分かち合うことができて……。
「確かに、あたしもこのセリフには共感するわ。一人は辛い、でも仲間がいれば頑張れる……か」
「でしょぉ? キョーコもセンパイのお陰でぇ、今まで以上にぃ、魔法少女をやっつけたいって気持ちになりましたぁ! だからこれからもよろしくお願いしますねぇ♡」
そう言って満面の笑みを浮かべるキョーコにあたしは思わず顔を赤くする。
しかし、視線を逸らしつつ、言う。
「ま、まあ、あたしもあんたのおかげで救われてる部分はあるし、これからも仲良くやって行きたいとは思うけどね……」
と、そこで言葉を切ると、キョーコに視線を戻し、自分とキョーコ、両者に言い聞かせるように言葉を続ける。
「ただこれだけは言っとくわ。あたしはあんたと友達以上にはなる気はないから! もちろん、キスも、それ以上のこともしないからね!」
「わかってますよぅ。安心してくださいぃ、この間みたいにセンパイを騙して既成事実を作ろうとかはもうしませんからぁ」
「……いやに物分かりがいいわね」
あまりにもあっさりキョーコが引き下がったことにあたしは思わず訝し気な表情を浮かべる。しかし、そんなあたしにキョーコはニタアッと笑みを浮かべてこう続けた。
「わかってますからぁ、センパイは必ず、それもごくごく近いうちにキョーコの想いに応えてくれるってぇ」
「は……?」
「断言しますぅ、センパイはぁ、キョーコに恋しかけてますぅ」
「な……!?」
そんなキョーコの言葉にあたしの頬がカッと熱くなる。
「ば、馬鹿言わないでよ! なんであたしがあんたに恋しなきゃいけないのよぉ!」
「うふふ、大丈夫、大丈夫ですよぉ、キョーコはちゃあんとわかってますからぁ」
「確かにあたしにはあんたを大切に思う気持ちはあるわよ? 可愛いと思ったりもするわよ? でも、それは仲間だし後輩だから……」
ふっと、キョーコは人差し指であたしの唇を塞ぐ。
「二度同じことを言わせないでくださいよぉ、キョーコはちゃんとわかってますぅ。だから、大丈夫です、センパイが真に目覚めてくれるまでキョーコはいつまでも待ってますからぁ♡」
「む、むかつく……」
キョーコの笑みにあたしはただ歯噛みするのだった。
キョーコはそんなあたしをニヤニヤしながら眺めていたのだが、唐突に「あっ!」と声を上げた。
「な、何よ、どうしたの?」
また変なことを言いださないかと戦々恐々とするあたしだったが、キョーコが口にしたのは意外な言葉だった……。
「ブリスたちに勝つためのいい方法を考えましたぁ、もう一人仲間を増やせばいいんですよぉ」
「仲間を……増やす?」
キョーコの言葉にあたしは思わず首を傾げる。
「そうですぅ、さっきのセリフにありましたねぇ、一人より二人がいい、二人より三人がいいってぇ、キョーコとセンパイはぁ、その前半部分を自分の体験として実感しましたぁ、なら後半部分、つまりぃ、三人いればもっといいってぇのも実感できると思うんですぅ」
「まあ、確かに……」
キョーコの言葉にあたしは頷く。仲間が増えればその分様々な方面で力を発揮できるだろう……それは間違いない。
「だけど、そんなの無理でしょ? 仲間増やしましょう、はい増えました、なんて簡単にいくわけがないでしょ?」
暗黒魔女になるにはそれなりに資質が必要だ、簡単に見つかるわけはないし、仮に見つかったとしてその人物が仲間になってくれるかどうかはまた別の問題だ。
アントリューズは崇高な目的を持った組織だけど、世間一般の基準では悪の秘密結社、そんな組織に入ってくれる人なんてそういるわけがない。
「もちろんその通りですよぉ。でもぉ、センパイはともかくとしてぇ、キョーコはアクアさんによって街でスカウトされた結果ここにいるわけですよねぇ。つまり、探せば他にもキョーコやセンパイみたいな人はいるってことですよねぇ? その人たちを仲間に引き入れればぁ、ブリスたちを倒すのも楽勝じゃないですかぁ?」
「まあ……それはそうだけど……」
「探しもせずに無理なんて決めつけるのはぁ、よくないですよぅ」
「む……確かに……」
キョーコの言葉にあたしは思わず口籠る。言われてみればその通りだ、あたしだってクリッターによって(あたしの場合は騙されてだけど)スカウトされた身なのだし、他にもいる可能性は十分にあるだろう。
「……ま、物は試し、か……」
呟きあたしは歩き出す、ダメで元々、とりあえず探しに出たという事実があればキョーコは満足するだろうし、もしも見つかるようなら儲けもの、くらいの気持ちで……。
「キョーコ、クリッター呼んで来て。あいつもいいた方がいいでしょ」
「うふふ、センパイもその気になっちゃいましたかぁ? いいですよぉ、キョーコが呼んで来てあげますぅ」
こうしてあたしたちは、まだ見ぬ三人目の暗黒魔女を探しに街へと繰り出すのだった。
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