ep11-1 ショック! 美幸と灯がライブデートに!?
日曜日、あたしはアントリューズのアジトビルのリラックスルームでソファーに腰掛けぼーっと中空を眺めていた。
「しかし前々から思ってたクリけど、梨乃は本当に浮き沈みが激しいクリね~。ここ最近精神が安定してたと思ったのにこの体たらくなんて、一体何があったんだクリ?」
「簡単ですよぉ。センパイ、美幸さんにフラれちゃったんですよぉ」
ピクッと横で交わされる邪悪生物と変態娘の会話に反応し、あたしはキッとそちらを睨む。
「ちょっと、勝手なこと言わないでくれる! あたしは美幸にフラれてなんかいないわよ!」
そうだ、あたしは美幸にフラれてなんかいない。ただ、たまの日曜日、久々に一緒にショッピングに行こうと誘ったら、「ごめんね、今日はいけないの、灯ちゃんと、『フュテュール』のライブに行くんだ~♪ だからまた今度ね」と断られてしまっただけだ。
『フュテュール』というのは最近人気が出てきたロックバンドで、灯はそれの大ファンであるらしい。
美幸は特にロックが好きというわけでもないはずだが、灯との友好を育むために、とライブに行くことにしたそうだ。
「確かに美幸はあたしからの誘いを蹴って灯と出掛けたわよ? でもそれは美幸があたしよりあの子を選んだとかではなく、単に先に約束してた灯を優先させたってだけでしょ。なのに、なんであたしがフラれたことになってんのよ」
「え~でもぉ……」とキョーコが不満げな声を上げるのを無視しあたしは続ける。
「それにね、美幸は『また今度』って言ったわ! つまりこれは次の約束を取り付けているのと同じことなの! あたしは美幸にフラれたわけでも、ましてや嫌われたわけでもないわ!」
「じゃあなんでそんなイラついてるクリ? フラれてないのなら、梨乃がイラつく必要なんてないクリ」
「それは……その……そう、美幸があのムカツク女と出掛けたってのが気に食わないのよ!」
あたしはあの結城灯が大っ嫌いだ! もともとあの手の陽キャとか言われる馬鹿タイプが嫌いなのに加え、あの女ときたらやたらと美幸と距離が近いのだ。
美幸も美幸だ、なんであんな女を親友なんて呼んでるんだか!
「つまり梨乃は嫉妬しているクリね?」とクリッターが言ってくる。
その言葉にあたしは思わずカチンときてしまった。
「はぁ? なんであたしが嫉妬なんかしなきゃいけないのよ!」
そう、あたしは嫉妬なんてしていない。断じて違う!
「でもぉ、センパイは美幸さんが灯さんと出掛けたって聞いてこんなにイライラしてるじゃないですかぁ? それってつまり、そういうことですよねぇ」
キョーコもニヤニヤしながら言ってくるのであたしは思わずムキになってしまう。
「ち・が・うっ!」
むしろあたしをイライラさせてんのはあんたらだろと声を大にして言いたいが、クリッターもキョーコもあたしの内心など知らずに(知っててわざとやってる可能性もあるが)さらに好き勝手な言葉を投げかける。
「じゃあいいじゃないクリか、美幸が誰とどこに出かけても。気にせずデーンと構えてればいいクリ」
「そうですよぉ、それにセンパイにはキョーコがいるじゃないですかぁ、美幸さんのことなんか忘れてぇ、キョーコと愛を育みましょうよぉ♡」
言いながらまたも体を摺り寄せてくるキョーコを手で押しのけつつ、あたしは叫び返す。
「だーだーだーっ! やめなさいっつーの! 何度も言うけどあたしはあんたと愛を育むつもりはないの!」
「なんでですかぁ? 美幸さんに気でも使ってるんですかぁ? センパァイ、諦めた方がいいですよぉ、所詮美幸さんとセンパイはぁ、最初から違う世界の人間だったんですよぉ、だからぁセンパイはキョーコと愛し合う方が幸せになれるんですよぉ」
「違う世界の人間って……そんな大げさな……」
いやまあ確かに美幸とあたしの立っている場所は異世界と形容しても差し支えがないほどに隔絶している。
片やクラスの人気者、片や陰キャぼっち、おまけにあたしは人知れず悪の組織に所属し暗黒魔女なんぞをやらされているのだ。
『魔法少女アニメオタク』その一点のみが、あたしと美幸のを繋ぐ細い細い糸。
改めて考えてみて、少し泣きたい気持ちになってくる。
「センパイもわかってるんでしょう? 自分と美幸さんがどれほど違う人間なのか。だから美幸さんの事は諦めてぇ、アントリューズの暗黒魔女仲間であるキョーコとの愛に生きた方がぁ、センパイはずぇーったいに幸せになれますよぉ?」
「……違う世界の人間だからって、友達やってちゃいけない理由なんか、ない、でしょ……」
吐き出すように言うあたしに、キョーコは、「頑固ですねぇ」と苦笑する。
「それに、改めてあんたの誤解を解いとくけど、美幸がいようがいなかろうが、あたしはあんたの愛を受け入れる気はまーったくないの! あたしはそっち系じゃないの!!」
「まぁだそんなこと言ってるんですかぁ? センパイは間違いなく素質有りますってばぁ、早く目覚めてキョーコとめくるめく世界へと旅立ちましょうよぉ♡」
「だから嫌だっつってんでしょ! そんな世界、行ってたまるか!」
あたしが叫ぶとキョーコは「もう、強情なんですからぁ」とため息を吐く。
しかし、すぐに顔を上げると、何かを決意したように静かな口調で言う。
「仕方ありませんねぇ、こうなったら、少々強引にでも……」
へ……? あたしが疑問の声を上げる間もなく、キョーコは素早く背後に回り込むと、両手でぐわしっとあたしの胸を鷲掴みにしてきた。
「ちょ、ちょっと! 何すんのよ!」
あたしは慌てて振り払おうとするが、キョーコはあたしの腰にしがみつき離そうとしない。
「ふふふ、センパイはやっぱり大きいですねぇ、まあだからこそマギーオプファーのセクスィーなコスチュームも着こなせてるわけですけどぉ」
「ちょっとあんた、冗談はよしなさい! あたしを怒らせたいの!?」
「冗談? そんなわけないじゃないですかぁ、キョーコはセンパイのこと本当に愛してますよ♡」
そう言うとキョーコはさらに強くあたしの胸を揉みしだき始める。
いやほんと何考えてんだこの変態は!? なんであたしがこんな奴にセクハラされなきゃなんないのよ!?
しかしそんなあたしの思考は、胸から伝わってくる甘い感覚によって次第に蕩けさせられてしまう。
「くぅ……あぅ……やめぇ……」
あたしは必死に抵抗するものの、キョーコの巧みな指使いに翻弄されてしまい力が入らない。
こいつぅ、なんてテクニックなの……これが本物って奴なのかしら……。
「ふふ、センパイったらもう顔が蕩けちゃってますよぉ? やっぱりキョーコの思った通りです♡ センパイは責められる方がお好みなんですねぇ」
「そ、そんなわけあるかぁ!」
とあたしは叫ぶが、その声がどこか弱々しかった。
「クリックリッ! 人間というのは面白いものクリ。言葉と体が一致しないクリ。梨乃は口では嫌がりながらも、体は正直みたいクリね」
「う……うるさい……」
クリッターの指摘にあたしは顔を赤くする。
そうなのだ、確かにあたしの身体は快楽を求めていた。
キョーコの指使いに翻弄されるたびにあたしの体の奥が熱くなり、もっとしてほしいという欲望が湧き上がってくる。
「ふふ♡ センパイはやっぱり素質あるんですよぉ、だからぁ、素直になっちゃえばいいんですってばぁ」
キョーコはさらにさらに強くあたしの胸を揉みしだく。徐々にその存在を主張し始めてきたポッチまで摘ままれ、あたしは思わず声を上げてしまう。
「ひゃうんっ!」
キョーコはさらに調子に乗ってきたようで、今度はあたしの首筋を舐め上げたり耳に息を吹きかけたりとやりたい放題だ。
その度にあたしの口からは艶っぽい声が漏れ出してしまう。
もうダメだ……あたしこのままじゃおかしくなっちゃう……。
浦城梨乃、貞操の危機である。しかし、キョーコの蛮行は中断されることになる、唐突に飛び込んできたこんな言葉によって……。
「なーにやってんだよ、メスガキども、色気づきやがって」
その声にあたしはハッと我に返る。そして慌ててキョーコを振りほどくと、声の主へと向き直った。
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