ep9-1 激闘開幕、もう友情パワーとか言わせない!
「そこまでよっ!」
突然聞こえてきた声にあたしはハッと我に返る。声のした方を見ると、そこには金と赤の二人の少女の姿!
「マジカルパワーで幸せ守る! 魔法少女マジカルブリス!!」
「マジカルパワーで勇気を灯す! 魔法少女マジカルカレッジ!」
二人の魔法少女が名乗りを上げる。ああ、ついに来たわね!
「出たわねぇ、ブリスにカレッジ!」
あたしは嬉々として叫ぶとビルの瓦礫の上からジャンプして地面へと降り立つ。
「暗黒魔女マギーオプファー! 見損なったよ! あなたは悪の組織の暗黒魔女だけど、必要以上の破壊行為はしないと信じていたのに!」
「あんたの狙いはあくまでもアタシたちだったはずでしょ!? こんなことをしなくてもアタシたちは逃げも隠れもしないよ!」
ブリスとカレッジがそう口々にあたしを非難してくる。しかしあたしはひょいと肩をすくめると言い返す。
「まあ、あたしも最初は乗り気じゃあなかったんだけどね。やってみたら思いのほか楽しくって……。ここ最近プライベートでストレスが溜まりに溜まってたせいかしらね? でも、これでも一般人に被害が出ないよう抑えてんのよ? あたしが本気でやってたらここら一帯は地獄絵図になってるわ」
「な、なんて奴なの……。ブリス、こいつ思ってたより危険な奴よ! 早くなんとかしないと!」
「わかってる、カレッジ。でも……どうすればいいの?」
ブリスとカレッジはあたしの返答にドン引きしているようだけど、あたしはそんな二人の反応が面白くて仕方がない。
今からこいつらと戦うと思うとゾクゾクしてくるわ♡
――あたしは気づいていなかった、間一髪のところであたしはこいつらに救われていたということに。
あのまま超高層ビルを壊していれば間違いなく一般人に多大な被害が出ていた。
負傷者だけで済めばいいだろう、しかし、最悪の場合は死者が出ていた可能性もある。
しかし、ブリスたちが現れたことであたしの破壊衝動の向かう先は彼女たちへと変わり、結果的にあたしは一般人に被害を出すことなく破壊活動を終えることができたのだ。
「あのぅ……」
その時である、あたしたちのやり取りの横でどこか所在なさげにしていたヴァーンズィンがおずおずと口を開いた。
「何よ、今いいとこなのに」
あたしは邪魔者を見る目で彼女を睨むと彼女はビクッとして縮こまる。しかしそれでもめげずに彼女は続けた。
「ヴァーンズィンはぁ、あの二人とは初顔合わせなんでぇ、ちゃーんと挨拶とかしたいんですけどぉ……」
「ああ、そうだったわね。まあ、じゃあ適当にどうぞ」
「はい、じゃあ……」
彼女はあたしの言葉に頷くとブリスたちの方に向き直る。そして……。
「あはぁ♡ お二人ともぉ初めましてぇ、暗黒魔女マギーヴァーンズィンですぅ。オプファーセンパイと一緒にあなたたちと戦うことになりましたんで、以後お見知りおきを~」
ペコリと頭を下げてニコッと笑うヴァーンズィンの挨拶に、ブリスとカレッジは驚愕の表情を浮かべる。
「う、うそ……新しい……敵? 二人目の……暗黒魔女!?」
「マギーヴァージン……なんてハレンチな名前なの……!」
ブリスに続いてカレッジの発した言葉にあたしは思わずガクッとずっこける。
そのネタまた繰り返すわけ!?
「ヴァージンじゃなくて、ヴァーンズィンですぅ! 初めて名前聞いた時のヴァーンズィンちゃんと同じ間違いしないでくださいよぅ!」
「あ、ご……ごめんなさい……」
ヴァーンズィンの抗議にカレッジは素直に頭を下げる。そんな彼女たちの様子がおかしくてあたしはついつい笑ってしまったが、それに気づいたカレッジがキッとあたしを睨みつけた。
「何笑ってんのさ!」
「そんなに睨んじゃって、おー怖い怖い。まあ、ともかくこれで二対二、もうあんたたちの好きにはさせないわよ?」
「ハッ、人間の友達が出来てよかったねぇぼっち魔女さん! だけど、アタシとブリスの友情パワーに勝てると思わないでよね!」
ビキビキッ! ぼっち魔女ですってぇ、人が気にしてることを……!!
それに友情パワーとか、いちいち仲の良さをアピールしてくれちゃってぇ、何なの? 見せつけてるつもりなの!? ああもうっ! ムカついてきた!! もう許さないんだから!
あんたたちの友情パワーなんてこのあたしが打ち砕いてやるわ……!!
ギリッと奥歯を噛みしめ何か言い返そうとするあたしだったが、
「違いますぅ!」
と何故かヴァーンズィンが口を挟んできた。
「友達じゃありませんよぉ、ヴァーンズィンとセンパイはぁ、もっともっともーっと深い関係なんですぅ! ねっ、センパイ♡」
「な……!?」
突然の言葉にあたしは思わず言葉を失う。一体全体何を言ってるんだこのバカは!? ああもうっ、こいつの言動にいちいち付き合っていると頭がおかしくなりそうだわ!
「そ、それって、もしかして……」
ブリスが頬を赤らめて言う。
「ち、違うわよ! そんなんじゃないわ!」
あたしは慌てて否定したがブリスは聞く耳を持たないようだ。一方のカレッジも顔を赤くして俯いている……って、完全に誤解されとる~!!
「わ、わたしはあえて何も言わないわ。人の趣味はそれぞれだもん……」
「だから違うって! ヴァーンズィン! あんたねぇ、変なこと言うんじゃないわよ!」
カレッジに誤解されるのはまだいい、でもブリスに誤解されたままなのはなんか嫌だ! あたしはヴァーンズィンに向かって怒鳴るが彼女はまったく悪びれない様子で、あたしの腕に絡みつきながらこんなことを言いやがったのだ!
「えー? ヴァーンズィンとのあの熱い夜の事を忘れちゃったんですかぁ? センパァイ♡」
「「え゛……」」
ブリスとカレッジの二人が絶句する。
「そんな夜はなーい! 大体あんたとは会ったばかりでしょうが! 捏造するな! このボケ!!」
あたしは怒りに任せて叫ぶとげしげしとヴァーンズィンを蹴りつける。
しかしヴァーンズィンは悪びれる様子もなく、それどころか……。
「センパイのいけずぅ」
などとふざけたことをぬかしおる始末だ! ああもうっ!! ダメだこりゃ!
「な、なんかとんでもない子みたいね……」
「そ、そうだね……。流石オプファーの後輩……」
ピクッとブリスが発した言葉にあたしの耳が反応する。
おいこらちょと待て、ブリス……。あんたあたしのことをそう言う目で見てたわけ……!?
いや、まあ確かにあたしは変態コスチュームを身に纏った暗黒魔女よ? だけど、ヴァーンズィンと同類みたいに言われるのは心外だわ!
「と、とにかく……! いつまでもくだらない話をしてないで、とっとと戦いを始めるよ! ブリス、あなたはオプファーの相手をお願いね。アタシはあのヴァーンズィンっていう子の相手をするから」
「カレッジ、油断しないで? あの子さっきからお馬鹿っぽい言動ばっかりしてるけど、全く隙を見せない。多分かなりの強敵よ……」
「わかってるよ、ブリス。でも大丈夫、アタシたちならきっと勝てるはずだから」
「うん……!」
手を握り互いに言葉をかけあうブリスとカレッジの姿にあたしの中の嫉妬の炎がメラメラと燃え盛る。
重なる……あたしを放置して仲良くしてる美幸と灯の姿が……!
しかし、なんとかあたしは激情を抑え込み二人を睨みつける。二人は小さく頷き合うとそれぞれあたしとヴァーンズィンの前へと進み出る。
「ヴァーンズィンはぁ、どっちかと言えば、ブリスと戦いたかったんですけどぉ、まあいいか。カレッジで我慢してやりますよぉ」
自分の前に立つカレッジに向けて、ヴァーンズィンがどこか馬鹿にしたように言う。
しかし、それに対してカレッジは軽い口調で言い返す。
「言ってくれるね、言っとくけどアタシは強いよ? ブリスのためにも、あんたなんかに負けるわけにはいかないんだから!」
「そうですかぁ。でもぉ、ヴァーンズィンだって負けませんよぉ? 勝ってセンパイにご褒美貰うんですからねぇ♡」
そんな感じで早くも舌戦を繰り広げるカレッジとヴァーンズィン。
う、うーむ、これってもしヴァーンズィンが勝っちゃったらあたし彼女に何かあげなきゃならないんだろうか? 「ご褒美のチューを……」とか言われたらどうしよう?
まあ先の事を考えてても仕方がない、今は目の前のことを片付けないと……そう目の前の……。
「ブリス、モンスター抜きであんたと直接対決をするのは、初めて会った時以来ね? あの時は手も足も出せなかったけど、今日はそうはいかないわよ! 覚悟なさい!」
あたしとブリスは互いに睨み合う。ああ、久しぶりだわこの感覚……!
「わたしは負けない……! たとえあなたが強くなったとしても、悪のパワーに染まったあなたなんかには!」
あたしを睨みつけるブリスのその瞳は完全に正義の魔法少女としての使命感に燃えている。その姿こそあたしの夢、憧れ……。
もう戻れない、あの頃には……。だから、せめてこの子をあたしと同じ地獄に引きずり込んでやる!
「さあ、行くわよ!」
そして、ついにあたしたちの戦いの火蓋が切られたのである……!
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