ep8-3 誕生、暗黒魔女マギーヴァーンズィン!!
「ダアァァァァァァァァクエナズィィィィィィィ・トラアァァァァァァァァンス、フォォォォォォォォォォォムッ!!」
普通に唱えればいいだけなのに、キョーコはやたらと気合の入った声と大仰なポーズでそう叫ぶ。
それに応えるようにダークトランサーがキラリと輝きキョーコの体を黒い光が包み込む。
「あああんっ♡ きゃうん♡ す、すごい、凄いですぅ……♡」
他人の変身シーンを目の前で見るのは初めてだけど、やはり改めてこの変身シーンは最低最悪だ。
黒い光の中でキョーコは全裸になりそれを暗黒魔女のコスチュームが包んでいくのだけど、その過程でコスチュームが彼女の体を愛撫する。
もちろん外からではシルエットしか見えない、しかし、経験者であるあたしには中で何がどうなっているのかが手に取るように分かる。
「ああん、センパイぃ……キョーコのおっぱいの先っぽとぉ、アソコのところが気持ちよくてぇ……♡」
暗黒魔女の衣装は胸や股間といった性感帯を刺激して彼女を快感で悶えさせるのだ。
「う~む、梨乃もなかなかだったけどキョーコもかなりいい反応クリね……」
そんな光景をクリッターは興味深げに眺めているけどあたしは正直言ってドン引きである。
「キョーコ、解説しなくていいから! 出来る限り我慢しなさい!」
「ああっ、でもぉ、シルエットとはいえセンパイに見られてると思うとぉ、キョーコ余計に感じちゃいますぅ♡」
ダメだこりゃ……。もう、何でもいいからさっさと変身終わらせてよ。
「うぅぅん、ああんっ♡ しゅごいぃ……これぇ、しゅごくいいですぅ♡」
あたしが呆れているとキョーコの変身が終わりを迎えたようだ。ダークトランサーから放たれる黒い光が消え去るとそこには暗黒魔女となったキョーコの姿があった。
黒光りするビキニスタイルというところはあたしと共通しているのだが、彼女のビキニはそこまで面積は小さくなく普通の水着といった感じである。
くそっ、微妙に不公平じゃない! あたしのは水着としてみたとしても明らかに面積小さ過ぎなのに……。
ちなみにだが、キョーコのスタイルは平均的と言ったところだ、あたしのようにナイスバディではないが、美幸やマジカルブリスのようなお子様体型ではないのでこういうコスチュームを着てもそれなりには様になっている。
それはともかく、彼女の変身後の最大の特徴とでもいうべきものは、頭頂部からぴょこんと生えたネコ科の動物のような耳と、お尻から生えた尻尾である。
あたしと違いマントは身に着けておらず、腕や脚を覆うのはもふもふとした毛に覆われた縞模様の手袋とブーツだ。
口元からはキラリと光る八重歯……いや、あれは牙か?
おそらく彼女のコスチュームのモチーフになっているのは虎だ、それはいいのだが……。
「ちょっと! これはどういう事よ、あたしと差があり過ぎない!? 確かに露出度は高いし悪といえば悪だけどなんか可愛らしいじゃない!」
そう、どう見ても、彼女の変身後の姿はあたしのそれよりも可愛らしかった、害虫がモチーフとかいう自分とのあまりのギャップにあたしは思わず叫んでしまう。
「選んだモチーフの差クリかね~? その人に一番似合うモチーフを選んだだけなんだクリけど」
「それじゃあ何? あたしは害虫ってこと? このクソ妖精!」
「喧嘩しないでくださいよぅ、キョーコはセンパイの暗黒魔女マギーオプファーとしての姿はニュースなんかで見たことありますけどぉ、とーっても素敵だと思いますぅ! キョーコ、センパイの暗黒魔女姿だぁいすきですよぉ」
「そ……そう?」
くっ、不覚……一瞬とはいえ大好きとか言われてときめいてしまった……。
「ともかく、これでキョーコも暗黒魔女クリ! とと、まだ名前を発表してなかったクリね、暗黒魔女として覚醒したキョーコに与えられた名は……ドルルルルルル」
と、クリッターは自分の口でドラムロールの真似事をする。
「ドルルル……デデン! 『マギーヴァーンズィン』クリ~!!」
「まぎーばーじん? そんな……確かにキョーコはヴァージンですけどぉ、それをそのまま名前にしちゃうなんてぇ、恥ずかしいですぅ、きゃっ」
「『ヴァージン』じゃなくて『ヴァーンズィン』クリ!」
なーんておバカ極まりないやり取りをする二人。
ヴァーンズィンねぇ、なんか意味があるのかしら? こいつの事だから適当に付けた名前かも知れないけど……。
ちなみにあたしのオプファーという名前、気になって一度調べたことがあるのだけど、軽く調べた限りヒットした単語は一つだけ。
『Opfer』ドイツ語で、『生け贄』とか『犠牲』とかそんな感じの意味……。なんで生け贄? 敵魔法少女をアントリューズの生け贄として捧ぐための魔女という事だろうか?
まあ、ドイツ語というあたしの認識が間違ってるのかもしんないし、聞いたところで「なーんも考えずにつけたクリ」的な回答が返ってくるのがオチだろうから聞かないけどさ。
あたしがそんなことを考えている間にもキョーコとクリッターの会話は続く。
「なーんだ、それならそうと言ってくださいよぉ、センパイの目の前でキョーコがヴァージンだということをカミングアウトしちゃったじゃないですかぁ、キョーコ恥ずかしい……。でもセンパイ、そんなわけでキョーコは処女ですから安心してくださいぃ、まだアクアさんともそう言うことはしてませんよぉ、というかセンパイを見た瞬間にキョーコ決めたんです、初めては……センパイにって……きゃ~言っちゃいましたぁ♡ キョーコってば大胆♡」
「さ、さいですか、それはよかったわねぇ……は、はは、はは……」
どう反応しろってのよ、これ……。
「というわけでセンパイ、さっそく寝室へと……」
「やめんかーーーーー!! さっきも言ったけどあたしにそっちのケはないの! あんたにいくら迫られても応じることはないのよ!」
さっと腕を伸ばし寝室へと連れ込もうとするキョーコの頭を思いっきり引っぱたきながらあたしは叫んだ。
「あいたっ、もう……冗談ですよぉ」
叩かれた頭をさすりながらキョーコは不満そうに頬を膨らませる。しかし、そんな仕草も様になっているあたりがなんかムカつく!
「まったく油断も隙もないわね……」
「イケズですねぇセンパイはぁ、でもいいです、いつか必ずキョーコはセンパイに処女を貰ってもらって、センパイの処女はキョーコが貰いますからぁ♡」
あたしはもはや言葉を発する気力すらなく頭を抱えるしかなかった。
この子、あまりにも押しが強すぎる。いつか流されそんな関係にさせられてしまいそうで怖いわ……。
お読みいただきありがとうございました。
よろしければ、評価やブックマーク、感想お願いします。




