【SS】島民Aの正体
新年なので4ヶ月ぶりに追記してみました。
***** 鬼達の乗った船が出航した直後の出来事です *****
「さて、鬼達の船が見えなくなったから、オレ達も出立しようか」
「へいっ!」
「はいっ」
「ハイ ワカリマシた」
「お願いします」
マサルもキギスも黒鬼もおタミさんも、皆明るい返事だ。
「島民A、舟を宜しく頼むよ」
「おまかせくだせぇまし」
島民Aは相変わらず怪しげな丁寧語だ。
「ところで大将、『トーミンエー』って何っすか?」
「私も気になってました」
「別に意味は無いけど……
そう言えば名前を聞いて無かったな。
島民A、お前何て名だ?」
「大将ってば、ひでぇ!」
マサルもキギスも呆れた顔で僕を見る。
「鬼神であらせられますモモタロウ様に名乗るほどの名前ではございませんので、全然気にならねえでございますよ。
申し遅れましたが、わたくしめはタロウと言います。
モモタロウ様と同じタロウですね。
周りの者からは『ウラシマんとこのタロさ』と呼ばれておりますです。はい」
「ウラシマ……タロウ?」
思わぬ展開に思考が止まる。
「はい、ウラシマんとこのタロウです。
トーミンエーでもウラシマんとこのタロさでもお好きな名前でお呼びくだせぇまし」
まてまてまてまて。
吉備津彦尊様、この世界に何て設定をぶっ込んでいやがるんですか!?
「と……、ウラシマ。
いいか、ウラシマよ。
よく聞いてくれ!
例え亀が子供にいじめられていても助けるんじゃないぞ。
例え亀を助けたとしてもその亀に乗っちゃあダメだからな!」
「大将ぉ~、何すかそれ?
大将ってば時たまおかしな事を言い出すんですよね。
なぁ、キギス」
「え……えぇ。
モモタロウ様、賢いのに抜けているところが時々あるような……。
でもそこが素敵なところでもあるので(ポッ)」
「いやいやいや、これは大事な事なんだ。
いいか、ウラシマタロウ!
例え竜宮に連れられても直ぐに戻ってこいよ。
例えお土産をくれると言われても絶対に断れよ。
例え玉手箱を貰っても決っして開けるんじゃないぞ。
いいか!いいな!いいよな!!」
「はぁ…、
モモタロウ様がそう仰るのならその通りにしますんで」
その後、島民Aがどうなったのかは誰も知らない。
完結してからも全話一気読みをしてくださる方がいらして、大変感謝しております。
同時に拙い文章構成を申し訳ないとずっと思っていましたので、全文見直し+章構成見直し+SS追加しました。
併せて連載中の『悪役令姫・かぐや姫』もよろしくお願いします。




