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不滅のアトラ  作者: 鉄すらぐ
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外を目指して

 価値観が過去のまま止まっていて、騎士団長スコット君に命を狙われているというレントライト。

 過去と現在の彼を知っていて、絶対にそんな真似をするはずがないと言い張る私。

 意見が食い違った時、互いの意見を押し付け続けるといがみ合いが発生することは往々にしてありえるが、我々は骸だらけの部屋を後にして通路を歩きながら、あくまで冷静に話し合いを重ねていた。


「そもそもスコット君が紙の媒体を介して無法者に暗殺を依頼するって所がまずありえないよ。デバイスや通信機が広く普及してる現代で、わざわざ身分を証明するアイテムを輩に持たせるかね?」


「…つまり貴殿はこう言いたいのか。何者かが騎士団長を騙り、俺に刺客を差し向けている…と」


「恐らくはね。あなたが生きていると都合が悪い、もしくはあなたに対して並々ならぬ恨みを抱いている人物…そして、騎士団長の印章を模倣出来るほど近しかった存在の仕業だと、私は踏んでるよ」


「…近し「かった」とは?何故過去形なんだ」


 彼女が把握していない約七年という歳月。治世としてはまだまだ短いが、この短期間でグローデン騎士団と帝国は見違えるほどの進化を遂げたのだ。


「まずおかしいのは印章についてだよ。あなたが覚えている印章のデザインは、あなたがまだ騎士団に居た頃に見たものでしょ?」


「ああ、そうだが」


「スコット君は新しく騎士団を立ち上げる際、紋章や印章などのデザインを一新してるんだよ」


「…なに?」


 グローデン騎士団と帝国について調べていた際に記憶した情報を元に、私はデバイスを操作し、該当する記事を検索した。

 『新生グローデン騎士団、ついに正式デザイン決定』という見出しの記事をタップして、紋章や印章などの新デザインと旧デザインの比較図が載ったページをレントライトに読ませた。

 画像にはデザインの模倣を防ぐため、あえて画質を落とし細部を見辛くしてサンプルという字を被せているが、剣に蛇が三匹絡みついたデザインから、剣に光が降り注ぐデザインに変更されたことが見て取れる。


「…確かに、俺が知っているのはこちらの古いデザインのものだ」


「ね。旧来品とはいえ、スコット君が騎士団長の印章なんて大層なものを流出させるなんて考えられないし、元騎士団員のあなたの目を騙せるほどの贋作を、そんじょそこらのならず者がイタズラに造れるとは思えないよね」


 不自然に音を吸収する無機質な壁に触れて、いつの間にか閉じていた前方の扉を開き、最初に降りてきた左手の階段とは真逆の方向に進んだ。そして扉は自動で閉じ、ロックがかかった。


「…次第に読めてきたぞ、貴殿の考えが。」


 レントライトはここまでに出た情報から、何か一つの答えに至ったらしい。

 確証は無いが、私も大体同じことを考えている気がした。


「騎士団長の印章を騎士団長に怪しまれずコピー出来る立場に居て、なおかつ俺の性格をよく理解し、デザインが一新されていると知らないのをいい事に騎士団長の印章を用いてわざわざ騎士団長に悪意が向くよう仕込む醜悪なやり口。…このような卑劣な手を使う者が黒幕、だと言いたいのだろう?」


 やはり彼女も私と同じ見解のようだ。

 私は歩きながら大きく頷いた。


「その通り。スコット君は帝国王政を打倒した後、王政に与していた団員を大勢粛清したんだけど…実は彼が謀反を起こした夜、密かに行方を眩ませた者が数人居たんだ。そのうちの一人が…」


「グローデン騎士団で戦術指南、及び団員の育成を総轄していた当時の()()()…ゼルガ・ベルティネス」


 ゼルガ・ベルティネス。

 前体制時の騎士団において実質ナンバーツーだった男だ。

 記述によるとゼルガは王政支持派の筆頭格として知られており、次期騎士団長最有力候補とまことしやかに囁かれていた。

 あのテルジア・セルと関係を持っていたとされ、スコット君が粛清した…筈だったんだけど、実はゼルガは謀反の前に影武者と入れ替わっていて、既述の通り本人は行方を眩ませているという。


「意識が王政派に傾くよう、偏った教育を新兵に押し付けていた傲慢な男だ。…我が家に伝わる「正義」に従い、一切思想を曲げなかった俺は、懲罰の場で何度も奴のお目にかかっていたよ」


「ゼルガはあなたのその実直な性格を利用して、スコット君にヘイトが行くよう仕向けてたんだね。…にしてもまざまざと見せつけるように印章入りの指令書を残すなんて、普通は少しくらい疑いそうなものだけど」


「俺にとって騎士団長は底無しの腑抜けで、物事に直接手を下さず臭いものに蓋をして済ませる割に詰めが甘い男、という認識だったのでな。…今となっては己の視野の狭さに辟易しかしないが」


「視野が狭いのはそのマスクのせいじゃないの?」


「フッ…それもあるだろうな」


 冗談も交えて和やかに通路を進んで行くと、左側の壁に魔力感応式のタッチパネルを発見。一度立ち止まった。

 パネルのすぐ側には経年劣化で薄れかけているが、古代語で『休憩室』と書かれている。

 ミアちゃんが攻略した遺跡の小部屋みたいなものかな。

 このまま先に進む前に一度立ち寄って、レントライトをしっかり休ませておくのもいいかもしれない。

 私も風魔法を使った反動で門が地味にズキズキしてるし。


「…どうした?」


 壁を見つめて立ち止まる私にレントライトが問いかけてきた。一見すると私が何も無い所を見つめているだけに思えたのだろう。

 …実は彼女が閉じ込められていた大部屋だけでなく、先程通ってきた通路にも内側から扉を開く機構が備わっていたのだが、レントライトは気付いていなかったらしい。

 所々に刻まれた古代語にも反応を示さずスルーするし…ひょっとして遺跡に対する理解度はあまり高くないのかな?


「いやさ、ここに休憩室があるみたいだから、一度しっかり体を休めた方がいいんじゃないかなって」


「…その部屋に魔物が出ない確証はあるのか?」


「調べてみないとわからないね。でもこの遺跡はまだ機構が生きてるから、中に魔物が居たり繁殖したりしていなければ安全性は高いと思うよ」


 遺跡の機構は主にヒトの魔力に反応して作動する仕組みになっており、魔物や動物などからの干渉は受け付けないとされている。

 発見から途方もない時間が経過し、周期を跨いで存在し続けたにも関わらず、神様でさえ起源と存在理由を把握出来ていない「遺跡」と「遺物」。

 いつかこのミステリーが解き明かされる日は来るのだろうか。

 などと考えつつ、私はタッチパネルに手をかざした。


「それじゃあ扉を開くよ。私は部屋の中を探るから、あなたは背後を警戒しておいて」


「御意」


 背後から魔物に襲われて部屋に閉じ込められないようレントライトに後方警戒を任せて、彼女が剣の柄を掴むのと同時に私はタッチパネルに触れた。

 この壁も他の扉と同様の挙動でパシュッと開き、部屋の中から何かが飛び出し…て来るわけでもなく。

 私達は少しの間動きを止めて、前方に出現した小規模空間内の気配を探った。

 …部屋の広さはそこそこといったところかな。目算で高さ三メートル、横七メートル、奥行き五メートル程度。

 内装は遺跡にしてはわりと俗っぽく、右側の壁には薄ピンクの横長ソファが置かれていて、扉すぐ横の左隅に清潔感のある大きめのベッドが設置されている。

 左の壁を頭側にしていたのだろうか。ソファと同じく薄ピンクの枕が二つ壁際に置いてある。

 ベッドの側面にはパーテーション代わりだろうか?私の身長より少し高いくらいの本棚二つがあった。まばらではあるが、幾つか書物が収められている。 

 本棚の奥は…流石にここからじゃ見通せないね。

 いつから存在するのか不明だが、経年劣化や魔物に荒らされている気配はない。

 念のため温度を可視化するスキルを発動して、私はレントライトに視線を送り、部屋の中に侵入した。

 まずベッドの下と本棚の裏を探ってみる。が、生体反応はない。

 その代わり本棚の裏には、木製の丸いダイニングテーブルと三つ等間隔に配置されたブラウンレザー座面のチェア、壁に添わせてある数点の食器が残ったままの食器棚。

 食器棚の向かって右側の壁から伸びている、先端が下向きに曲がったパイプ…恐らく蛇口かな。の真下からせり上がっているような四角い石の塊。中央がすり鉢状に窪んでいて、最低部に穴が空いているので、これは流し台に間違いない。

 更に流し台隣の壁には魔力感応式のパネルと、くっきりした文字で書かれた「調理メニューを選択して下さい」を意味する古代語が。

 このパネルと文字の配置には見覚えがある。ドレステミル地下都市の遺跡にもあった、メニュー選択をしてから壁内の機構に食料をブチ込むだけで、料理を作ってくれる機構に間違いない。

 つまりここは完全にヒトのために造られたフロアで、かつ魔物が侵入できない安地と断定してもいいだろう。

 後は奥の壁にも何かしら扉があるようだ…先に確認しておこう。


「…さて、ここには何があるのやら」


 魔物が存在したら面倒だから、私は光を斬り伏せる刃を抜いて刀身を顕現させた。

 そして十分に警戒して、壁の開閉装置に魔力を流した。

 もはや見飽きてきた動作で扉が開いて、奥に続く部屋が現れた…と思いきや、眼前にまたもや薄ピンク色の布が垂れ下がっていた。

 長方形の穴に、垂れ下がる布。こちらもよーく見覚えがあった。それはもう日常的にね。


「なるほど、目隠しの布か」


 部屋の外、つまりこちら側に奥の景色が見えないようにするための布。色は違えども私の自宅玄関にもぶら下げてたやつだ。

 目隠しの奥にも魔物の気配は感じられない。むしろ瑞々しいお花のような和やかな香りが漂ってきた。

 私は意を決して目隠しをめくり、奥の部屋に移動した。


「これは…」


 奥の部屋は更に小ぢんまりとしていた。

 広さは休憩室の四分の一程度。部屋のちょうど半分の位置、天井付近につっかえ棒がかかっていて、右壁際に防水カーテンが畳まれた状態で放置されている。

 つっかえ棒から向こう側、向かって左隅にはこれまた内側がくり抜かれた四角い石の塊と、右側の壁、今度は少し高い位置から伸びている口広の蛇口。

 半分からこちら側、休憩室側の壁には縦四列横三列のマス目状の棚が置いてあって、左下から二番目のマスにだけ木のカゴが置いてある。

 そして扉の出入り口、私の直下には薄ピンクの吸水マットが敷かれていた。

 もうここは疑いようがない。

 脱衣所とシャワーと浴槽、確実に浴室だ。


「…完全に誰かがここで生活していたみたいだね。それもそう遠くない昔に…」


「ソダム殿、内部の様子はどうだ?」


 つい癖で考察を始めようとした瞬間、警戒を続けているレントライトに呼びかけられて我に返った。

 元々彼女を休ませるために寄り道を提案したのに、私ときたら。

 部屋の安全性は確かめられたし、設備もおおかた把握できた。

 私は早々に浴室を出て駆け足でレントライトの元へ向かった。


「大丈夫、中は安全だよ。むしろゆっくり体を休めるための設備が充実し過ぎてて、驚くかもね」


「…それはそれでどうなんだ?何者かの罠という可能性も」


「や、たぶん罠とかじゃないよ。恐らくは()()()()()()()が継続して快適に遺跡を調査するために、家具を持ち込んだんだと思う」


 そして多分その考古学者は私の知り合いだ。

 遺跡の機構や古代語を理解していて、危険の多い遺跡周辺、もしくは遺跡内部に居住空間を設ける変わり者といえばそう多くないはず。

 休憩室の環境の整え方から見て、家具の持ち主はここに中長期間滞在していたはずだが、未だ攻略されていないという点は些か気にかかる。

 少し落ち着いたら、()()に連絡してみよう。


「ほら、とりあえず中に入って。奥にシャワールームがあるから、まずは汚れを落としてさっぱりしてきなよ」


「ほう…それは助かる。大広間の壁の亀裂に流れていた水の量だと、手を洗うのが関の山だったのでな」


 浴室の構造もドレステミルの遺跡と同じタイプだったから、シャワーの使い方と浴槽にお湯を張る方法を伝えて、彼女を浴室に案内した。

 ついでに閉じた扉を開く手段を教えてから、彼女が自発的に浴室の扉を締めた後、私はハーッとため息をついた。


「あー…初対面の人と話すの疲れたぁ…」


 なんとか彼女の気迫に負けじと気丈に振る舞ってはいたが、緊張の糸が切れると一気に疲労感が押し寄せた。

 疲れてるのはある程度出血したことも関係していると思う。

 彼女に連絡する前に一度腰を下ろしたい…。


「…あ、そういやタオルと着替え持ってきてないや」


 さっさと出口を見つけて脱出するつもりでいたし、何ならシャワー浴びる余裕があるなんて思ってもみなかった。

 嬉しい誤算ってやつだけど、嫁入り前の娘さんを全裸で放置させるのは気が引ける。

 私はよたりながらもソファに座ってデバイスを取り出し、よく連絡を取っている彼女の名前をタップした。

 それから数秒後。


『はいよォ、どしたんアーちゃん?』


 特異な考古学者、ミアちゃんがご機嫌な調子で通信に応じた。


「突然ごめんねミアちゃん。実は今、レモナス南東の砂漠にある遺跡に居るんだけどさ」


『ああ、半年くらい前にしばらく住んで調査してたあの遺跡かァ。もしかして閉じ込められたの?』


 やっぱり、ここはミアちゃんが誂えた部屋だったんだ。

 私は経緯をかいつまんで説明し、現在休憩室を借りていると伝えた。


『なるほどねェ…まぁ大したものは残してないけど、ソファ下の床に保管庫があって、そこに予備の服とかタオルとか、あと洗剤と保存食も残ってたはずだから、自由に使っていいよ。どうせもう立ち寄らないし、置いといてもダメになるだけだしさ』


 基本がめつい彼女がここまで太っ腹な発言をするなんて、なにか裏がありそうだ。


「で、今回の対価は何で支払えばいいかな?」


『今回分はいらないかな。アーちゃんには先日の借りがあるコトだしねェ』


「…私、ミアちゃんが得するようなこと何かしたっけ?」


 ミアちゃんとの取り引きでは対価となる古の情報を授けて、都度過不足のない範疇に収めていたはず。

 思い当たる節はないのだが…と頭を捻っていたら、ミアちゃんがデバイスの向こうでクスクス笑い出した。


『ほら、クレイオルデンでの出来事だよォ。アーちゃんが引き起こした大爆発のおかげで既に失われたと思ってた古代の遺跡管理機構、ディゾネイターを発見出来て、またまたアーちゃんから教えてもらった古代語のおかげで、ディゾネイターの再起動と使役プログラム実験まで行えたんだもん』


 …クレイオルデンでの出来事。私の記憶にはあまり残っていないが、それでも記憶に新しい事件だった。

 自覚している年齢と肉体年齢が乖離している原因、不滅の遺物に宿った意思…思い出してもあまり楽しい記憶とは言えない。

 でも、どうして私という存在が存在しているのか、この肉体に宿った意味とは何か…自分自身と向き合い、いつか真相に辿り着きたいと考えている。

 …もちろん、真相を知った先のこともね。

 ただあまりネガティブに捉えず、私はミアちゃんに「そっか」と短く返した。

 そしてややわざとらしく話題を逸らした。


「そういやミアちゃん、ディゾネイターを使役してどうするつもりだったの?まさか悪さに使ったりしてないよね」


 なんて煽ってみたものの、おおよその予想はついてる。

 彼女は自身や同行者のメポタに悪意を向けられると数倍の悪意を以てやり返すが、それ以外ではあまり邪気を見せたりはしない(多分)。

 特に遺跡に対しては敬意を欠かさず、この休憩室のように機構を有効活用こそすれ、絶対に破壊行為などは行わない。

 考古学者として歩む彼女の根底にあるのは、ラルハール君の教えなのだから。

 …やけに達観した目線で彼女を語ってしまったな。なんて少し恥ずかしがっていると、ミアちゃんが間を空けてから口を開いた。


『…んー、壊れた遺跡をディゾネイターに修繕させることは、悪さのうちに入るかなァ?』


 恐らく今の間は、彼女の視界内に居るディゾネイターの動向を確認していたのだろう。歴戦古代種ドレステミルデスワームことワイグが住み着いている遺跡の、ドーム型フロアでね。


「遺跡を維持管理することがディゾネイターの本分なら、使い方として間違ってないと思うよ。…もちろん、そのプラネタリウムを直す行為もね」


『アッハ、ボクのやるコトなんてお見通しってワケかァ。流石はアーちゃん』


 ふとデバイスから『ピコンッ』という音が小さく鳴り、ミアちゃんとの通信が途絶えた。

 それから数分後、彼女から動画付きメッセージが届いた。

 再生してみるとそこには、仄暗い遺跡内にて自撮り画角で映り込むミアちゃんと、背後で遺跡の壁に手を埋め込んで回路を伸ばすディゾネイターの姿が映し出されていた。


『アーちゃんや古代人が昔見てたっていう夜空に広がる光…「星」がどんなものなのか、メポタにも見せてあげたくてねェ。ちゃんと直ったら大々的に発表するから、そん時はまた解説よろしく〜』


 じゃ、バイバーイ。と無邪気に手を振って、動画は終了した。

 プラネタリウムの解説…映し出す空模様によって異なる天体や現象などの名称、俗説などを事細かに説明するハメになりそうだなぁ。これはまた大変な仕事、けれどもやり甲斐がありそうで今からワクワクしてきた。

 ミアちゃんから休憩室とアイテムの使用許可を得られたので、私は早速重い腰を上げてソファの下を覗き込んだ。

 するとそこには彼女が言っていた通り、床に保管庫らしき機構を発見。思ったよりも軽いソファの片側を持ち上げてずらし、保管庫が開けるくらいのスペースを確保した。

 そして床の回路に触れて魔力を流し、出現した一メートルくらいの正方形の穴を覗き込んだ。


「どれどれ…おっ、わりとたくさん入ってる」


 ミアちゃんはあまり物品を残していないと言っていたけれども、保管庫の中には大きめの白シャツが四枚、大判タオルが四枚、食器用洗剤二本、衣類用液体洗剤二本、全身用ソープ二本、パウチタイプの乾燥非常食(三食ワンセット×二十個)が出てきた。


「これだけあればしばらく籠城しておけるなぁ…消費期限も過ぎてないし、ありがたく使わせて頂こう」


 ひとまず私は着替えのシャツとタオルとソープを手にして、浴室の前に立った。

 扉を開くと目隠し越しにシャワーの水音がピチャピチャ響いてきた。聞こえているかわからないけれど、私は声を張ってレントライトに話しかけた。


「あのー、着替えとタオルと洗剤が見つかったから持ってきたよ」


「む、そうなのか。すまない、今行く」


 シャワー中でもこちらの声は拾えたようだ。ピタリとシャワーの音が止まり、足音が近付いて来る。

 そして目隠しがめくれ上がり…


「使い走りにさせたようで申し訳ないな」


 そこには目元の印象が強い、端正な顔立ちをした長い黒髪の女性が立っていた。

 聖騎士レントライト…真の意味で彼女と初めて顔を合わせた瞬間だった。


続く。

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