第91話 新年会=ソフィア&セリナの誕生日会 そして…
そうこうしている内に年が明け、昼から新年を祝う宴が王宮で催されたのだが…
「いやぁ~目出度い♪ まさかソフィア様とセリナ様の誕生日が同じ日、それも1月1日だったとは♪ 二重どころか三重の悦びじゃのぅ♪」
エドワードは喜んでワインを飲みつつ、テーブルに並べられた料理を平らげていく。
そんなエドワードの隣で、タチアナはワインに軽く口を付ける程度で周囲の様子を伺っていた。
そして…
「この様な目出度い席で言うべきか迷っていたのですが、敢えて聞きますわね?」
と、場の雰囲気を壊さない様、にこやかに言葉を紡ぐ。
「未だ魔王が現れる兆しは見えておりません… が、オリビアとアレックス騎士団長が中心となって、武器に魔力を纏わせての戦闘訓練をしているとか? それは順調ですの?」
タチアナからの質問に、オリビアは軽く頷いてからで首を振り、話し始める。
「元々魔力の多い兵士はそこそこ順調です。が、才能の多寡で、習得状況は大きく異なっています。逆に魔力の少ない、あるいは全く無い兵士は問題外ですね」
オリビアの話を聞き、エドワードは「フム…」と顎に手をやり考える。
そしてオリビアに聞く。
「まず、魔力の少ない… あるいは全く無い兵士は、〝対悪魔戦〟では戦力に成り得ないと言う事じゃな? では、魔力の多い兵士の習得状況が大きく異なっていると言うのは…?」
「才能… とでも言うのでしょうか…? 武器に魔力を纏わせる事だけでも、兵士1人1人に違いがあります。例えばシルビィ… シルビア・アレックス殿ですが…」
オリビアがシルビアの名を出すと、エドワードは身を乗り出して聞く。
「おぉ! 確か彼女はロベルト・アレックス騎士団長の長女であったな! 彼女の才はどうじゃ!? 剣の腕はかなりのモノじゃし、魔力も高いと聞いておる!」
すると、オリビアが口を開く前に、セリナが話し始める。
「てんでダメ… とまでは言いませんけど、魔力を剣に纏わせる事は出来ても、維持する事が出来てませんわね。維持出来ないから魔力を剣に流し続ける必要があるし、そんな事をしていては、すぐに魔力枯渇に陥りますわね…」
次いでオリビアが話す。
「セリナ様の仰る通りなんですよ… で、その様な兵士が魔力の多い兵士の約半数を占めています… 残りの半数も、シルビア殿より長く魔力を纏わせている時間が多少長い程度… 現時点で〝対悪魔戦〟で戦力と成り得るのは、10人に1人居るか居ないかと言った感じですね…」
セリナとオリビアの話を聞き、一同(あまり理解していないソフィア以外)は大きな溜め息を漏らす。
その様子を見ていたシンディは…
「アンナさん… なんだか、新年を祝う宴って雰囲気じゃありませんね…」
と、隣に居るアンナに小声で話し掛ける。
アンナは小さく頷きつつも、同じく小声で注意する。
「確かにシンディの言う通りだけど、この流れの発端は王妃様よ? 私達が疑問に思っても、口に出すのは御法度よ? それが事実だとしてもね?」
シンディはアンナと同じ様に小さく頷くが、ソフィアの方を見て呟く。
「はぁ… こんな時、良い意味でソフィア様が〝場の雰囲気を壊す発言〟をしてくだされば…」
そんなシンディの願いが通じたのか、ソフィアが会話に入り込む。
「なんだか難しい話ばかりで私にはイマイチ解らないんですけど、一つだけ解りました♪ 私とセリナさんの誕生日が今日… つまり同じ日で、私が9歳、セリナさんが14歳になったって事ですよね? セリナさん、おめでとうございます♪ それに私、セリナさんと誕生日が同じなんて、凄く嬉しいです♪」
そして、隣に座っていたセリナ(ちなみに、反対側にはオリビアが座っている)に思いっ切り抱き付いた。
「ちょっちょっちょっ! ソフィアさん! 抱き付くのはともかく、そんなに頬擦りしないで下さいまし! それにホラ! オリビアさんが凄い眼で私を睨み付けてるじゃありませんか!」
セリナが指摘した通り、彼女をオリビアが殺気を込めた眼で睨み付けていた。
しかし、ソフィアは気にする素振りも見せず、セリナに抱き付き頬をスリスリし続ける。
「だってぇ~♪ 大好きな人の誕生日が同じだったんですよぉ~♡ 嬉しくて嬉しくて堪らないんですよぉ~♡」
と、全く頬擦りを止める気配を見せないソフィアの向こう側で、オリビアは苦悩の表情を浮かべていた。
「くっ… 私の誕生日がソフィア様と同じ1月1日であったなら… 私もソフィア様に抱き付いて貰えたり、頬擦りして貰えたのに…! 今更ながら、自身の誕生日が2月3日だった事を恨んだ事は無いぞっ…!」
そんなオリビアの苦悩は誰にも理解されず、ソフィアの(場の空気を全く読まない一言)から〝魔王への対策会議〟になりかけた〝新年の宴〟は、通常の〝ソフィアとセリナの誕生日祝いを兼ねた祝宴〟に戻り、盛況のまま終わったのだった。
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「あの~… 王宮で私の誕生日を祝って貰ったんですけど、大聖堂でも祝ってくれるんですか…? なんだか申し訳無いですよぉ…」
と、忙しく動き回る司祭や司教、料理を用意する料理人達を見ながら、ソフィアは肩を落とす。
そんなソフィアを見て、オリビアがソッと彼女を抱き締めて語り掛ける。
「ソフィア様… 貴女が気にする事はありませんよ? 彼等はソフィア様の誕生日を祝う事を悦び、その上で準備に勤しんでいるのです。ソフィア様は彼等の悦びを受け止め、礼を述べてやって下さい。それだけで、彼等は報われるんですから」
ソフィアの頭に〝?マーク〟が飛び回っている事に、彼女を抱き締めているオリビアは全く気付いていなかったが…
ソフィアの隣に鎮座していたセリナ(ソフィアの誕生日祝いが大聖堂でも行われる事を知り、ちゃっかり参加)は勿論、ソフィアの様子が見れる位置に着座していたアンナやシンディには、ソフィアが困惑しているのが丸解りだった。
「えぇと、ソフィアさん…? 『報われる』と言うのは、努力や苦労に対して、それに見合った様な期待通りの成果や成功が得られる事ですのよ? ですので、貴女から彼等に対し、『ありがとう』とか『ご苦労様です』とか声を掛けてあげるだけでも、走り回ってる司祭や司教は嬉しいですわ? 勿論、宴の為の料理を作っている料理人達にもですわね?」
セリナから話を聞いたソフィアは、オリビアに抱き締められながらもセリナの方を向き…
「はぁ~… そうなんですね…? じゃあ私、料理人の人や司祭さんや司教さんに、お礼を言いに行きますね♪ それだけ私なんかの為に動き回らせるなんて申し訳無さ過ぎですし、お礼を言うのは勿論ですけど土下座ぐらいしても当然──」
「「「「土下座だけは止めて下さい!」」」」
と、オリビア&セリナは勿論、アンナ&シンディからも全力で止められたのだった。
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「ふぁあ~……… 王宮で食べた料理も美味しかったですけど、大聖堂の料理も凄く美味しいですぅ~♡ 普段の料理も美味しいんですけど、今日は何だか特別な感じがしますねぇ~♡」
ソフィアが言うと、料理長が歩み出て説明する。
「本日はソフィア様の誕生日との事ですので… 料理人一同、いつもより気合いを入れて作らせて頂きました。勿論、いつもが手を抜いているワケではありません。単に、いつもよりソフィア様の誕生日と言う事で──」
「それは理解している。貴殿達の〝ソフィア様に喜んで頂きたい〟と言う気持ちは、十二分にソフィア様に伝わっている事だろう。ソフィア様の為、これからも一層精進してくれ」
オリビアの言葉に、料理長は…
「はっ! これからもソフィア様に喜んで頂く為、研鑽して参ります!」
と、満面の笑顔と共に場を後にした。
が、その後はソフィアがセリナを誘って風呂を共に(勿論、オリビアは強引に割って入った)し、更にはベッドで共に寝たのだった。
当然、ソフィアとセリナが寝るベッドにオリビアは入る事は出来ず、ベッド横のソファーで一夜を明かした。
もっとも、早起きのセリナがベッドから出た後、ちゃっかりソフィアが目覚めるまでソフィアの隣に潜り込んでいたのだが…
当然、その行為はソフィアに拠ってバラされ(勿論、ソフィアに悪意は無い)、オリビアのレズ疑惑に拍車が掛かったのだった。




