第88話 ソフィアとセリナの〝対魔王対策〟と、セリナの護衛と側近
大聖堂の聖女邸に着いたセリナとジルは、ソフィアとマッカーシー大司教に面会を求める。
応接間に通され、待つ事しばし…
「お待たせ致しました。ソフィア様、マッカーシー大司教様、オリビア様がお越しです」
マッカーシー大司教とオリビアは応接間に入るとセリナに一礼し、ススッとソファーに座る。
ソフィアは…
「う~んにゅ… セリナさんに… ジルさんも…? どうされましたかぁ…?」
と、寝ぼけ眼でフラフラ歩き、アンナとシンディに支えられてソファーに座る。
「ソフィアさん、どうなさったんですの? 随分と疲れてるみたいですけど…?」
セリナが聞くと、ソフィアはヘラヘラ笑いながら答える。
「あぁ~… 勉強してたんですぅ… いつもの一般常識の勉強ですよぉ…」
「一般常識の勉強… ですの…? それにしては疲れ過ぎなのでは…? 目の下に隈が出来てますわよ…?」
セリナが言うと、やはりソフィアはヘラヘラ笑いながら答える。
「たいした事ぉ~、無いですよぉ… 私、3時間も寝れば充分ですからぁ~… まぁ、この2~3日は1時間ぐらいしか寝てなかった様な気がしないでもありませんけどぉ~…」
と、半分寝ながら言うソフィアにセリナは驚き、アンナとシンディにソフィアを寝かせる様に指示。
ソフィアが応接間から去ると、オリビアとマッカーシー大司教にジルとの会話の内容を聞いて貰う事にした。
勿論、魔王が復活する事を知っているマッカーシーは、黙って頷くだけだったが…
今の今まで過去の魔王が倒されていた、あるいは滅ぼされていたと思い込んでいたオリビアは、目を丸くして驚いていた。
「そうか… それで過去の魔王に関する文献には、ハッキリと〝魔王を倒した〟とか〝魔王を滅ぼした〟とは書かれていなかったんだな…」
マッカーシーは申し訳無さ気に頷き…
「民に余計な不安を与えない様にとの配慮… と言えば聞こえは良いのでしょうが、所詮は我々の自己満足だったのでしょうな… 言い訳になりますが…」
と、肩を落とす。
そんなマッカーシーを見て、オリビアは彼の隣に座って話し掛ける。
「マッカーシー大司教様、気に病まないで下さい。そもそも文献に曖昧な表現で書き連ねたのは先人達であって、貴方が書いたワケじゃないでしょう? つまり、貴方自身には何の責任も無いんです。それに、曖昧な表現とは言え、ジルが気付いた様に、よくよく読めば魔王が倒されていない事、滅ぼされていない事は解った筈でしょう。と言っても、私も解らなかった1人ですが…」
オリビアに言われ、マッカーシーは苦笑する。
「まぁ、そう言って頂けると救われますな… いずれにせよ、魔王を倒す… いえ、滅ぼさない限り、未来永劫魔王に悩まされる事になるのは明らかです。何としても我々の代で魔王を滅ぼし、平穏な未来を手に入れなければいけません。 …何年掛かるか判りませんが…」
マッカーシーの言葉に、オリビアは勿論、セリナとジルも大きく頷いたのだった。
────────────────
「現実問題として、私とソフィアさんが協力する事でしか魔王を滅ぼす事は不可能だと思いますわ? 勿論、魔王を追い払う… 一時的な平穏をもたらすだけなら、今までの聖女の様に魔王の魔力を削る事で、200年程度の平穏を手に入れる事は可能です。けれども…」
セリナが言うが、その先はマッカーシー大司教が請け負った。
「けれども、それは問題を先送りにしているに過ぎない… と言う事ですな。次代の聖女に魔王討伐を丸投げしてると言っても過言ではありますまい。更に言いますと、この様な状況が続くとなれば、未来永劫同じ様な状況が続くと言う事でもあります」
オリビアとセリナは黙って頷く。
マッカーシー大司教は続ける。
「しかし、奇跡的に歴代の聖女を遥かに上回る聖女であるソフィア様に加え、やはり歴代の聖女を上回る聖女であるセリナ様がいらっしゃる今… そう、今こそが魔王を滅ぼすチャンスでもあるのです! 歴代の聖女を上回る聖女が同じ時代に2人も現れた、この奇跡的な状況! 今度こそ魔王を滅ぼし、真の平和を築くべく──」
「落ち着いて下さい、マッカーシー大司教様… 確かにソフィア様、セリナ様と言う歴代の聖女を上回る能力を持った聖女が同時に存在するのは奇跡的と言っても良いでしょう… ですが、肝心の魔王は未だに姿を現していませんし、その兆候もありません。まだ我々が焦って動かなければならない状況ではないでしょう?」
逸るマッカーシーをオリビアが諫める。
マッカーシーも冷静になり…
「そ… そうでしたな。いや、私とした事が、魔王を倒せるかも知れないと、少々焦ってしまった様ですな…」
そんな会話が交わされているとは露知らず、ソフィアはベッドでスヤスヤと熟睡していたのだった。
────────────────
セリナはソフィアとオリビアから言われた事を守り、魔力を枯渇寸前まで使う事を3日間続け、丸1日を休息に充てた。
勿論、ただ何もせずにボーッと過ごすのはセリナの性に合わない。
なので、休息日には文献を読み漁り、魔王を完全に滅ぼす方法を探っていた。
ソフィアは魔王を滅ぼす手順に問題は無いか、自身の考えと文献とを比較検討する事に没頭…
するワケにも行かず、一般常識の勉強に1日、魔王を滅ぼす手順の研究(?)に1日を費やすと、幼いソフィアの頭はオーバーワークとなってしまうのだった。
結果的にソフィアは2日を勉強と研究、2日を休息に充てる事になった。
そして、2人の休日が重なる4日目は、ソフィアとセリナの安息日として、細やかな茶会を催す事が慣例化された。
基本的にはソフィアとセリナに加え、ソフィアの護衛であるオリビアと2人のメイド長であるアンナとジル、同じくソフィアの側近のシンディが参加する。
更に、それに加え…
「本日よりセリナ様の護衛を仰せつかりました、シルビア・アレックスと申します。気軽に〝シルビィ〟とお呼び下さい」
「同じく、本日よりセリナ様のメイド兼側近として仕えます、ミランダと申します」
と、新たに2人が加わる事になった。
挨拶を終えた2人がセリナの後ろに控えると、オリビアが声を掛ける。
「シルビア・アレックス… 確か貴殿はロベルト・アレックス騎士団長の長女だと記憶しているが、違ったかな?」
オリビアから声を掛けられたシルビアは、ピシッと姿勢を正して応える。
「はっ! オリビア様の仰る通り、私はロベルト・アレックス騎士団長の長女であります! セリナ様が自身の護衛を欲していらっしゃると聞き、立候補致しまして… この度、正式に任命して頂きました!」
「なるほど… で、ミランダと言ったか? 貴殿はどう言った経緯でセリナ様の側近に…?」
ジロリとミランダを睨むオリビア。
しかしミランダは平然と…
「私は特に希望したワケではありませんが… 普段から何事にも動じないと言いますか、淡々と仕事をこなす姿勢が評価されたと言いますか… 喜怒哀楽の激しいセリナ様に対し、何の感情も出さない私は都合が良いと判断されたのではないかと… まぁ、どうでも良い事ですけど…」
淡々と語るミランダに対し、オリビアは勿論、他の面々も唖然としていたのだった。
「ミランダさんって、仕事に対して真面目過ぎる程に真面目なんですねぇ♪」
と、無邪気に関心していたソフィアを除いて…




