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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第87話 ジルの持論

「セリナさん、さすがに無理し過ぎだと思います… あんまり無理すると、肝心(かんじん)な時に実力を(はっ)()出来なくなりますよ…?」


 ソフィアはセリナの体調を気にし、本気で心配して声を掛ける。

 しかし、セリナはフルフルと首を()り…


「もう少し… もう少しなんですのよ… もう少しでソフィアさんの言う『完全な形での聖光矢雨ホーリー・ライト・アローズ』を、2回発動させる事が出来そうですの…」


 セリナの言葉にソフィアは目を丸くする。

 確かにソフィアは十数日前、使う魔力を20(パーセント)も落とせば聖光矢雨ホーリー・ライト・アローズを2回(こう)使()可能だと言った。

 しかし、セリナは〝魔力を落とす=威力を落とす〟と考えた。

 そしてそれは、ソフィアが魔王を倒す(さい)の協力として、不充分だと考えていた。

 仮に充分だとしても、威力を落とした聖光矢雨ホーリー・ライト・アローズを2回発動させ、更に空間封鎖スペース・ブロッキードで魔王を拘束(こうそく)しても、魔力()かつで動けなくなってはソフィアの足を引っ張るかも知れない。

 そんな事になれば自身の存在がソフィアの足枷(あしかせ)になり、ソフィアなら倒せる(はず)の魔王を倒せないかも知れない。

 自身のプライドに掛けても、そんな事態に(おちい)る事は()けなければならない。

 その(おも)いが、周囲が無茶が過ぎると思わせる(ほど)の努力をセリナに()いていた。


「お気持ちは理解します… ですけど、こんな無茶を続けてたら、いつか身体(からだ)(こわ)しちゃいます! お願いですから休んで下さい!」


 ソフィアは必死に懇願(こんがん)するあまり、セリナを部屋の(すみ)まで(あと)退()らせてしまう。


「ちょっちょっちょっ! ちょっと! そんなに(せま)らないで下さいまし! さすがに(ちか)()ぎますわ!」


 (あわ)てるセリナの両肩をガシッと(つか)み、更に詰め寄るソフィア。


「いいえ! セリナさんが休むと言ってくれない限り、私は(せま)り続けます!」


 言ってソフィアは自身の顔を更にセリナに近付ける。


「だ~か~ら~! この状態だとオリビアさんの視線が(こわ)いんです! ホラ、見て下さいまし!」


 言ってセリナが指差す先には、無言で2人を見詰めるオリビアの姿があった。

 オリビアはソフィアの護衛剣士である為、ソフィアの出掛ける先には何処へでも──何がなんでも──付いて行く。

 今回も、セリナの過剰な魔法訓練を(いさ)めようと王宮の聖女邸に出掛けると言ったソフィアに付いて来ていた。

 そのオリビアが、ソフィアに(せま)られているセリナに(するど)い視線を飛ばしているのだ。


「あの~、オーリャさん…? なんでそんなに私達を(にら)んでるんですか…?」


「そそそそそ、そうですわ! ななななな、何故そんなに(さっ)()()った()(わたくし)(にら)み付けるんですの!?」


 ソフィアがオリビアに聞くと、ここぞとばかりにセリナもオリビアに──(おび)えながら──聞く。

 するとオリビアは…


「それは… ソフィア様に(せま)られているセリナ様が(うらや)ま… げふん、げふん! いえ、何でもありません…」


 と、(みずか)らレズ疑惑を助長する事を言いかけたのだった。

 そして…


「私の事はともかく、ソフィア様の(おっしゃ)る通りです。セリナ様は(こん)()め過ぎです。しばらく休養し、心身共に回復させた方が良いでしょう」


 (なか)ば誤魔化すかの様に、セリナに休養を(すす)めるのだった。





 ────────────────





「ソフィアさんとオリビアさんの(すす)めに(したが)って休養する事にしましたけど、この(あいだ)にも魔王は復活する為の準備… と言って()いのか(わか)りませんけど、とにかく復活に向けて何かしらしているんですわよね…?」


「それは… 私には()かりかねますが… 数年~十数年の(あいだ)()()()のは、過去の文献(ぶんけん)からも明らかですね…」


 セリナは休養する事には渋々(しぶしぶ)同意したのだが、何もしないでダラダラするのは(しょう)に合わないとして、メイド長のジルに話し相手になる様に要請。

 ジルも最近のセリナを見て、以前の様なセリナに対する刺々(とげとげ)しさは完全に()くなっていた。


「それにしてもセリナ様。ソフィア様が(おっしゃ)られていました様に、休養する事も大切ですよ? 確かに魔力や体力は回復ポーションを飲めば回復します。ですが、精神的な事… 心に()く回復ポーションは()りませんからね。仮に()るとすれば麻薬の(たぐ)いですが、それは()存性(ぞんせい)(ちゅう)毒性(どくせい)が有るので(すす)められませんね…」


「そうですわね… ところでジル? 先程(さきほど)貴女(あなた)は魔王の事を()()()と言いましたわよね?」


 セリナの話題変換にジルは…


「は… はい、確かに()()()と申しましたが…」


 と、セリナが何を言っているのか(わか)らず、首を(かし)げながら答える。


「まぁ、仕方無いと言えば仕方無いですわね… (わたくし)もマッカーシー大司教から聞いて、知ったばかりですし… 貴女(あなた)が知らなくても当然ですわね」


 ()(ちょう)気味(ぎみ)に話すセリナの姿を見て、ジルは(さっ)した様に(うなず)く。


「なるほど、理解しました… 文献(ぶんけん)に書かれている〝魔王が()()()〟と言うのは間違い… 実際は〝現れる〟ではなく〝復活する〟なんですね…? なんだか変だと思ってたんです。だって〝魔王を倒す〟と言う事は、すなわち〝魔王を殺す〟か、あるいは〝魔王を(ほろ)ぼす〟と言っても()(ごん)ではありませんよね? にも(かかわ)らず、一定期間が()つと魔王が現れる… これって、魔王を()()()()()()、あるいは()()()()()()()からこそですよね…? およそ200年と言う、そこそこ長い()()るとしても、(ほろ)ぼした(はず)の存在が一定期間を()て現れるのは不自然だと思っていたんです」


 ジルは自身が疑問に思っていた事をセリナに話す。

 セリナはジルの()(ろん)を聞き、()(ほど)と思ったのだった。


「確かにジルの言う通りですわね…? では、今まで誰も()()()に気付かなかったのは何故なんでしょう…? まぁ、(わたくし)も気付かなかった1人ですけど…」


 セリナ言うと、ジルが疑問に答える。


「私も気になって、魔王が倒された部分が()ってる文献(ぶんけん)を読んでみたんです… そしたら結構… と言うか、かなり曖昧(あいまい)な表現で書かれてる事に気付きまして…」


曖昧(あいまい)な表現… ですの…?」


 ジルの言葉にセリナは(まゆ)(しか)めて聞き返す。


「はい… セリナ様も様々な文献(ぶんけん)を読まれたと聞き(およ)んでおりますが、文献(ぶんけん)に書かれた表現に違和感を覚える事はありませんでしたか?」


 セリナはジルの指摘に、読んだ文献(ぶんけん)に書かれていた文言(もんごん)を記憶から呼び起こす。

 すると…


「確かに… 魔王を滅ぼしたとか、それに準ずる様な表現は全く見受(みう)けられませんでしたわね… 〝魔王を()退()()()()()成功した〟とか、魔王は姿()()()()()とか… ジルの言う通り、曖昧(あいまい)な表現でしたわね…」


 と、今まで気にした事は無かったが、改めて思い起こせばハッキリと魔王を滅ぼしたとは思えない表現ばかりだった事に気付いたのだった。


「だとすると、今まで歴代の聖女が相手にしていた魔王は、全て同じ魔王だったと言う事ですわね…? だとしたら、何故復活する(たび)に能力… と言うか、影響力が違ったのかしら…? 人類の存亡(そんぼう)(おびや)かす魔王も()れば、土地を荒らすだけの魔王も()たんですわよね? 不思議と言うか、不自然と言うか…」


 セリナの疑問に、ジルも考える。

 そして、ジルは(ひと)つの仮説に辿(たど)り着いた。


「これは()くまでも私の考えた仮説に過ぎませんが… 当時の聖女が魔王から(けず)り取った魔力量の差ではないかと…」


 ジルの()(ろん)に、セリナは首を(かし)げる。


「つまりですね?」


 首を(かし)げるセリナに、ジルは説明を続ける。


「仮に魔王の最大魔力量を100とします。そして、魔王が逃げてしまう魔力量を50とします。歴代の聖女が魔王の魔力を(けず)り、魔王が逃げるギリギリの50を(わず)かに下回る程度に魔力を(けず)った場合と、大幅に(けず)って魔力量を10程度にした場合とでは、同じ期間で復活した魔王の能力に違いが出るのも不思議ではありませんよね? まぁ、魔力が半分程度しか(けず)られなかった場合と、魔力が(ほとん)(けず)られた場合も、同じ程度の期間で復活する理由までは(わか)りませんが…」


 思い()けないジルの話に、セリナは目を丸くする。

 そして、ジルの()(ろん)をソフィアとマッカーシー大司教にも聞いて貰おうと、大聖堂の聖女邸へと出掛けたのだった。

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