第83話 魔王の倒し方とは…?
翌日、ソフィアの言った〝空間圧縮〟がどんな魔法なのかを見る為に、大聖堂の聖女邸で働く面々は修練場へと出掛ける。
また、大聖堂に勤める司祭や司教もゾロゾロと連なる。
更に、マッカーシー大司教から話を聞いたセリナは勿論、王宮からも国王や王妃を初めとした面々が修練場へと馬車を走らせた。
「な… 何だか凄い人出ですねぇ…? 皆さん、そんなに〝空間圧縮〟に興味があるんでしょうか…?」
「そりゃ、見た事も聞いた事もない魔法ですからねぇ… 皆が興味を持つのは仕方無い事かと…」
ソフィアが聞くと、オリビアは宙を仰ぎながら答える。
「それはそうと、防御魔法には何を展開すれば宜しいでしょうか? 空気を急激に圧縮すると発熱するとの事ですので、防熱魔法は勿論でしょうが…」
マッカーシー大司教が聞くと、ソフィアは少し考え…
「私自身、知識としては頭の中に在るんですけど… どれ程の威力があるかまでは判らないんですよねぇ… 大司教様が仰られる様に、防熱魔法は絶対に必要です。それと爆発が起こりますから、防御魔法を展開しつつ壁の向こう側で見学された方が良いと思いますね…」
言ってソフィアは修練場の内壁を指差す。
内壁には多くの窓──とは名ばかりの穴──が開いており、そこから修練場内の様子は見れる仕様になっている。
マッカーシー大司教は青褪め、汗をダラダラ流しながら聞く。
「それは、司祭や司教の防御魔法では防ぎ切れない程の爆発が起きると言う事でしょうか…?」
「それは… ハッキリとは言えませんけど、そうなる可能性は高いですね。今回の実験では、広さは修練場の内側いっぱい、高さは500mぐらいの空間を一気に圧縮してみようと思ってますが…」
2人の会話を聞いたオリビアは、全員を内壁の中に入る様に指示。
司祭達には全力での防御魔法を、司教達には全力での防熱魔法を展開させる。
「ソフィア様! こちらの準備はOKです! いつでも空間圧縮を発動して下さい!」
ソフィアはコクリと頷き、魔法を発動させる。
「空間圧縮っ!」
言ってソフィアが腕を振り上げると、修練場の内壁から人一人分のスペースを残し、空気の壁が上空へと伸びていく。
「な… 何だ、これは…?」
オリビアは窓から顔を出し、上空を眺める。
空気の壁は上空500mまで伸び、遠くから見ると細い円錐形を成していた。
次にソフィアは振り上げた腕を振り下ろす。
すると、空気の壁で成された円錐が、一気に地面まで縮み込む。
ソフィアは出入り口から修練場の内壁の中に飛び込み…
「全員、防御魔法と防熱魔法を全力で展開し、窓や出入り口の開口部から身体を出さないで下さい!」
ソフィアが叫び、全員が言われた通りに防御・防熱魔法を展開。
窓から離れた瞬間…
ちゅどぉおおおおおおおおんっ!!!!
凄まじい爆発が起こり、爆風と熱風が修練場内を荒れ狂う。
「「「「うわぁああああああっ!!!!」」」」
「「「「きゃぁああああああっ!!!!」」」」
司祭や司教達に加え、興味を持って見学に来たセリナ、アンナ、シンディ、ナンシー達メイド勢は勿論、オリビア、国王、王妃も凄まじい爆風と熱風に襲われる。
もっとも、司祭や司教達が全力で防御魔法と防熱魔法を展開していた為、怪我人は1人も居なかった。
ただ、窓や出入り口から侵入した爆風は、不規則な動きで内壁の中を吹き荒れ、多くの者を行動不能にしたのだった。
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「いやはや… 空間圧縮とは恐ろしい威力ですな… あれなら魔王とて、ひとたまりもありますまい…」
マッカーシー大司教が驚愕の表情を浮かべてソフィアに話し掛ける。
が、当のソフィアは…
「いえ… やっぱり最終的には聖核爆滅を使う事になりそうです。と言うか、何段階かに分けて魔法を使わないと魔王は倒せないでしょうね…」
と、眉をしかめる。
「何段階か、ですか…? それは、どの様な…?」
マッカーシー大司教が聞くと、ソフィアは目を閉じて考えながら話す。
「えぇと… まずは〝地面鉄化〟ですね… これを出来るだけ広範囲に展開して、魔王が地下に逃げる事を防ぎます。次に、魔王がその場から動けなくする魔法… 何かしらの拘束魔法を使う必要があります。地面に潜る事が出来ないと判れば、空に逃げるかも知れませんから…」
頷くマッカーシー大司教。
「それならば、司祭達や司教達に展開させましょう。勿論、私も展開します。拘束魔法なら〝捕獲壁〟を使えますからな」
魔法の名前を聞いたソフィアはフルフルと首を振る。
「〝捕獲壁〟では魔王を拘束するのは無理だと思います… 多分ですが、一瞬で拘束を破り、一気に上空へ逃げるでしょうね…」
確かにソフィアの言う通り、魔王の強力な魔力を考えれば、司祭や司教が何人…
いや、何十人何百人集まって拘束魔法を展開したとしても、脱出するのは容易な事だろう。
「ですので… 魔王を拘束する魔法は、セリナさんに任せたいと思います」
ソフィアの口から名前が出たセリナは、まさか自分が魔王を拘束する役目が回ってくるとは思ってもいなかったのか…
「わ… 私ですの!? てか私、そんな魔法知りませんわよ!?」
と、大慌て。
そんなセリナに構わず、ソフィアは話を続ける。
「セリナさんの魔力で、もう1段階上の拘束魔法… 〝空間封鎖〟を使えば、十数秒は魔王を行動不能にする事が出来る筈です。その魔法で魔王を逃げられなくしてる間に、私が聖光矢雨と空間圧縮で魔王を弱体化させ、止めに聖核爆滅を使えば、まず間違いなく魔王を倒せるでしょうね」
自信タップリに言うソフィアだったが…
「私、その〝すぺーす・ぶろっきーど〟なんて魔法、聞いた事もありませんわよ…?」
と、セリナは困惑しながら言うのだった。
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「け… 結構、魔力消費が激しいですわね… この空間封鎖って…」
「ん~… そうですねぇ… まぁ、聖光矢雨より使う魔力は少ないてすが、魔王を十数秒とは言え行動不能にするワケですからねぇ… それなりに消費する魔力は多いですよねぇ…」
セリナは息を切らしながらソフィアに聞く。
「ち… ちなみにですけど… 聖光矢雨に使う魔力と比べると、どの程度なんですの…?」
聞かれたソフィアは宙を仰ぎながら…
「だいたい半分って感じでしょうかねぇ…? ですけどセリナさん、少ない魔力で大きな効果を出す修練をしてましたよね? ですので、そのコツを上手く活かせれば、聖光矢雨の4分の1ぐらいの魔力で発動出来るかも知れませんよ?」
「ど… 努力してみますわ…」
更にソフィアはあっけらかんと…
「で、その状態で二重三重に空間封鎖を掛ければ、魔王を拘束する時間も2倍3倍に増えるのでは、と思います。そうして貰えれば、私も聖光矢雨、空間圧縮、聖核爆滅で、確実に魔王を攻撃する事が出来ます。この3つの攻撃魔法を連続で放てば、魔王を確実に倒せる筈ですね♪」
3つの強力な攻撃魔法を連続で放つと聞いた面々は、そんな事が可能なのかとソフィアに詰め寄ったのだが…
ソフィアの答えは意外なモノだった。




