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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第7話 ソフィアはソフィア

 ソフィアが聖女としての能力に目覚めるべく、輝き始めてから早くも5日が過ぎた。

 だが、その輝きは一向(いっこう)(おとろ)えておらず、むしろ強くなっている様にすら思えた。


「大司教様… どうなっているのですか? 確か、最長記録は3日と(おっしゃ)っていましたが…」


「は… はい… 確かに、そう申し上げました… 私に言えるのは… この少女の持つ聖女としての能力が、今までの記録を(はる)かに(りょう)()している可能性が高いとしか…」


 フランクが聞くと、大司教は考えながら答える。

 明らかに動揺(どうよう)している大司教を見て、フランクも動揺(どうよう)する。

 が、それと同時に安心してもいた。


(輝きを放ってる期間が長い(ほど)、聖女としての能力が高いと言う事なのか…? ならば、記録より長く輝いているソフィアは、前例に無いぐらい高位の聖女と言う事になるが…)


 考えるフランクの表情を見て、彼が何を思っているか理解した大司教がコクリと(うなず)く。


「私もバドルス侯爵殿と同じ事を考えておりました。(おそ)らくですが、この少女… ソフィアと言いましたかな? 歴代の聖女達を(はる)かに超える(ちから)を持つ、大聖女なのかも知れません…」


 大聖女と聞いて、フランクは思わず()(ぶる)いする。

 だが、その(ふる)えが大聖女に対する()()から来るモノなのか、()()から来るモノなのかまでは(わか)らなかった。





 ─────────────────





 更に10日が過ぎる頃、ようやくソフィアの身体(からだ)(はな)つ光が弱まってきた。


「そろそろ目覚める(ころ)かも知れませんな… (みな)さん、心の準備は(よろ)しいですか?」


 大司教が言うと、メイド達の寝室に集まった面々に緊張が走る。

 ソフィアの様子を見る為、大司教は毎日の様に侯爵邸を(おとず)れていた。

 何日が経過しても全く輝きが(おとろ)えないソフィアを見て、大司教は期待に胸を(ふく)らませていたが…

 侯爵邸の使用人達は、大聖女が誕生するかも知れない事態に期待すると共に、不安を感じていた。


メイド長(アンナさん)… ソフィアが聖女として目覚めた時、やっぱり私は()()()()()とか()()()と呼ばなくてはいけないんでしょうね…?」


「それは当然よね… 聖女様は、国王陛下より高位の存在とされてるんだから… ただ、気になるのはソフィアの反応かしら…?」


 アンナが言うと、使用人の全員が腕を組んで困惑(こんわく)の表情を浮かべるのだった。

 それは仕方のない事である。

 とにかくソフィアは気が小さい。

 自身が持ち上げられる事に対して、全く(めん)(えき)が無いのだ。

 そんな彼女が自身の名を()()()で呼ばれたり、()()()と呼ばれて困惑(こんわく)しないとは思えなかった。

 そんな事を考えている内にソフィアの身体(からだ)(はな)つ光は弱まっていき、やがて完全に無くなった。


「うぅん… んぇっ…?」


 目を覚ましたソフィアの目に、ひれ()す使用人達の姿があった。


「ななななな… なん()ですか、この()()()()()()は!?」


「まずは落ち着いて、私の話を聞いて下さい」


 ひれ伏していた大司教が顔を上げ、ソフィアに話し始める。


「まずは自己紹介させていただきます、ソフィア様。私の名はアラン・マッカーシー、大司教を(つと)めております」


「だだだだだ、大司教様ぁああああっ!? そそそそそ、そんな(かた)が、ななななな、何故っ!? 何故、私を様()けでぇえええええっ!?」


 予想通りのソフィアの反応に、使用人達は(しゃ)(こう)()()(ぐう)の様な表情で…


(((やっぱり、こんな反応か…)))


 と思っていた。


「落ち着いて下さい! 落ち着いて私の話を聞いて下さい!」


 マッカーシー大司教は取り乱すソフィアの肩を(おさ)える。

 更に後ろからシンディがソッと抱き()める。


「ソフィア… いえ、ソフィア様… 私… 精一杯、貴女(あなた)の世話役を(つと)めますね?」


「ししししし、シンディさんっ!? なんでシンディさんまで私を様()けでっ!?」


(あ~… やっぱり、こんな反応なのね…?)


 表情を引き()らせ、斜め上を見るシンディ。


「ソフィア… いや、ソフィア様。とりあえず落ち着いて話を聞いて下さいませんか?」


 フランクが手を胸に当て、(うやうや)しく頭を下げる。


「だだだだだ、旦那様っ!? ななななな、なんで私なんかに頭を下げられるんですかっ!?」


「…それは貴女(あなた)様が聖女様だからです。なので、私が貴女(あなた)様に頭を下げるのは当然の事でございます」


 自分が聖女だと聞かされ、更に動揺(どうよう)するソフィア。

 その様子を見た全員が…


(((これ… 落ち着かせるの、無理なんじゃね?)))


 と、思うのだった。





 ─────────────────





「さ… さすがに… もう… 飲めません… うぇっぷ…」


 落ち着く為とは言え、お茶を28杯も飲まされたソフィアは苦しそうにお(なか)(さす)っている。


「落ち着かれましたかな? それでは、私の話を聞いて下さいませ」


 落ち着いたと言うより、単に苦しいだけなのでは?

 と、フランクや家族、使用人達は思っていたが、口に出すと大司教の()()が無いと思い、(だま)っている事にした。


「まず、先程(さきほど)から申し上げています様に、貴女(あなた)様は聖女としての(ちから)に目覚められたのです」


 全く自覚の無いソフィアはキョトンとしている。


「聖女の能力に目覚めるべく、貴女(あなた)様の身体(からだ)は光を(はな)ち、輝き出しました。覚えておられますかな?」


 マッカーシー大司教の言葉に、ソフィアは(ちゅう)(あお)ぎ考える。

 ソフィアが覚えているのは、メイド達の寝室にシンディとアンナに連れて来られ、(ふる)え始めた時までだった。

 自身の身体(からだ)が光を(はな)った時点で、既に意識は無かった。

 ソフィアはプルプルと首を振り、(おび)えた表情で大司教を見つめた。


「何も(こわ)がる事はありません。聖女の(ちから)に目覚めた今、ソフィア様は無敵と言っても良い存在なのですから」


 事実、聖女の(ちから)は無限大と言っても()(ごん)ではなかった。

 およそ人間では考えられない身体能力と魔力を(ゆう)し、物理的な攻撃や魔法を使った攻撃を(なん)なく()ね返す。

 あらゆる魔法が使え、まさに全知全能で無敵の存在だった。


「信じられない様ですな? なら、こちらをご(らん)下さい。今の貴女(あなた)様ならば、簡単に理解できる(はず)です」


 言って、マッカーシー大司教が(ふところ)から一冊の小さな本を出す。

 その本を読み進めるソフィア。

 読み書きすら満足にできないソフィアには、本来なら内容を理解するどころか、読む事すら困難な(はず)の書物だった。

 が、その本に書かれている内容は全てソフィアが知っている内容で、それどころか間違った()(じゅつ)さえ()(てき)したのだった。

 聖女の(ちから)は、その知識レベルさえも大きく向上させていた。


「ど… どうなってるんでしょうか…? 私、読み書きは勉強し始めたばかりで、(ほとん)ど文字は読》めなかったはずなのに… 普通に読めるし、間違ってる(トコ)(わか)ります…」


「それが聖女の(ちから)なんですよ。身体(からだ)が光を(はな)ち、その光に包まれている(あいだ)に神が()()()(りょく)を与えて下さる… 我々の(あいだ)では、そう考えられています。(ぜん)()(ぜん)(のう)、無敵の存在。それが聖女… それが貴女(あなた)様なのです、ソフィア様」


 マッカーシー大司教は静かに(ほほ)()む。

 だが、ソフィアは自身が聖女である事を信じられなかった。


「か… 神様…? (ぜん)()(ぜん)(のう)…? 無敵…?」


 首を(かし)げるソフィア。


「ふむ… では、王都へ(まい)りましょう。王都には大聖堂が()り、聖女様はそこに住まう事が(かん)(れい)になっております。また、大聖堂には武力や魔力の練習ができる施設もございます。そこで魔法の(ひと)つでも(はな)てば…」


「い… 今すぐですか!? それは困りますっ!」


 (あわ)てて大司教の言葉を(さえぎ)るソフィア。

 本来なら無礼な行為だが、そんな事を考えてる余裕はソフィアには無かった。

 また、国王より高位の存在である聖女が大司教の言葉を(さえぎ)っても、誰一(だれひと)()として無礼とは思わなかった。


「困ると(おっしゃ)られますか。理由を(うかが)ってもよろしいですか?」


「…そもそも私は奴隷で、聖女様の雑用係として旦那様に買われた身です。その私が聖女様だとしても、旦那様から受けた恩も返さず、たった2日(ふつか)で旦那様から離れるなんて出来ません!」


 2日と聞いて、全員がキョトンとする。

 そんな中、ルイーズがポンッと手を(たた)き…


「あぁ、そう言う事… ソフィア様、貴女(あなた)様が侯爵邸(ここ)に来られ、意識を失うまでは確かに2日です。その(あと)、今日まで15日()っていますわ?」


 と、静かに(ほほ)()んだ。


「じゅっ… 15日ぃいいいいっ!?」


 ソフィアは絶叫し…


「ごごごごご、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! そんなに寝ていたなんて知らなくてっ! (ゆる)して下さいっ!」


 涙をダバダバ流しながら、全員に向かって全力で土下座した。

 その様子を見て、全員が…


(((聖女に目覚めてもソフィアはソフィアか…)))


 と、妙に納得したのだった。

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