表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/92

第73話 ソフィアの告白 ~前編~

 聖光矢雨ホーリー・ライト・アローズを習得する事は(あきら)めたセリナだったが、()わりに魔法の精度と威力を上げる事に集中し始めた。

 更に使える回数を増やす為、今までより少ない魔力で同様の破壊力を得る訓練を(みずか)らに()した。


火球(ファイヤー・ボール)! ……………ヒビしか(はい)らない……… まだまだですわね……… 半分の魔力で(くだ)くには、もっと爆発力を高めなくては…!」


 その様子を見ていたオリビアは、感心した様にマッカーシー大司教に話し掛ける。


(セント)クレア王国に来た時とは別人の様ですね。ソフィア様に(しょく)(はつ)されたって感じでしょうか?」


 マッカーシー大司教は、(ひたい)に汗を(にじ)ませながら訓練するセリナを(ほほ)()ましく思い、オリビアの意見に(うなず)きながら答える。


「使う魔法の威力はそのままに、使う魔力を減らす考えは間違っておりませんし、むしろ素晴らしい考えと言えましょう。ソフィア様に(しょく)(はつ)されたかどうかは判然(はんぜん)としませんが、そうであろうと無かろうと、(おご)りを捨てて(みずか)らを研鑽(けんさん)する事は素晴らしいと言えましょう」


 マッカーシー大司教の言葉に、それまでセリナに良い感情を(いだ)いていなかったメイド達も納得して(うなず)いていた。


「ところで… ソフィア様の姿が見えませんが、どうなされたのですかな?」


 キョロキョロと修練場内を見渡しながら大司教が聞くと、オリビアが疲れた表情で答える。


「ソフィア様は、アンナ殿から説教を…」


「説教ですと? それはまた何故…?」


 目を丸くするマッカーシー大司教に、オリビアは(あき)れた様に話し出す。


「ソフィア様が、しょっちゅう食堂のテーブルを()いたり食器を片付けたりしてアンナ殿から説教されているのはご(ぞん)()でしょう?」


 マッカーシー大司教は(うなず)く。


「今回、アンナ殿(彼女)の目を誤魔化そうとしたのかは(わか)りませんが、ソフィア様はトイレ掃除をしていたらしく…」


 マッカーシー大司教の目が、文字通り点になる。


「たまたま用を足しに行ったアンナ殿に見付かり…」


 そこまで言ったオリビアは、マッカーシー大司教と目を合わせると…

 2人同時に大きく()め息を()いたのだった。


「まぁ、ソフィアらしいっちゃ~ソフィアらしいんだけどね…」


 そんな2人を横目で見ながら、(あき)れた様に(つぶや)くナンシーだった。





 ────────────────





「また怒られてしまいました…」


 自室のベッドに()()し、しょんぼりと話すソフィア。


「だから、()めておいた方が()いって言ったじゃないですか…」


 ベッドの(そば)の椅子に(もた)れたシンディが、疲れ切った様子でソフィアに語り掛ける。

 彼女もまた、ソフィアのトイレ掃除を止め切れなかった事を(とが)められ、一緒に説教を食らっていた。


「アンナさんの説教って、長いんですよねぇ…」


「ですよねぇ…」


 すると、ナンシーとオリビアが部屋に入って来るなり(あき)れた様に言う。


「ソフィアが何度もアンナさんから怒られてるのに、同じ様な事を繰り返すからよ… 食器を片付ける、テーブルを()く、廊下を掃除する… まだ奴隷(アレ)だった頃の習慣(クセ)、治らないの…?」


「奴隷根性とでも言うんでしょうか? 染み付いてしまっているのは理解(わか)りますが… ソフィア様が奴隷の身分から解放されて、もう半年になります。こんな事を私が言うのは(はばか)られますが、そろそろ奴隷時代の事は忘れられてはと思うのですが…」


 2人に言われ、ソフィアは考える。


(奴隷だった頃の習慣(クセ)… 奴隷根性… 染み付いてる… う~ん、否定出来ませんねぇ… でも…)

「正直、(なん)とも言えません… 身体(からだ)が勝手に動くと言うか… テーブルを見ると()きたくなりますし、食後の食器を見ると片付けたくなりますし、廊下が少しでも汚れていると掃除したくなるんですよねぇ… 今日のトイレ掃除も、以前からやりたくて仕方無かったんです… 床とか結構、汚れてましたから…」


 ソフィアの言葉を聞き、オリビア、シンディ、ナンシーは顔を見合せ…


「これって… 奴隷根性云々(うんぬん)以前の問題じゃないか…?」


「ソフィア様、もしかしたら潔癖(けっぺき)(しょう)なのかも知れませんね…?」


「テーブルを()く、廊下やトイレを掃除するのはともかくとして、潔癖(けっぺき)(しょう)と食器の片付けは違うんじゃない? やっぱり奴隷時代の習慣が抜けてないのが一番の問題だと思うわよ?」


 ナンシーの意見に、オリビアとシンディは…


「「確かに…」」


 と、納得したのだった。

 と同時に、このままだとソフィアが奴隷の身分だった事が周囲にバレるかも知れないとの危機感を(いだ)いた。

 王宮のメイド達は、(もと)が平民なので悪感(あっかん)(じょう)(いだ)かないだろうが、貴族達や大臣達は、その限りではない。

 歴代の聖女を圧倒する能力を持ったソフィアに対してでも、(もと)が奴隷だったと知れば、平気で彼女を()()()()(あつか)わないとも限らないのである。

 また、ソフィアは自身の事に対して()(とん)(ちゃく)である。

 (ほう)っておけば、平気で自身が奴隷であった事を(しゃべ)ってしまいそうになる。

 天然と言っても良い(ほど)であった。

 そんな()(ねん)をシンディが()べると、ナンシーが(あき)れた様に言い(はな)つ。


「そんな事でソフィアを()(くだ)す連中なんて、所詮(しょせん)その程度って事でしょ? それこそ、自分自身を『人を表面上でしか見る事の出来ない(おろ)(もの)です』って宣言(せんげん)してる様なモンじゃない。(しん)に人を見る目があるなら、身分なんて表面上の肩書きなんか目もくれないわよ。少なくとも私はソフィアの中身… ソフィアの『他人(ひと)の為に()くそう』って思いや、()()()()()()()()に注目してるんだけどね」


 ナンシーの意見に、オリビアは大きく(うなず)く。


「確かに、ナンシーの言う通りだな。しかし、シンディの()(ねん)(もっと)もだ。ソフィア様が奴隷の身分であった事は、今後も秘密にしておくべきだろう」


 その場に居た全員がソフィアに注目し、(うなず)いた。

 ソフィア自身はキョトンとしていたが…


(奴隷だった事は絶対に言うなって事ですね… そう言えば、バドルス侯爵様にも言われましたっけ… すっかり忘れていました…)


 と、バドルス侯爵から『何を言っても構わないが、奴隷だった事()()は言わない様に』と言われていた事を思い出したのだった。





 ────────────────





「なんでそんな肝心(かんじん)な事を忘れてんのよ…」


 ソフィアがバドルス侯爵に言われていた事をナンシーに話した反応であった。


「毎日の勉強で忙しくて、うっかり忘れてました…」


 と、ソフィアは自身の勉強の為にと机に並べられた本を見ながら()め息()じりに言う。


「まぁ、これだけの勉強量だから、(ほか)の事を忘れるのも無理は無いかもだけど…………… って、これって全部一般常識の本!? 魔王に関する本とか魔法に関する本とか、何も無いじゃない!?」


 机に並べられた本のタイトルを見て、驚くナンシー。

 ソフィアは気恥(きは)ずかしそうに(ほお)()きつつ話し出す。


「あはは… 私、例の戦争が始まった時、まだ3歳だったんですよねぇ…」


「私は7歳だったわね… で? この一般常識の本と戦争に何の関係があるワケ?」


 ソフィアは続ける。


「私が住んでいた村は、ランドール王国との国境から近かったらしいんです…」


「らしいって… まぁ、3歳だったらその程度の認識よね…」


 ソフィアはコクリと(うなず)き、更に続ける。


「そんな場所だったからでしょうね… お父さんもお母さんも、私に(かま)うヒマなんて無かったんだと思います… それに、戦争が始まって少ししたら、(ウチ)に兵隊さんが来て…」


「もしかして、お父さんを連れてったとか…?」


 ソフィアは(うなず)き、話を続ける。


「すぐに生活は苦しくなったみたいです… 毎朝食べていた()()()()()()()は週に一度になりましたし、食事の量も減りました…」


「お父さんが兵隊に取られて、収入が減ったって事ね…?」


「はい… お母さんに聞いた話だと、お父さんは村の小さな工場で働いてたそうなんですが… お父さん以外にも多くの男の人が兵隊になったそうで、村には女の人と老人子供しか残らなかったそうです… 当然、工場は閉鎖… お父さんの兵隊としての給金は届けられたそうですが、工場で働いていた時の給金に比べると半分も無かったって、お母さんが言ってましたね…」


 ナンシーの表情が(くも)る。


「普通に働いて得る給金より、命の危険がある兵隊の給金の方が安いなんて… 終わってるわね…」


 ソフィアは小さく首を振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ