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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第68話 セリナの聖女デビュー戦 ~前編~

 食堂のドアが勢いよく開かれ、1人の兵士が入ってくる。


「ご歓談中、失礼します! 北のベルハルト王国との国境に()る森にて、多数の魔獣が確認されたとの事です! 近くには(セント)クレア王国のラファネル辺境伯領、ベルハルト王国のダルマス辺境伯領が()るのですが、どちらの(まち)にも魔獣が接近しており、臨戦態勢(りんせんたいせい)を整えているそうです! 聖女様の救援をお願い申し上げます!」


 真っ先に反応したのはオリビアだった。

 椅子を倒して立ち上がり、アンナに指示を出す。


「アンナ殿! すぐにハンターギルドと冒険者ギルドに連絡! ワイバーンとグリフォンの飼育員にもだ! …って、ソフィア様!?」


 振り返ったオリビアが見たのは、アンナに鼻と口を押さえられて窒息(ちっそく)・失神し、時折(ときおり)ビクンビクンと痙攣(けいれん)しているソフィアだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 ラファネル辺境伯領、ダルマス辺境伯領共に、防衛戦は()(れつ)を極めていた。

 どちらも(まち)の門は固く閉ざされ、魔獣の侵入を防ぐべく兵士達が必死の(ぎょう)(そう)で魔獣達と戦っている。

 そして、ここダルマス辺境伯領では…


「聖女様はまだか… このままじゃ、押し切られるぞ…」


 望楼(ぼうろう)──(もの)()(やぐら)──で指揮官を(つと)めるダルマス辺境伯が(つぶや)く。


「2時間程前に(セント)クレア王国の王都、クラニールへ使いがワイバーンで向かいました。早ければ、今頃こちらに向けて出発してる頃でしょうが… こちらへ向かう準備も必要でしたでしょうから… どれだけ急いだとしても、(あと)1時間は掛かるかと…」


 ダルマス辺境伯の隣で戦況を見ていた隊長格の男が答える。


「確か… 森の向こうに()る、(セント)クレア王国のラファネル辺境伯領にも魔獣が押し寄せているのだったな? ならば、こちらに聖女様が来られるのは、そちらが片付いてからと考えるべきか… 魔獣が(まち)へ侵入するのを(ふせ)ぐのは、厳しいかも知れんな…」


 (なか)(あきら)めた様に天を(あお)ぐダルマス辺境伯。

 すると、その目に(まばゆ)い光が(うつ)ったかと思いきや、(あま)()の光の矢が魔獣達に降り(そそ)いだ。


 光の雨に(じゅう)(りん)される魔獣達


 そうとしか表現の仕様がない様子に、ダルマス辺境伯も隊長格の男も()(ぜん)とするばかりだった。

 目を丸くし、魚の様に口をパクパクさせる彼等の前に、1人の少女が舞い降りる。


「ふぅ… 間に合いましたか? 怪我してる人は居ませんか?」


 その少女は(ひたい)の汗を(ぬぐ)いながら望楼(ぼうろう)に降り立つと、先程(さきほど)まで魔獣との死闘が繰り広げられていた戦場を見渡しながら(たず)ねる。


「あ… あぁ… どうやら間に合った様だな… ここから見る限りでは、もう魔獣は10匹ぐらいしか居ない様だ… それなりに怪我人は居るだろうが… ところで(きみ)は…?」


 同じく戦場を見渡しながら、ダルマス辺境伯が少女に聞く。


「あ、私は(セント)クレア王国から来ました、ソフィアと言います。この(まち)が魔獣に襲われてるって聞きまして…」

(セント)クレア王国のソフィア…? そ… それでは… 貴女(あなた)は… せ、聖女様!?」


 ダルマス辺境伯は、聖女の名がソフィアである事は知っていた。

 が、こんな(とし)()のいかない少女であるとは知らなかったので、驚きを通り越して(ほう)けていた。

 だが、いつまでも(ほう)けてはいられない。

 気を取り直して質問する。


「我が領地を救ってくれた事には感謝します。ですが、ラファネル辺境伯領はどうなっているのですか? あちらにも魔獣が押し寄せていると聞き(およ)んでおりますが…?」


「あぁ、そっちにはオーリャさんとセリナさんが… あ、オーリャさんってのはオリビア・フォン・マクレールって公爵令嬢の事で、私の護衛剣士なんです。オーリャって呼び捨ててくれって言われたんですけど… 私、人様を呼び捨てるのって苦手なんですよねぇ… って、そんな話は関係ありませんよね。で、セリナさんってのはグレッディ王国出身の聖女です。私以外にも聖女が居たなんて驚きですよねぇ♪」


 説明になっているのかいないのか、微妙なソフィアの話に困惑しながらも(うなず)くしかないダルマス辺境伯と隊長格の男だった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 時を(さかのぼ)る事、1時間前…

 オリビアは(あわ)ててアンナの手をソフィアから引き()がす。


「ア… アンナ殿! ソフィア様が(しろ)()()いてるじゃないか! ソフィア様、しっかり! 生きてますか!?」


 オリビアがソフィアの身体(からだ)()さぶると、ソフィアは何事も無かったかの様に目を覚ます。


「あれっ…? オーリャさん…? もう朝ですか…?」

「何を言ってるんですか、ソフィア様… 貴女(あなた)はアンナ殿に鼻と口を押さえられて窒息(ちっそく)、失神してたんですよ…」 


 言われてソフィアは考え…


「あぁ、そう言えば急に息が出来なくなって… 少し()()()()のは覚えてるんですけど… 気付いたらオーリャさんの顔が目の前にあったんですよねぇ」


 あっけらかんと答え、周囲を(あき)れさせた。

 そんな空気を変えたのは、伝令として駆け込んできた兵士の一言(ひとこと)だった。


「あの~… 救援の話なんですが…」

「そ、そうだった! アンナ殿! …って、あれっ?」


 オリビアが我に返り、(あわ)ててアンナに指示の続きを言おうとするが、彼女の姿は何処にも無かった。

 キョロキョロするオリビアに、メイド達全員がドアを指差し…


「「ダッシュで(食堂の)外に行きました」わよ」


 ナンシーとセリナがハモって答えた。


「アンナ殿、逃げたな…? まぁ()い… ソフィア様、セリナ様、私達もギルドへ向かいましょう。ラファネル辺境伯領とダルマス辺境伯領を救わねばなりません!」


「分かりましたわ! (わたくし)の聖女としてのデビュー戦ですわね? 魔獣なんて、軽く蹴散(けち)らしてご覧にいれますわ!」


 オリビアの(げき)(こた)えるセリナ。

 ソフィアは首を(かし)げ…


()()()()()()()って、何ですか…?」


 周囲を脱力させたのだった。





 ────────────────





 ギルドへと向かう馬車の中で事態の説明を受け、ついでに『辺境伯』の意味も教えて貰ったソフィア。

 少し考えてから、自身の意見を()べる。


「私がダルマス辺境伯領へ飛んで行きます。オーリャさんとセリナさんは、ラファネル辺境伯領へ向かって下さい。それが一番早く両方の(まち)を助ける方法だと思いますから」


 ソフィアの案に、オリビアが自身の意見を()べる。


「私はソフィア様の護衛剣士です。なのでソフィア様に同行します。ラファネル辺境伯領はセリナ様、(この)()兵、()(ゆう)兵に(まか)せても大丈夫かと」


 オリビアが言うと、ソフィアは…


「まぁ、()いですけど… ()()()()()()()()()()、オーリャさんはセリナさん達とラファネル辺境伯領を助けてあげて下さいね?」


 ソフィアの言葉の意味が(わか)らないまま、オリビアは(うなず)く。

 が、すぐにオリビアは理解する事になる。





 ソフィア達がギルドに到着すると、既に出発する準備は調(ととの)えられていた。

 ソフィアはアンナに自身がダルマス辺境伯領へ向かう事を伝えると、地図で場所を確認。

 ワイバーンやグリフォンに(ぶん)(じょう)したオリビア達と共に、ソフィア自身も空中浮遊(レビテーション)に高速飛行の魔法を併用(へいよう)し、北へと飛び出した。

 ここで、オリビアは先程のソフィアの言葉の意味を理解する事になった。

 一瞬にして、ソフィアの姿が見えなくなったのだ。

 自身の乗るワイバーンが全速力で飛ぶ様に(あやつ)るものの、全くソフィアに追い付けないでいた。


「は… 早過ぎる! こんな高速飛行、いつの間に習得したんだ…?」


「はぁ… ホント、ソフィアさんって何から何まで規格外ですわね… 『オリビアさん、(わたくし)達はソフィアさんの言う通り、ラファネル辺境伯領へ向かいますわよ!』」


 意外に平気でワイバーンを乗りこなしながら、オリビアに拡声魔法で話し掛けるセリナ。


『了解しました… ワイバーン隊、グリフォン隊、ダルマス辺境伯領はソフィア様に(まか)せ、我々はラファネル辺境伯領へ向かうぞ! 急げ!』


「「「「「はっ!」」」」」


 同じく拡声魔法で後続(こうぞく)に指示を出すオリビア。

 その後、前述の通りソフィアはダルマス辺境伯領を救ったのだが…

 その同時刻、ラファネル辺境伯領ではセリナやオリビア達が激闘を繰り広げていた。

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