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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第61話 実は息ピッタリのオリビアとナンシー?

「おはよぉ…」


「おはようございます… って、ナンシーさん、どうしたんですか?」


 目の下に(クマ)を作ったナンシーが食堂に入ってくるが、その足元(あしもと)覚束(おぼつか)ずフラフラしている。

 驚いたソフィアは、思わず手を止める。


「どうしたって… (ゆう)()の事、覚えてないの…?」


 ナンシーが(ちから)()く答えると、ソフィアは(ちゅう)(あお)いで考える。

 そして思い出す。


「あぁ… アンナさんとシンディさんに、連れて行かれたんでしたね? 確か、私の身代わりになるとか…」


「そうよ… ついさっきまでソフィア(あんた)の話し方とか歩き方、貴族を前にした時の()(ぐさ)に土下座まで… (さん)(ざん)練習させられたわよ…」


 話を聞いたソフィアは、苦笑しながら質問する。


「えぇと… 私、そんなに特殊(とくしゅ)な動きや言葉(づか)い、してましたっけ…?」


 自覚の無いソフィアに思わず()め息を()き、ナンシーは話し始める。


「はぁ… まぁ、誰でも自分の事は客観的に見れないもんね… まず歩き方だけど、スタスタ歩かず()()()()()()歩けって言われたわ… 話し方は、とにかく敬語を徹底する。貴族を前にしたらオドオド、ソワソワ。だけど見た目は()(わい)らしく見える様に、かつ、ワザとらしく見えない様に。()(そう)をしたり注意されたら、(そっ)(こう)で土下座して(あやま)りまくる… それをアンナさんとシンディから徹底的に叩き込まれたわよ… って、何してんの…?」


 ナンシーは、()()()()()()自分に向かって土下座するソフィアを()()ろしながら聞く。

 と同時に、これが2人の言っていた〝即行(そっこう)の土下座〟だと認識した。


「ごめんなさい! ごめんなさい! それって、徹夜して覚えたって事ですよね!? ナンシーさんが、私なんかの身代わりに(ばっ)(てき)されちゃったからですよね!? ごめんなさぁあああああいっ!」


 話には聞いていたものの、実際にソフィアの全力土下座を見た事の無かったナンシー。

 困惑(こんわく)し、思わず(なぐさ)めてしまう。

 と同時にオリビアがソフィアに対し、異常とも思える執着心…

 と言うか保護欲(?)を()き立てられる理由を理解した様に思えた。


「ソフィア… 私に土下座なんかしないでよ。今はともかく、私達は同じ奴隷仲間だったじゃない。もっと普通に(せっ)してよ」


「ナンシーさぁ~ん…」


 優しく語り掛けるナンシーを見上げるソフィア。

 その目からは、ダバダバ涙が流れていた。

 ()()を見たナンシーは、思わずソフィアの肩を(つか)む。


「ソフィア、教えて! どうしたらそんなに涙が流れるの!? あんたの身代わりを(つと)めるなら、すぐ涙をダバダバ流して泣ける様にしなきゃ!」


 言われてソフィアは困惑(こんわく)する。


「へっ…? 涙ですか…? そう言われましても、出そうと思って出してるワケじゃないんで…」


「それって、勝手に出てくるって事? だったら私には無理よ… あんたの身代わりって、(むずか)し過ぎじゃない…」


 すると、アンナとシンディが食堂に入ってくる。

 アンナはシャキッと、シンディは眠そうに目を(こす)りながら…


「あっ、アンナさん、シンディさん、おはようござい… ま… す…」


 ソフィアが挨拶(あいさつ)するが、2人は(あい)(さつ)を返さずジト目でソフィアを()()める。

 そして…


「ソフィア様… (うし)ろ手に(かく)した物は何ですか? もしやと思いますが、()()テーブルを()いていらっしゃったのではありませんか?」


「まぁ、ソフィア様ですからねぇ…」


 と、(あき)れた様に話す。

 するとナンシーは、ソフィアが背後に(かく)した物をサッと取り上げる。


「これって()(きん)よね? て~事は、私が来るまでテーブルを()いてたって事? 相変わらずねぇ…」


「あはは… もうクセになってますからねぇ…」


 (あき)れながら話すナンシーに、苦笑しながら返すソフィアだったが…


「ソフィア様… 少ぉ~し、お話… (よろ)しいですか…?」


「は… はぃい~…」


 以前、アンナはソフィアに言い負かされ、それ以来ソフィアがテーブルを()くのを(もく)(にん)していた。

 が、やはりテーブルを()くのは聖女のする事ではないと思い直し、()めさせる決心をしていた。

 そしてソフィアは朝食を食べる事も出来ず、昼食(どき)までアンナに説教されたのだった。





 ────────────────





「ふぁあ~… よく寝た~… ほんの数時間でも、寝るとスッキリするわね♪」


 朝食を()った(あと)、ナンシーは修練場で〝ソフィアの身代わり〟を(つと)めるべく、昼食までの時間を眠って過ごした。

 多少の眠気は残っているが、(わず)かでも睡眠が取れて回復した様だった。

 しかし、ソフィアを説教していたアンナは…


「…さぁ、そろそろ昼食に(いた)しましょう。午後からは修練場にて聖女セリナとの()()()()との事ですが、ソフィア様にはメイド服で向かって(いただ)きます。私は給仕の当番ですので、お先に食堂へ行かせて(いただ)きます。では」


 と、徹夜明けにも(かか)わらず、それを全く感じさせない動きで()っていった。


「アンナさん、元気ですねぇ… 徹夜明けだったんじゃありませんでしたか…?」


 アンナの説教で疲れ()てたソフィアが(かたわ)らに()るシンディに話し掛ける。


「まぁ、アンナさんは大人ですから… それに、旦那様… バドルス侯爵様の邸宅でも月に何回かは徹夜で仕事してましたから、慣れてるんでしょうねぇ…」


 と、今にも眠気で倒れそうになりながらも、ソフィアの質問に答えるのだった。





 ────────────────





 昼食を終えたソフィア達は、馬車に分乗して修練場へと向かう。

 ナンシーはオリビアと共に聖女専用馬車に乗り込むが、あまりに(ごう)(しゃ)(つく)りに思わず尻込みしてしまう。

 が、それはソフィアも同じだったので、(ぎょ)(しゃ)(いぶか)しがる事はなかった。

 馬車が走り始めると、オリビアはナンシーに小声で話し掛ける。


「ナンシー、なかなかソフィア様に似てるじゃないか。アンナ殿に(ほどこ)して(もら)った化粧とウィッグのお陰でもあるんだろうが… それならソフィア様と面識のある貴族達も、パッと()で別人とは(わか)らないだろうな♪」


「そ… そうですか…? まぁ、それは()いんですけど… よくよく考えてみたら、私がソフィアの身代わりになる必要ってあるんですか? なんか、無意味な気がするんですけど…?」


 ナンシーの疑問も当然と言えた。

 そもそもの目的は、ソフィアに護衛が付いている事に対する聖女セリナの反応を見る事だった(はず)なのだ。

 それが、いつの間にか自分がソフィアの身代わりとなり、ソフィアに変装…

 だけでなく、ソフィアの()()(ふる)()いまで(いち)()()けで練習する()()になっていた。

 いや、正確にはマッカーシー大司教に(しょく)(はつ)されたオリビアが、身代わりにはナンシーが適任と提案した事なのだが…


「ナンシー、お前の言い分は(わか)る。実を言うと、私も無意味だと思っているんだ…」


「だったら…!」


 抗議しようと身を乗り出したナンシーを(せい)し、オリビアは話を続ける。


「ソフィア様の身代わり… と言うか、ソフィア様に()()わる人物としてナンシー(お前)(すい)(せん)したのは確かに私だ。それは認める。だが、そもそもの(ほっ)(たん)となる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って提案をしたのはマッカーシー大司教だ。彼には何か考え… と言うか、聖女セリナに対して(ふく)む所があるみたいだしな… まぁ、(ごう)(まん)な女の(はな)(ぱしら)をへし折ってやりたい… (ひと)(あわ)()かせてやりたいって思うのは、ナンシー(お前)も同じだろ?」


 オリビアの話を聞き、ナンシーはほくそ()む。


(ソフィアの()()()()()()とした反応で聖女セリナがイラつくのを見るのも面白いけど、私が(つよ)()で言い返してやって反応を見るのも面白いかもね…? その上で(すべ)てをバラし、更にソフィアの魔法の実力を知った聖女セリナの反応を見たら… 笑いが止まらないかも…♪)


 ナンシーはオリビアと共に、修練場に着くまでクスクスと笑い合ったのだった。

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