第59話 それぞれの気苦労
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時は少し遡り、ガディッツはグレッディ王国に戻る前に王宮を訪れていた。
「…と、言うワケでして… 聖女邸の改築はともかく、セリナの歓迎の宴を催しては頂けませんか? どうもソフィアと言う聖女に対抗している様でして…」
流れる汗を何度も拭いつつ、恐る恐る話すガディッツ。
グレッディ王国の王には何度も謁見しているので慣れていたが…
他国の、それも大国の中の大国である聖クレア王国の国王への謁見ともなれば、緊張するのも無理はなかった。
しかも、自らの娘を『歓迎する宴を催して欲しい』と言う訴えである。
普通なら、催される側からは言わない事である。
謁見の間に居並ぶ大臣や貴族達の冷ややかな視線を感じ、ガディッツは背中にもベッタリと汗を掻いていた。
「フム… まぁ、その程度の事なら構わぬが… それにしても、何故セリナ様はソフィア様に対抗心を…?」
訝しげに聞く国王。
「はぁ… どうやら自身を史上最高の聖女だと思ってる様でして… マッカーシー大司教でしたかな? 彼の話では、ソフィアと言う聖女の〝聖女への目覚めの輝き〟の期間が我が娘の倍以上だったとか…」
「うむ、余も大司教から聞いておる。ソフィア様の〝聖女への目覚めの輝き〟は、15日間にも及んだそうじゃ」
(話を聞いた時はまさかと思っていたが、本当の事だったとは…)
青褪めるガディッツに、エドワードはコクリと頷く。
(文献に依れば、〝聖女への目覚めの輝き〟の長さイコール聖女の能力の高さだとか… ならば、ソフィアと言う聖女の能力は、セリナより遥かに高いと言う事になる… セリナ、自身の能力を過信して傲っていては、恥を掻く事になるぞ…)
ガディッツは娘を心配しつつ、帰国の途に就いたのだった。
後に彼の心配は的中する事になる。
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「本日、王宮では聖女セリナ様の歓迎の宴が催されますが、ソフィア様には街で傷病人達の治療を行って頂きます」
「う~ん… 私、セリナさんに会ってみたいんですけど…」
アンナが予定を伝えると、ソフィアが不満そうに返す。
が…
「しかしソフィア様、歓迎の宴には多くの貴族達が参加する筈です。ソフィア様は、自身の歓迎の宴で緊張のあまり、何も食べられなかったと聞き及んでますよ? それに、ソフィア様の〝魔法訓練見学ツアー〟が催された時も、多くの貴族達に驚いて隠れていましたよね…?」
オリビアに言われ、ハッとするソフィア。
「そ… そうでした… 思い出したら緊張してきました… うっぷ…」
思わず嘔吐くソフィア。
「…と、この様に緊張なさっているソフィア様には、予定通り街に出て傷病人達の治療を行って頂きます。オリビア様が護衛として同行するのは勿論ですが、メイドからも10名を選出して手伝わせて頂きます。ちなみに私、シンディ、ナンシーの3名は、選出される10名とは別に、同行する事が決まっております」
アンナが淡々と告げると、シンディは当然とばかりに頷く。
ナンシーは〝魔法訓練見学ツアー〟でソフィアの実力を見て以来、態度にこそ出さなかったが、ソフィアの魔法の力に魅了されていた。
傷病人達の治療行為と言う地味(?)な事ではあるものの、またソフィアの魔法を見れると思うとワクワクするのだった。
そして、アンナ主導で準備が進められる中、バドルス侯爵とマッカーシー大司教はセリナの歓迎の宴に出席する為、共に王宮へと向かって行った。
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大聖堂から王宮までは、馬車で3時間掛かる。
また、歓迎の宴はセリナと王侯貴族との歓談と会食──夕食──が催される為、開始時刻は午後5時頃からである。
その時間を利用し、2人は歓迎の宴が始まるまでの間、前日に決めた『修練場での魔法対決(?)』に、如何にしてセリナを連れ出すかを話し合う。
「やはり、聖女セリナの魔法の実力を見たいと言うのが最適でしょうか?」
「そうですな… ただ、何の脈絡もなく、いきなり言うと不審に思われるかも知れません。自然な流れで話を持っていかなければ…」
2人は宴の開始時間ギリギリまで話し合っていたが良い案は出ず、宴の流れの中で言えそうなら言う事にした。
しかし2人の話し合いは、結果的に無駄になるのだった。
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「は~い、次の方どうぞ~♪」
すっかり傷病人の治療に慣れたソフィアは、次々と治療を熟していく。
「あのソフィアが物怖じもせずに治療行為をねぇ… 魔法の実力は素直に凄いって思ったけど、ラナさんから聞いてたソフィアとのギャップには違う意味で凄いと思うわ…」
独り言ちるナンシーだったが、すぐ近くで聞いていたシンディが話し掛ける。
「ラナさんって… 確か〝魔法訓練見学ツアー〟の時に、ソフィア様を見付けた女性よね? ナンシーと同じ奴隷商に居たんだっけ?」
「んにょわぉおおおおぅっ! シ… シンディ…? ラナさんの事、知ってるの?」
驚き、素っ頓狂な声をあげるナンシー。
そんな彼女を気にするでもなく、シンディは続けて話す。
「ん~… 知ってると言うか、旦那様… バドルス侯爵様とラナさんが話してる時に、お茶を用意したのが私なのよ。だから、一応だけどラナさんって女性とは面識があるのよね。だから、彼女が猫舌ってのも知ってるし…」
「ラ… ラナさん、猫舌だったの…? 知らなかった…w」
肩を震わせて笑いを堪えるナンシーだったが…
「私が猫舌なのが、そんなに可笑しい?」
「んぎぃいいいい~っ!」
突然後ろから現れたラナに、左右の頬をつねられたのだった。
「う~っ… なんで此処にラナさんが居るんですか…?」
ナンシーは両頬を擦りながら、涙目でラナに問いかける。
「なんでって、仕事で通り掛かっただけよ。すぐそこの食堂に食材を卸しにね」
言ってラナは、一件の食堂を指差す。
そして、治療行為に精を出すソフィアに目を向けると、感心と呆れが混じった様な表情になる。
「聖女様の事は噂で知っていたけど、バドルス侯爵様から聞かされるまでソフィアの事だとは思わなかったのよね… なにしろソフィアは臆病な上に、気が弱過ぎるでしょ? 血を見るだけでも失神しそうじゃない?」
「しそうじゃなくて、したんだよ。まぁ、その場に私は居なくて、後から聞かされたんだがな… って、何処かで見た顔だな…?」
話しながら歩いてくるオリビアを見て、ラナは修練場での出来事を思い出す。
そして、思わずナンシーの後ろに隠れるのだった。
「あっあっあっ、あの女性剣士! 修練場で私を斬ろうと襲い掛かってきたぁあああああ…!?」
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。アンナさんから注意されて、オリビア様は無闇に剣を抜く事が無くなりましたから。 …って、お姉さん…?」
シンディが話し掛けるが、ラナからの返事は無い。
気になったシンディが覗き込んでみると、修練場での恐怖がまざまざと甦ったラナは気を失ってしまっていた。
「なによ… ソフィアの事、臆病な上に気が弱過ぎるとか言ってたのに… ラナさんも充分に気が弱いじゃない…」
ナンシーは呆れつつ、オリビア、シンディと共に、ソフィアの元へと失神したラナを運んだのだった。




