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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第57話 ある意味、間一髪だったナンシー

 ガディッツとセリナが食堂に行くと、そこには数十人分の食事が用意されていた。


「お父様、この数は…?」


「ここは王宮の隣でもあるし… もしかすると(セント)クレア国王や、その家族の分かも知れんな。我々と食事を共にし、(しん)(ぼく)を深めようとしておられるのやも知れんが… それにしては数が多いな。もしや、(セント)クレア王国の貴族達も同席するとか…?」


 ガディッツの言葉にセリナは(まん)(ぞく)()(うなず)き…


「当然ですわね。なにしろ(わたくし)は歴代最高の…」


 そこまで言って、先程(さきほど)のマッカーシー大司教の言葉を思い出す。


「最高… の(はず)ですわよね、お父様? (わたくし)は7日間も光り輝いてたんですもの」


「うむ… しかし、聖クレア王国(この国)の大司教が言っておったな…? ソフィアとか言う人物は、15日間も光り輝いていたとか… それが本当ならば、歴代最高の聖女はセリナ(お前)ではなくソフィアと言う人物…?」


 ガディッツは腕を組んで考える。

 しばらく考えた彼は、自分なりの回答を(みちび)き出す。

 15日間も光り輝いて聖女に目覚めた者が()たのなら、小国とは言えグレッディ王国(自分の国)(しら)せが来ないとは思えない。

 ならば、先程(さきほど)の大司教の言葉は、歴代最高の聖女として(ごう)(まん)(こう)(まん)にならない様にとの(いまし)めではないか?

 グレッディ王国では、我が娘の誰もが()(まま)に育っているとの(あく)(ひょう)が広まっている事を知っている。

 もしかしたら、その(あく)(ひょう)(セント)クレア王国にまで広まっているのではないか?

 聖女として、人々から愛される人物に()れと、(げん)(がい)に忠告…

 いや、警告したのではないか?

 身に覚え(?)が()()()()()ガディッツは(あお)()め、セリナに言う。


「マッカーシー大司教だったか? 彼の言葉を()に受ける必要は無いと思うが… お前が歴代最高の聖女だとしても、それに(おご)るなとの()()ではないか? (おご)って反感を買うと、歴代最高の聖女と言えど()(りつ)してしまう。()(りつ)してしまっては、歴代最高の聖女だとしても充分に能力を発揮するのは困難であろう?」


 ガディッツに言われたセリナは納得した様に(うなず)く。

 しかし…


「それにしてもマッカーシー大司教でした? ()の者の言い方は、聖女である(わたくし)に対して無礼ですわ! まるで(わたくし)の能力が、ソフィアとか言う者の(あし)(もと)にも(およ)ばないみたいではありませんか!」


 実を言うとガディッツは、()()が気になっていた。

 単なる注意にしては、具体的に過ぎたのだ。

 ()()()()と言う個人名もだし、15()()()と言う日数もである。

 (いまし)めとしての(たと)え話なら、そこまで具体的な個人名や日数は不要だった(はず)だ。

 にも(かかわ)わらず、具体的な個人名や日数を出してきた。


「さすがに足元(あしもと)にも(およ)ばないとまでは言っておらなんだが…」


()()()()()()()()とは言っておりましたわよ? それって、()()()()()()()()と言ったも同然だと思いますわ!」


 すると、(ちゅう)(ぼう)からゾロゾロと10歳前後の若いメイド達が食堂に入ってくる。

 その中から1人、20代(なか)ばと(おぼ)しきメイドが歩み寄る。


「失礼致します。新たに聖女と()られましたセリナ・フォン・ランドール様と、お(ちち)(ぎみ)のガディッツ・フォン・ランドール様でしょうか?」


 ガディッツは(うなず)き、逆に聞く。


「そうだが、()()は…?」


「この(たび)王宮の聖女邸(こちら)のメイド長に就任しましたジルと申します。王宮よりの指示で、セリナ様にはここ… 王宮の聖女邸に住んで頂く事になりました。以後、(よろ)しくお願い申し上げます」


 言って深々とお辞儀するジル。


「あ… あぁ、こちらこそ… ところで、この食事の数は…?」


 ズラリと並んだ数十人分の食事を見て、ガディッツがジルに聞く。


「こちらはセリナ様とガディッツ様、そしてメイド達の食事になります。ソフィア様が聖女として王都に来られてから、メイド達と一緒に食事を()られる事が─」

「どう言う事ですの!? メイドって平民なんでしょ!? 伯爵家の娘であり聖女でもある(わたくし)に、平民と同じテーブルで食事を()れと!? 王侯貴族とならともかく、平民と一緒なんて冗談じゃありませんわ!」


 激昂(げきこう)するセリナを()めた()で見るジル。

 そしてメイド達の方に向き直って指示を出す。


「聞いての通りです! 本日食堂で食事を()る予定だった者は、(おの)(おの)自分の食事を持ってメイド部屋に行きなさい! (ほか)の者は残り、聖女(セリナ)様とガディッツ様の給仕を(つと)めなさい!」


 言うだけ言うとジルも自分の食事を持ち、メイド達と共に食堂を出ていこうとする。

 そしてドアの前で振り返って一礼すると、給仕のメイドが開けたドアから出ていった。


「なぁ、セリナ… あの者、ジルと言ったか…? ()(やつ)、最初からこうなる事を予想しておったのではないか…?」


「お父様、どう言う事ですの?」


 ガディッツは、残された自分達の食事を指差す。


「見てみなさい。私達の食事は直接テーブルに置かれておる。が、メイド達が持っていった食事… ()()()トレイに乗っておった… 持ち運ぶ事を(ぜん)(てい)としておらねば、その様な事はしないだろう?」


「それは… そうですけど… それにしても、大司教やメイド長の言うソフィアとか言う者… (いっ)(たい)何者なんですの!? 聖女と言えば、国王より身分が上とされてますのよ!? あの者の言い分からすれば、その聖女が平民であるメイド達とテーブルを共にしてるって事ですわよね!? その様な事、聖女としての身分を地に(おとし)める()(こう)ではありません事!?」


 セリナは更に激昂(げきこう)し、そんな彼女を(なだ)めながら食事を()るガディッツ。


(はぁ… 聖女としての能力に目覚める前も()(まま)だったが、目覚めてからは更に()(まま)に拍車が掛かったみたいだな… こんな事で、本当に聖女としての(つと)めが()たせるんだろうか…?)


 そんな事を考えながら、ガディッツは食事の味を楽しむ事も無く、ひたすら続くセリナの()()を聞きながら胃に詰め込むだけだった。





 ────────────────





「…と、(みずか)らの能力に(おご)っている様で、ソフィア様とは真逆の聖女様って感じらしい。ま、私達には関係無いけどな。とりあえず、少しでも(ごう)(まん)なのを(よく)(せい)する為かどうかは知らないけど、王宮の聖女邸は新たな聖女に住まわせるみたいだな。で、大聖堂(こっち)の聖女邸はソフィア様がって事らしい。王宮の聖女邸(あっち)のメイド達には気の毒だが…」


 言って肩を(すく)めるオリビア。


「それは… 確かに気の毒ですね… ですが、()()(ごと)とは思えません。ソフィア様が聖女の能力に目覚めるのが4ヶ月も遅ければ、私達がセリナ様のメイドとして(つか)える事になっていたんですから…」


「いや、遅かれ早かれソフィア様は聖女の能力に目覚めた(はず)だろ? なら、少なくともアンナ殿とシンディはソフィア様に(つか)えたんじゃないか?」


「あぁ、確かに… バドルス侯爵(旦那)様はソフィア様が聖女と()られた(さい)(こう)(けん)(にん)()られたワケですからね… 必然的に、バドルス侯爵家から派遣された私達は、ソフィア様に(つか)える事になったでしょうね…」


 言ってアンナはチラリとナンシーを見る。

 アンナの視線の意味に気付いたオリビアも、ナンシーをジッと見る。


「な… (なん)ですか? アンナさんにオリビア様も… 私をジト目で見て…?」


 2人の視線に気付いたナンシーは、その理由が(わか)らずドギマギする。

 ちなみにシンディも、何故2人がナンシーに注目しているのか理解していなかった。

 勿論、周囲で雑用をしているメイド達も、その意味を理解している者は()なかった。

 が、ソフィアだけはその意味に気付き、あっけらかんと話す。


「う~ん… 私が聖女の能力に目覚めるのが4ヶ月も遅かったら、まだ()()だったんですよねぇ… そうしたら、マッカーシー大司教様に(さそ)われて王都の散策(さんさく)に行くのも、4ヶ月はズレていたでしょうし… それを考えると、ナンシーさんは聖女邸(ここ)()なかったかも知れないんじゃないでしょうか? まぁ、ラナさんみたいに()()かの商店に(やと)われてたかもですけど、少なくとも今と同じ状況では無かったかも知れませんねぇ…?」


 ソフィアの話を聞き、雑用をしていたメイド達は()(ほど)とばかりに(うなず)く。

 勿論、大聖堂に(つと)めるメイド達は、ソフィアが(みずか)らを()()(にご)した言葉が()()である事を知っている。

 それを()まえ、ナンシーは勿論だが、自分達も運が良かっただけなのだと理解した。

 状況次第では、自分達がセリナのメイドとして(つか)える事になっていたのかも知れないのだから…

 ソフィアの居た奴隷商は、ソフィアが聖女と()った1ヶ月以上(あと)に王都に出店している。

 もっとも、それは奴隷商の出店を決める王都の抽選を操作していたからなのだが…

 なので、ソフィアが聖女に目覚めるのが遅ければ、それだけソフィアの居た奴隷商が王都で出店するのも遅れていた事になる。

 したがって、ナンシー自身は傲慢(ごうまん)な聖女に(つか)える可能性は極めて低かったのだが、ソフィアに(つか)える可能性も微妙だったのである。

 奴隷商の出店が4ヶ月も遅れていれば、ナンシーは王都に来る前に誰かに買われていたのかも知れないのだから…


「ソフィアぁああああ… あんたが聖女で良かったぁああああ… セリナって(ヤツ)より早く聖女に目覚めてくれて良かったぁああああ…」


 ナンシーはソフィアに抱き付き、(ごう)(きゅう)する。

 そんなナンシーを、ソフィアも優しく抱き()めるのだった。





【追記】

 ソフィアに優しく抱き()められたナンシーに(しっ)()し、()(げん)を悪くして周囲に当たり散らしたオリビアだったが…

 当然、その行為がオリビアの()()()()を加速させたのは言うまでもない…

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