第54話 西の森での魔物戦 ~終盤戦~
近衛兵と義勇兵の活躍で、魔物の数は3分の2程度に減った。
しかし、まだまだ脅威が減ったとは言えなかった。
「魔物全体の数は減ったが、オーガは6体、ハイオーク10体、ホブゴブリンが25体、ガーゴイルが5体か… あんまり減っていないな… やはり全体を見渡して指示する必要があるか…?」
オリビアは考え、グリフォンとワイバーンを操る飼育員に手を振り降りてくる様促す。
「オリビア様、どうなさいやしたか?」
降りてきた飼育員が聞くと、彼の肩を掴んでオリビアが言う。
「私がグリフォンかワイバーンの背に乗って、上空から戦局を見下ろす事は可能か?」
「う~ん… さすがに1人で乗るのは難しいでしょうが… あっしの後ろに乗るってんなら問題ありやせんぜ? あっしが思うに、戦局が思わしくないんで上空から指示を出そうって感じですかい? けど、そりゃあ無理ってモンだ。止めときなせぇ」
オリビアの考えを察した飼育員は、あっさりダメ出しをする。
「何故だ? 地上からじゃ広い森を見渡せないが、上空からなら全体を把握する事は難しくないと思うが…?」
「上空から見たって無駄ですぜ? 森の木々が邪魔して地上の様子なんて殆ど判りませんや。あっしらだって森の端に魔物が見えたらグリフォンやワイバーンを降ろして、魔物が森から出ない様に通せんぼするのがやっとでやすからねぇ…」
飼育員は言うが、オリビアは引き下がらない。
「それでも木々の隙間から少しは見えるだろう? どの魔物がどの辺りに居るのかを伝えられるだけでも違ってくる筈だ。何もしないで手を拱いているよりはマシだろう」
言ってオリビアは飼育員が乗っていたグリフォンに跨がる。
仕方無く飼育員がオリビアの前に乗り、飛び立とうとするとソフィアが駆け寄ってくる。
「わ… 私も乗せて下さい! 魔法を使って見下ろしたら、魔物とこのえへいやぎゆうへいの皆さんの場所ぐらいは判ると思うんです!」
オリビアはソフィアの意見を採用し、別のグリフォンに乗っている飼育員を呼び降ろす。
事情を説明し、ソフィアを後ろに乗せたグリフォンが飛び立つと…
「いやぁああああああああああっ! 高いっ、高いぃいいいいいいっ! 怖いぃいいいいいいっ!!!!」
ソフィアは飼育員にしがみ付いて叫ぶだけで、何も出来なかった…
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「ソフィア様… ご自身が高い所が苦手だと知らなかったんですね…?」
地上に降りたオリビアはソフィアの頭を撫で、慰めながら問い掛ける。
「は… はい… 大聖堂の邸や王宮の邸の高さなら平気なんで、大丈夫だと思ったんですが…」
「まぁ、3階程度の高さと森全体を見渡せる高さでは、全く違いますからねぇ…」
上空を舞うグリフォンやワイバーンを見上げながら言うオリビア。
1㎞四方の広さを持つ森。
その全体に散らばる魔物の動きを把握し、森の外に出ようとする魔物を止める為には、それ相応の高さで見下ろす必要がある。
「どうしましょう…? オーリャさんだけで広い森の全体を見渡すのは難しいでしょうし…」
ソフィアの意見にオリビアは顎に手をやり考える。
「確かに… 私1人でカバー可能な範囲は限られますからね…」
そこまで言って、オリビアはハッと顔を上げ…
「ハイマン少将! パーマー大尉! 貴殿等、高い所は平気か!?」
近くで怪我人の治療をする司祭や司教に指示しているギルバート・ハイマン少将とブルース・パーマー大尉に声を掛ける。
2人が頷くと、更に1人の飼育員を呼び降ろして事情を説明する。
「なるほど… 上空から戦闘員への指示ですか…? さすがに上空からは初めてですが、それこそ私の得意とする分野です。お任せを!」
ギルバートは自身の胸をドンッと叩き、不敵に笑ってみせる。
「私も斥候部隊を指揮し、魔物を森の中に閉じ込めていましたからな。戦闘は不得意ですが、戦局を見て指揮するのは得意とする分野です。お任せを」
ギルバートと違い、胸に手を当て恭しく頭を下げるブルース。
その様子を見ていたソフィアは…
「空中浮遊!」
と、魔法で自身の身体を浮かび上がらせた。
「うん♪ 自分で飛んだら、不思議と怖くありませんね♪ オーリャさん、これなら私も皆さんのお手伝いが出来ると思います♡」
しばらく5m程度の高さをフヨフヨと漂っていたソフィアだったが、慣れるに従って徐々に高度を上げていく。
そして…
『南西方面の皆さ~ん! 北東方向のおーが2体、ごぶりん5体、こぼると8体が南に向けて森を出ようとしていま~す! 東に移動してそしして下さ~い!』
と、拡声魔法を使って声を張り上げ、近衛兵や義勇兵に指示し始めた。
「慣れるの、早過ぎだろ… って、そんな事を言ってる場合じゃないか… ハイマン少将! パーマー大尉! 私達もソフィア様に続くぞ!」
言ってオリビアはグリフォンに乗り、飼育員を急かして上空に舞い上がった。
(ったく… 高い所を怖がってたの、何だったんだよ… まぁ、それがソフィア様のソフィア様たる所以なのかもな…)
オリビアは苦笑しつつ、自身も拡声魔法を使って地上で戦う近衛兵や義勇兵に指示を出し始めるのだった。
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ソフィア達4人が上空から的確に指示を出し、近衛兵や義勇兵は次々と魔物達を狩っていく。
時折森の外に出ようとする魔物も居たが、こちらは監視を続ける飼育員がグリフォンやワイバーンを操って封じ込める。
また、森の上に飛び出してくるガーゴイルは、オリビアが剣、ソフィアが魔法で仕留めていった。
そうしてソフィア達が指示を出し始めてから2時間が過ぎ、残りはゴブリン3体、コボルト5体に加え、オーガ2体、ハイオーク3体、ホブゴブリン8体、ガーゴイル1体となった。
「ようやく終わりが見えてきたな… ところでソフィア様、あそこにガーゴイルとオーガ、ハイオークが固まってるみたいですが、何か一撃で屠れる魔法はありませんか? 森が火事にならない様に、火炎系以外の魔法でですが…」
言ってオリビアが指差す方向を見るソフィア。
「がーごいるとおーが、それにおーくですか…? う~ん… それじゃあ、岩石落を使ってみます♪」
『こ… 近衛兵! 義勇兵! 森の中央付近に居るガーゴイル、オーガ、ハイオークから離れろっ! 大至急だっ!』
言葉の感じから魔法の内容を悟ったオリビアが拡声魔法で叫ぶ。
「岩石落!」
同時にソフィアが魔法を発動させると巨大な岩石が現れ、ガーゴイル、オーガ、ハイオークを押し潰した。
「ソフィア様… せめて私が合図してから魔法を発動させて下さい…」
血の気が引き、真っ青になって愚痴るオリビアだった。




