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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第53話 西の森での魔物戦 ~中盤戦~

 森の南北に部隊の展開が終わると、上空を(せん)(かい)しているグリフォンの背に乗った飼育員の1人が手を振って合図する。

 それを見たオリビアは両腕を大きく振ってから(いっ)(たん)()め、(ひと)呼吸おいてから一気に振り()ろした。

 オリビアの合図を確認した飼育員は片腕の肘から先をクルクル回すと…


『クォオオオオオオ~ンッ!』

『グァアアアアアア~ッ!』


 グリフォンとワイバーンが大きく(ほう)(こう)した。

 それを聞いた近衛兵達と義勇兵達は、一斉に森へと駆け込む。


「どうなるかな…? 兵の数こそグレイヤールの時より増やしてはいるが、その分だけ(しつ)も落ちてるだろうしな…」


「そうですな… ところで、今回はハンターや冒険者のランクをどこまで広げられましたかな?」


 指示を終えて戻ってきたギルバート・ハイマン少将が聞くと、オリビアは(にが)(むし)()(つぶ)した様な表情で答える。


「魔物の数が数だからな… それなりに戦闘経験のあるEランクまで広げざるを得なかった。足手(まと)いになる可能性を極力低くする為、そんな連中にはコボルトやゴブリンみたいな弱い魔物に当たる様に指示してある。とは言え、魔物が種類別に分かれて行動するとは考えられないからな…」


 オリビアの話を聞いたギルバートは腕を組んで(うな)る。


「うぅ~む… それだと怪我人が続出するでしょうなぁ… 死人が出ない事を祈るばかりです…」


「いや、怪我人はともかく死人は出ないと思う。ソフィア様に治療して(いただ)ければ、仮に(ひん)()の重傷でも()(どころ)(なお)るからな♪ さすがに即死は別だけどさ♪」


 オリビアがギルバートの不安を(ふっ)(しょく)する様に明るく言い、ソフィアの方を振り返ると…

 そこに居る(はず)のソフィアが居なかった。


「ソ… ソフィア様!? いったい何処(どこ)に!?」


 (あわ)てて周囲を見回すオリビア。

 だが、目の届く範囲にソフィアの姿は認められない。


「ソフィア様、いったい何処(どこ)に…? まさか、今回は役に立ってないとか悩んでたから、魔物を倒しに森へ入ったんじゃ…?」


 すると、同じく周囲を見回していたギルバートが馬車を指差す。


「オリビア様、馬車の中に人影が見えます。もしやソフィア様では…? それにしても、何故あんなに動いておるのでしょうな?」


 言われて馬車を見るオリビア。

 確かに馬車の中で人影が常に動いており、何かを探している様にも見える。


「何か忘れ物でもしたのかな? しかし、何かを持っていた様には見えなかったが…?」


 オリビアは森に来るまでのソフィアの姿を思い出す。

 が、動き(やす)い服装の上からライトアーマーを装着しただけで、特に何かを持っている様子はなかった。


「とにかく馬車へ行ってみよう。ソフィア様は観察眼が(すぐ)れている。私が気付かなかった何かに気付いたのかも知れない」


「はっ!」


 駆け出すオリビアとギルバート。

 馬車に着き、ドアを開けると…


「あれっ? オーリャさん、どうしました?」


 馬車の中を掃除するソフィアがそこに居た。





 ────────────────





「…馬車の汚れが気になって掃除するのは(かま)いませんが… せめて声を掛けてからにして下さいよ…」


 ソフィアと並んで森の方へと歩きながら、疲れた様にオリビアが話す。


「あはは、ついクセで… ところで、()()()()()(みな)さんは大丈夫なんでしょうか? 今回、戦闘経験の少ない人が多いって聞きましたけど…」


 言いつつ森に視線を向けるソフィア。

 オリビアは腕を組み、考えながら話し始める。


「言いたくはありませんが、とても大丈夫だとは… 前回のグレイヤールの時より魔物の数が多いんで、少しでも(とう)(ばつ)人数を増やそうとしまして… さすがにFランクは除外しましたが、そこそこ戦闘経験のあるEランクまで(しょう)(しゅう)しましたからねぇ… そんな連中には、コボルトやゴブリンみたいな弱い魔物を相手にする事を(げん)(めい)してますが、魔物が種類別に分かれてるとは限りませんからね… 最悪、死者が出る事は覚悟しておいた方が…」


 オリビアの話を聞き、表情が(くも)るソフィア。


「死者… ですか… それって、やっぱりグレイヤールの時みたいな? 正直、見たくありませんね…」


 今にも泣き出しそうな表情で語るソフィアに、オリビアは胸が()()けられそうになる。


「だ… 大丈夫でしょう。Eランクの連中やDランクに上がったばかりの連中には、決して無理な戦闘を(おこな)わない様に厳命(げんめい)してあります。ヤバいと思ったら逃げる様にとも。言い付けを守っていれば、少なくとも死ぬ事はないと思います」


「そのオーリャさんの言い付け、守って欲しいですねぇ…」


 遠い()で森を見詰めながら言うソフィアだった。





 ────────────────





「よ~し、分断に成功だ! そっちのゴブリンは(まか)せたぞ! 俺達はオークを片付けるからな!」


了解(ラジャー)! ゴブリンを殲滅(せんめつ)すっぞ! お前ら、気合いを入れろぉっ!」


「「「「おぉ~っ!!!!」」」」


 森のあちこちで似た様な声が響き、次々と魔物が狩られていく。

 勿論、近衛兵や義勇兵だけが優位なワケではなく、逆に魔物が優位な場所も()る。


「バカ野郎っ! そっちのホブゴブリンは俺達が()るって言っただろうが! お前らはコボルトを相手にしてろっ!」


「す… すいやせんっ! おいっ! しっかりしろ! 傷は浅いぞ!」


「怪我人は森の外に連れ出せっ! (よび)()(人を呼ぶ合図に吹く小さな笛)を吹けば聖女様が来て治療してくれる()(はず)になってる! 急げっ!」


 怪我をした兵士が森の外に引き()り出され、(よび)()が吹かれるとソフィアとオリビアが向かい治療を(おこな)う。

 (あと)から駆け付けた司祭や司教も森の周囲に展開し、あちこちで怪我人の治療が(おこな)われていた。


「さすがに怪我人が多いですねぇ… 誰も死んでないのが(さいわ)いですけど…」


「まだ安心は出来ませんけどね… これだけ怪我人が出るって事は、いつ死人が出ても不思議ではありませんから…」


 ソフィアは小さく(うなず)き、続いて運ばれてきた怪我人の治療に向かうのだった。

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