第52話 西の森での魔物戦 ~序盤戦~
「魔物の種類と数ですが、オーク34体、ゴブリン56体、コボルト85体、オーガ8体、ハイオーク13体、ホブゴブリンが28体、ガーゴイルが7体であります!」
「なるほど… 正確な数が判ったまでは良いが、グレイヤールの時より随分と数が多いな…」
ブルースの報告に、眉をしかめるオリビア。
そんなオリビアをソフィアが指で突つく。
「ソフィア様、どうされました?」
オリビアが聞くと、ソフィアは森の上空を指差す。
「あれ… 空を飛んでるのは何でしょう? 鳥に見えますけど、それにしては変な形だと思うんですよねぇ…?」
ソフィアが指差す方向を見ると、確かに鳥に似た何かが森の上空を旋回していた。
それも1羽や2羽ではなく、二十数羽が円を描く様にである。
目を凝らして見ていたオリビアだが、やがて驚愕してブルースに詰め寄る。
「おいっ、パーマー大尉! グリフォンとワイバーンが居るとは聞いていないぞ! 気付かなかったのか!?」
「落ち着いて下さい、オリビア様。あのグリフォンとワイバーンは我々が放ったのです。よく見て下さい。何頭かの背中に人が乗っておりますでしょう?」
言われてオリビアは再度上空を見上げる。
ソフィアも同じ様に見上げ…
「「本当だ…」ですね…」
同時に呟いた。
「魔物達を森から出さない様に、上空を旋回させているのです。どうすれば良いか悩んでおりましたところ、グリフォンとワイバーンを飼育していると言う男が協力を名乗り出ましてね」
「それで、この状況になったワケか… それにしても、よく魔物達が森から出るのを抑えられたモンだな…」
オリビアが感心した様に言うと、ブルースは溜め息を吐きながら話し始める。
「はぁ… 私も驚きましたよ… あいつら、自分の手足みたいにグリフォンやワイバーンを操って、魔物達を森から出さないんですよ… 魔物が森から出ようとすると、サッと何頭かで地上に降りて行く手を阻んでしまうんです… その手際の良さと言ったら…」
「飼育員とは言え、さすがはプロって事か… 連中には、国王陛下に掛け合って褒美を遣わさなきゃな…」
言ってオリビアは肩の力を抜いたのだった。
そんな会話を交わしている内に、近衛兵と義勇兵が到着したのだった。
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「なるほど… それなら後は、森の中の魔物を殲滅するだけですね。上空のグリフォンとワイバーンを地上に降ろして森を包囲。我々近衛兵と義勇兵で森に入って各個撃破… と言う感じですかな?」
近衛兵を率いるギルバート・ハイマン少将が、笑みを浮かべながらオリビアに話し掛ける。
「それが理想かも知れないが、森の広さに対してグリフォンとワイバーンの数が圧倒的に足りない。聞いた話では、この森は1㎞四方もの広さが在るらしいからな。グリフォンとワイバーンに加え、近衛兵と義勇兵を展開させても完全に包囲するのは不可能だし、何よりも魔物の数がグレイヤールの時より遥かに多いんだ。上位の魔物であるオーガ、ハイオーク、ホブゴブリンの数も比較にならない。その上ガーゴイルまで居るとなれば、包囲の隙間を突かれたり一点突破を図られたりするかも知れない。森から出られて散らばりでもされたら、厄介なんてモンじゃないからな…」
オリビアの指摘に黙り、考え込むギルバート。
「考え過ぎるな、ハイマン少将。下手に地上で包囲するより、現状を維持したまま殲滅作戦を行う方が良いだろう。兵達を半分に分けてくれ。移動の負担を公平にする為、森の南北から挟み込む」
「なるほど… 東西からだと西から攻める連中に移動の負担を掛ける事になるし、何より移動時間が倍になりますからな… 了解しました。ところで分け方ですが、近衛兵と義勇兵で分けますかな?」
ギルバートの提案に、オリビアは首を振る。
「いや、近衛兵と義勇兵を半数ずつに混成しよう。焚き付けるつもりは無いが、目の前で互いの戦いっぷりを見た方が刺激になるだろう。競争意識も生まれるだろうが、ピンチの時には仲間意識も芽生えるだろうと期待してるんだ」
「さすがはオリビア様ですな。では、その様に。私は指揮に戻ります」
ギルバートは敬礼し、近衛兵達の元へと駆けていった。
その背中にオリビアは声を掛ける。
「殲滅戦の開始合図はグリフォンかワイバーンの咆哮だ! 同時に攻めるぞ!」
ギルバートは振り返ること無く、片手を挙げて応えた。
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「今回、私は何の役にも立ってないですね… こんなに高価ならいとあーまーまで作って貰ったのに、なんだか申し訳ないです…」
苦笑しつつも、しょんぼりとするソフィア。
そんなソフィアとは逆に、オリビアは微笑む。
「今回もソフィア様は役に立ってますよ? 近衛兵も義勇兵も、ソフィア様が居るから奮起するんです。トロールとの戦いでも、キング・トロールを屠ってトロール達の統制を乱してくれたじゃありませんか。グレイヤールでも上位の魔物の半数を一発の魔法で屠ってくれましたし、他の魔物達も軽く倒してたじゃないですか。もっと自信を持って下さい」
ソフィアを励ますオリビアだったが…
「そんな… 私は夢中だっただけです… 結果的に役に立ったかも知れませんけど、今回は何もしてません…」
と、頑なにソフィアは自身の功績を認めようとはしなかった。
(このソフィア様の自身に対する評価の低さ… やっぱり奴隷商での生活が根底にあるのか…? どんな生活環境にあれば、ここまで自己評価が低くなるんだ…? さすがに本人に聞くのは忍びない… バドルス侯爵かマッカーシー大司教にでも聞いてみるか…)
オリビアはソフィアの居た奴隷商への怒りを抑えつつ、まずは魔物の殲滅戦に集中するのだった。




