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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第50話 治療、炊き出し、そして新たな戦い

 アンナとナンシーに加え、シンディもペンの持ち方を徹底指導した事で、ようやく読める字を書ける様になったソフィア。

 その事が()(ほど)(うれ)しかったのか、1日でノート1冊を真っ黒にしてしまう(ほど)だった。


(うれ)しくて練習するのは()いんだけどさ… ソフィア(あんた)には聖女としての仕事もあるんだからね? そっちを(おろそ)かにしちゃ、(ほん)(まつ)(てん)(とう)よ?」


 ナンシーに言われ、ハッとするソフィア。


「そ… そうでした! アンナさん、シンディさん、私の今日の予定は何ですか!?」


 言われてアンナはメモを取り出し、パラパラとページを(めく)る。


「本日は午後から大聖堂にて(たみ)の治療ですね。最近、朝晩は冷え込み、(にっ)(ちゅう)は暖かい日が多いからか、体調を(くず)す者が増えているそうです」


(わか)りました。ところで、どうして大聖堂なんでしょう? 今までは王都の(まち)に出掛けてましたけど…?」


 ソフィアの疑問に、ナンシーとシンディが(あき)れた様に答える。


ソフィア(あんた)が中央広場の()()()()だの、商店街の()()()()だの、何でもホイホイ引き受けるからじゃないの? 頼む方も頼む方だけどね…」


「ナンシーの言う通りですよ… ソフィア様が何でもかんでも引き受けるから…」


 2人に言われ、(ちぢ)こまるソフィア。


「身に覚えがあり過ぎます…」


「そこがソフィア(あんた)()いトコでもあるんだけど、少しは立場も考えなさいよね? 自覚の有る無し関係なしに、ソフィア(あんた)は聖女なんだから」


「忘れてました…」


「「「忘れないでよ…」下さい…」」


 ナンシー、アンナ、シンディの言葉が──微妙にズレつつ──ハモるのだった。





 ────────────────





「ハイ、これでもう大丈夫ですよ♪ 次の(かた)、どうぞ~♪」


 大聖堂では、午後から司祭や司教も加わって(たみ)達への治療が(おこな)われていた。

 また、ソフィア()きのメイド達も、(ざつ)()に追われていた。

 メイド達を指揮(しき)するアンナも()()()()()()である。


「ナンシー、シンディ、ローラ、ターニャ、水を()んできてちょうだい! ニーナ、カリーナ、ヘレン、サリー、そこのシーツを裏へ運んで洗濯! リル、ソニア、レニー、ジル、私と一緒に来て! 今、名前を呼ばなかったメイド達は、患者の整理を!」


 アンナは指示をすると、返事も待たずに走り出す。

 自身は指名した4人と共に、中庭で炊き出しを始めるのだった。

 その様子を見たオリビアは、治療の終わった患者達を中庭へ案内。

 (たみ)の中には食うに食えない者も()り、感謝の言葉を()べながら食べていた。


「さすがはソフィア様だな… (たみ)の体調を回復させるだけでなく、この様な(こころ)(づか)いまでなさるとは…」


「えぇ… (たみ)に食事を振る舞うように指示なされた時は、本当に必要なのかと疑問に思いましたが…」


 ソフィアは大聖堂での治療行為を始める前、アンナに炊き出しを頼んでいた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「炊き出し… ですか…?」


「はい、治療が終わった人達に()()()()()して欲しいんです。お願いしても()いですか?」


 アンナは(いぶか)しげな表情で(たず)ねる。


「それ、必要な事でしょうか? それに、大聖堂で炊き出しを(おこな)うと言う事は、大聖堂の(たくわ)えを放出すると言う事ですよ?」


 アンナに言われたソフィアは大きく(うなず)く。


「今まで何度も中央広場で治療を(おこな)いましたけど、ずっと気になっていたんです。(たみ)(みな)さんに、()せてる人が多いんです… 奴隷商に()た頃の私みたいに、充分な食事を()れていない人が多いのかも知れません。それに普段、私達みたいな奴隷は店の奥に閉じ込められていましたから… 今みたいな季節や冬でも、あまり寒さを気にしなかったんですよね。だから、風邪を引いた記憶も無いんです。今から思えば、商品である私達が風邪を引いて店頭に並べない事を()けたかったんだと思いますけど…」


 いつになく(じょう)(ぜつ)に語るソフィアの言葉を聞き、アンナは納得する。

 そして…


(しょう)()(いた)しました。それではソフィア様の(おっしゃ)る通り、炊き出しの準備を調(ととの)えておきましょう。ソフィア様は(こう)()(うれ)いなく、(たみ)の治療に(まい)(しん)なさって下さい」


 と、(うやうや)しく礼をしたのだった。

 だが、(とう)のソフィアは…


()()()()()()()? ()()()()? 意味は(わか)りませんけど、治療を頑張ってくれって事なんでしょうね…)


 と、アンナの言葉は理解できなかったが、一応は正解の意味に辿(たど)り着いていた。

 そして、現在に(いた)る…





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「…ソフィア様は、こうなる事を予測されていたのではないか? (しょく)に困った事が無い私達にとっては、ソフィア様の考え… いや、(しょく)に困ってる者の気持ちを理解するのは難しいのかも知れないな…」


「そうですね… 確かに私は食べたくても食べられない苦しみを味わった事はありません… それを考えると、ソフィア様は… (ひん)(こん)(あえ)ぐ者の気持ちが(わか)る、真の聖女様なのかも知れませんね…」


 オリビアの言葉に、アンナは満面の笑みで答える。

 2人と一緒に炊き出しを(おこな)っているメイド達も、その気持ちが充分過ぎる(ほど)(わか)るのだった。


「私はソフィア様こそ、聖女の中の聖女だと思ってるんです♡ 実は私、小さい頃から聖女様に憧れて(ぶん)(けん)を読み(あさ)ってたんです。でも、多くの聖女様は高い能力を持っているからか、(こう)(まん)な人が多いんですよねぇ…」


「そうそう! だから、ソフィア様も似た様な感じなのかな~って思ってたんだけどさ… (こう)(まん)どころか、凄く腰が低いんだもん。逆に驚いたのよね~」


「私はソフィア様より(ひと)(とし)(した)の7歳なんですけど、そんな私にも()()()()で呼んで下さるんです♪ 身分の高い人は、相手が(とし)(うえ)でも呼び捨てにするのが当然なのに…」


「そんなので感動しないでよ! 私なんて、ソフィア様にお茶を()れたら『一緒に飲みませんか?』って言われて、ご一緒したのよ!? あの感動は、(いっ)(しょう)忘れられない思い出ね♡」


 等々(などなど)

 若いメイド達が楽しそうにソフィアの事を話しているのを見て、思わずアンナも(くち)(もと)(ほころ)ばせる。


「…アンナ殿もソフィア様の事が好きなんだな♪ いつもの(のう)(めん)(づら)が崩れてるぞ?」


(のう)(めん)(づら)()(けい)です! それに、ソフィア様の事が嫌いな人が()たら、お目に掛かりたいモンですね!」


 真っ赤になった顔をオリビアから(そむ)けるアンナだったが…

 (そむ)けた方向に4人の若いメイド達が()り、真っ赤になった顔を()()()()見られたのだった。

 落ち込むアンナだったが、すぐに立ち直らざるを得なくなる。

 ソフィアが一通(ひととお)り治療を終えた頃、1人の兵士が大聖堂に駆け込んできた。


「王都の西の森に魔物の集団を確認したとの報告が入りました! 種類はオーク、ゴブリン、コボルトが大部分を()め、オーガ、ハイオーク、ホブゴブリンも多く確認したとの事! また、数頭のガーゴイルも確認しております!」


「なんだと!? 正確な数と進行方向は(わか)らないのか!?」


 オリビアが顔色を変えて聞くが、兵士は(うつむ)いて首を振る。


「そこはまだ調査中です… 現在、森から動く様子はなく、一ヶ所に(とど)まっている様です」


 報告を聞いたオリビアは、(この)()兵を収集させるべく王宮に早馬を走らせる。

 同時にアンナも()(ゆう)兵を(つの)る為、ハンター・ギルドと冒険者ギルドに早馬を走らせる。

 そしてまた、新たな戦いが始まる。

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