第40話 ソフィアが逃亡?
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王宮からの指示で、毎日ソフィアは午前中にアンナの教育で一般常識の勉強、午後は修練場で魔法の訓練を。
そして週に一度、街に出て民衆の怪我や病気を治療したりしている。
「それじゃ、今日は溶矢を使ってみます」
魔法の訓練の際はアンナからの注意を守り、使う魔法を予め伝える事にしている。
しかし、問題も多かった。
「も… もるてん・あろー…?」
目を点にして首を傾げるオリビア。
ソフィアの使う魔法には歴代の聖女が使った記録に無い魔法もあり、どんな魔法なのかを確認する必要があった。
「あ、溶矢ってのは魔法の矢を飛ばすんですけど、その矢が当たった物が溶けるんです。破片が飛び散る事は無いんで防御魔法は要りませんけど… あの岩がドロドロに溶けますから、熱を防ぐ魔法は必要かも知れませんね…?」
「ぜ… 全員、防熱魔法を展開っ! 展開後は全力で維持しろ!」
ソフィアの言葉を聞き、オリビアが慌てて指示を出す。
司祭達や司教達は、言われた通りに防熱魔法を展開し、全力で維持する。
「じゃ、撃ちますね? 溶矢!」
ソフィアの周囲に無数の光の矢が現れ、大岩に向かって飛んでいく。
矢が当たった大岩は瞬間的に青白く光り輝き、その後ドロドロに溶けていく。
と同時に凄まじい熱気を発し、司祭や司教達が全力で展開している防熱魔法を突き抜けてくる。
「熱っ! おいっ! 誰も手を抜いてないだろうな!?」
あまりの熱さに、思わず叫ぶオリビア。
「そ… そんな事はありません!」
「そうです、オリビア様! 全員、全力を出しております!」
このままでは不味いと思ったオリビアも防熱魔法を展開するが、突き抜けてくる熱気は僅かにしか弱まらない。
「ソ… ソフィア様! これ、なんとかなりませんか!?」
思わずソフィアに助けを求めるオリビア。
そのソフィアは凄まじい熱気の中、涼しい顔をしていた。
「えっ…? なんで…?」
「あ、ごめんなさい。自分の周りにだけ、熱を防ぐ魔法を張ってました… 防熱壁!」
ソフィアがドロドロに溶けた大岩だった物の周りに熱を遮断する魔法を展開すると、それまでの耐え難い程の熱気がスーッと無くなり、元の気温に戻っていく。
オリビア達は安堵して、その場にへたり込んでしまった。
「ソ… ソフィア様… そんな事が… 出来るなら… 最初から… して下さい…」
地面に倒れ込み、肩で息をしながらオリビアが言う。
「いや… これだけ多くの司祭様や司教様が居るし、オーリャさんも居るから大丈夫だと思ったんですよ…」
ソフィアはポリポリと頬を掻き、苦笑しつつ答える。
(相変わらずソフィア様の魔法は強力過ぎる… これ、わざわざ訓練する必要なんか無いんじゃないか…?)
ソフィアに魔法の訓練と指導する事を王宮から指示されていたオリビアだったが、何度も同じ様な事が繰り返されている事に対し、疑問を感じていた。
(このままでは我々の身体が持たないかも知れない… ソフィア様に魔法の指導や訓練は必要無いと、王宮に現状を報告してみるか…)
そうオリビアは決意し、その日の訓練の終了を宣言したのだった。
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「…以上がオリビア様からの報告でございます」
王宮にはオリビアからの苦情とも言える報告が届いており、対策会議が開かれていた。
「ふむ… ソフィア様の魔法、思っていたよりも強力に過ぎる様じゃな… 報告に対する諸卿の見解を聞こう」
国王が聞くと、防衛大臣が手を挙げる。
「報告を聞くに、ソフィア様を指導するより司祭達や司教達を指導した方がよろしいのではありますまいか? ソフィア様の魔法が強力な事よりも、司祭達や司教達の防御力が弱い方が問題だと愚考いたします。ソフィア様は聖女とは言え、まだ8歳の幼女。しかも、その幼女の魔法そのものではなく、魔法で破壊された岩の破片は勿論、溶かされたり凍らされた岩が発する熱気や冷気すら防げないとは…」
集まった多くの大臣や貴族が腕を組んで考える中、フランク・フォン・バドルス侯爵が手を挙げる。
「その考えも解らないでもありませんが、そう結論付けるには少しばかり早計かと。私はソフィア様の魔法を直に見ましたが、あまりの凄まじさに愕然とした程です。ソフィア様を〝たかが8歳〟と侮ってはいけないと思います。恐らく、歴代の聖女の中でも最高峰の魔力ではないかと… ならば司祭達や司教達が防御しきれなくても仕方無い事かと思いますが?」
フランクの意見に防衛大臣は勿論、他の大臣や貴族達も訝しげな表情でフランクの話を聞く。
「ふむ… では聞くが、この中にバドルス侯爵以外でソフィア様の魔法を見た者は居るかな?」
エドワードの言葉に、誰もが首を振る。
ただ1人、マッカーシー大司教を除いて。
「やはり、大司教しか居らぬか… つまり、ソフィア様の魔法を直に見たのは、バドルス侯爵以外では余と大司教のみと言う事じゃな? ならば皆、ソフィア様の訓練を見学してはどうじゃ? 〝百聞は一見に如かず〟と言うであろう?」
大臣達や貴族達は、興味津々といった面持ちで首を縦にブンブン振りながら頷いた。
そして、翌日の〝ソフィアの魔法訓練見学ツアー〟が決まり、オリビアの元へ早馬で知らされたのだった。
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翌日、午前の勉強を終え、昼食を済ませたソフィアは馬車で修練場に向かいながら、アンナに説教されていた。
本来ならソフィアの乗る馬車は聖女専用で、護衛剣士であるオリビア以外は同乗できないのだが、アンナは『どうしてもソフィア様に伝えたい事がある』と、強引に乗り込んだのだった。
「何度も申し上げています様に、ソフィア様は聖女なのですよ? 食後の後片付けはメイド達に任せて下さいませ。彼女達には彼女達の役割があるのですから、その役割を奪う様な事はしないで下さいと、何度も何度も何度も…」
「あっ! 修練場に着きましたので、その話の続きは帰りにでも!」
修練場に着く寸前、馬車から飛び降りるソフィア。
そのままアンナから逃げる様に、ダッシュで修練場へと入っていった。
「ソフィア様、逞しくなったなぁ…」
オリビアの感想に、アンナは小さく溜め息を吐きつつ項垂れる。
「逞しくなったと言うより、逃げ上手になったのではありませんか…? 気の小ささや臆病さが消えて、図太くなられたと思うんですけど…?」
程無く馬車は修練場に到着する。
オリビアとアンナは苦笑しつつ馬車を降り、ソフィアの後を追って中へと入っていく。
大岩の周りに着くと、国王を初めとした聖クレア王国の大臣や貴族達が勢揃いしていた。
「ん…? ソフィア様は…?」
「おかしいな… 私達が追い越した筈はないし…」
オリビアとアンナがソフィアを探すが、何処にも見当たらない。
とりあえずオリビアは国王にソフィアの到着を報告する。
その後しばらく待つが、ソフィアは現れない。
アンナは少し考え、ハッとしてオリビアに聞く。
「オリビア様… 本日の〝魔法訓練見学ツアー〟ですが、ソフィア様には…?」
アンナが聞くと、オリビアの顔から血の気が引いていく。
「わ… 忘れてた… かも…?」
「何をやってるんですか!? 確かにソフィア様から〝気の小ささや臆病さ〟は消えましたけど、それは魔物や魔獣に対してだけかも知れないんですよ!?(私達に対してもですけど…)」
アンナが溜め息混じりにコソッと付け足した言葉は小さく、すぐ側に居るオリビアにも聞き取れなかった。
…が、その表情からアンナが最近のソフィアに対し、ある種の不満と困惑を抱いている事は理解できた。
「す… すまない… でも、まさかソフィア様が姿を暗ますとは思わなかったし…」
アンナは盛大に溜め息を吐き、国王や大臣、貴族達に向き直る。
「皆様… 恐らくですが、ソフィア様は以前催された〝歓迎の宴〟での記憶が甦り、身分の高い皆様に臆してしまったと思われます。大変申し訳ございませんが、ソフィア様の捜索をお願いしても宜しいでしょうか?」
深々と頭を下げるアンナの気苦労に同情した面々は、苦笑しつつソフィア捜索を開始したのだった。
ソフィアの溶矢が当たった大岩が青白く輝いたのは、温度が15000℃を超えている事を意味します。




