第34話 対トロール戦、そして…
トロールの群れに対峙すべく、王宮からは近衛兵を中心とした討伐隊が組織された。
また、王都を中心に活動している冒険者やハンター達も義勇兵として参加している。
ソフィアも討伐隊に参加する事になっていたが、それは飽くまでも形式上に過ぎなかった。
「形式上の参加ですか?」
「どの程度の規模かは判りませんが、トロールの群れ程度なら近衛兵と義勇兵だけでも大丈夫でしょう。仮に危なくなったとしても、私が出張れば問題ありません… と言うのは建前で、ソフィア様は魔物と対峙するのは初めてですので、魔物に慣れて頂く為の参加と言う理由です」
ソフィアが首を傾げながら聞くと、オリビアは当然と言った感じで答える。
「だから形式上なんですね? ちょっと残念な気もしますが…」
ソフィアの〝残念〟との言葉に、オリビアは訝しげな表情を浮かべる。
「それにしてもオーリャさん、あれから表情が豊かになりましたね」
オリビアは先日の〝オリビアはソフィアを愛するレズビアン説〟事件以来、無表情でいる事を止めてしまっていた。
「そりゃまぁ… ソフィア様に無表情は無意味ですからね…」
オリビアの言う通り、表情を出さなくてもソフィアには簡単に読まれてしまうので、無表情でいる事は無意味である。
同様に、ソフィアに仕えるメイド達もソフィアに表情を読まれない様、常に笑顔でいたのだが…
オリビアと同様に無意味である事を悟り、無理に笑顔を作らなくなっていた。
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トロールの群れを迎え撃つ為、王都から数㎞離れた開けた場所を選び、オリビアを中心に近衛兵達が迎撃態勢を取る。
ソフィアはオリビアの隣に立っているが、戦闘が始まっても動かない予定になっている。
勿論、ソフィアの護衛たるオリビアも動かない。
オリビアは後方から戦況を把握し、指示を出す予定である。
「トロールの群れを視認! 間も無く丘を越え、此方に向かってくると思われます!」
物見櫓に登った見張りが声を張り上げる。
「よし! 弓隊、構えろ! 合図と共に一斉射撃! 白兵距離ギリギリまで撃ち続けろ! 良いな!」
「「「「はっ!!!!」」」」
オリビアが叫び、弓隊が応える。
そうしている間にもトロールの群れは少しずつ近付いてくる。
そして…
「放てぇええええっ!!!!」
オリビアの合図で一斉に矢が放たれる。
撃ち終えた射手は次の矢を番え、次々と撃ち出していく。
「凄いですね~… あれだけ矢を撃ち込まれてるのに、あんまり怯んでる様に見えませんね… 突っ込んで来ますよ?」
トロールは矢が突き刺さると多少よろめくが、矢を引き抜くと構わず迫ってくる。
「ちっ! さすがにトロールは回復が早いな… やっぱり首を斬り飛ばすか、心臓を貫かなきゃダメってか!?」
オリビアはギリッと歯噛みする。
弓隊の面々は、攻撃が全く効いていないトロールにオロオロしている。
「仕方無い、弓隊は退れ! 近接戦部隊、前へ!」
オリビアの指示で、待機していた剣や槍を持った部隊が弓隊と入れ替わる。
「槍の部隊が前だ! トロールを突き刺して動きを止めろ! 剣の部隊は動きの止まったトロールの首を跳ね飛ばせ! 魔導師部隊は牽制だ! トロール達の上空で爆発系の魔法をブッ放せ! 槍部隊がトロールを突き刺す隙を作れ!」
オリビアが的確に指示を出す。
充分に訓練された近衛兵達は、指示に従いトロールの群れに向かっていく。
「ホント、私の参加は形式上でしたね… 本音を言えば、少しは私が活躍する場面も用意して欲しかったですけど…」
ソフィアは少し意地の悪そうな目でオリビアを見ながら言う。
「そんな目で見ないで下さいよ… トロール程度でソフィア様の手を煩わせるワケには…」
言われてオリビアは軽く嘆息する。
「でしょうね♪ でも、さすがにアレは私の出番だと思いますよ?」
言ってソフィアが指差す先をオリビアが見ると…
「あ… あれは… キング・トロール!?」
目を見開くオリビア。
トロール達が越えてきた丘の向こうから、一際大きなトロールが姿を現す。
他のトロールと比べても、2倍近い大きさである。
「なるほど… これだけのトロールが統率の取れた行動をしてたのは、キング・トロールが率いてたからか…」
さすがのオリビアも青褪める。
「オリビア様! 物見櫓の兵からの報告です! あの巨大なトロールが近付いてきてから、少しずつですが近接部隊が押され始めてるとの事です!」
「厄介なヤツが出てきたモンだな… さすがにアレを倒すのは近衛兵でも厳しいか…」
オリビアの言葉を聞いたソフィアは、ニッコリ笑って話し掛ける。
「じゃ、ここは私に任せて貰いましょうか? あ、安心して下さいね? 私が倒すのは、あの大きなとろーるだけですから。他の皆さんの活躍の場を奪う気は全くありませんので♪」
言ってソフィアはキング・トロールを指差し…
「風刃!」
ソフィアの力ある言葉と共に、不可視の刃がキング・トロールに向かっていく。
そして次の瞬間、キング・トロールの首は風の刃に斬り飛ばされたのだった。
キング・トロールを失ったトロールの群れは脆く、鍛え上げられた近衛兵達の敵ではなかった。
オリビアが最初に指示した通り、魔導師部隊が牽制の魔法でトロールの気を引き、槍部隊がトロールを突き刺す。
そして動きの止まったトロールの首を、剣部隊は容赦なく斬り飛ばしていった。
義勇兵として参加している冒険者やハンター達も、次々とトロールを仕留めていく。
そうして戦闘が始まってから数時間後…
聖クレア王国に向かっていたトロールの群れは、完全に全滅したのだった。
「それじゃオーリャさん、後始末は任せますね♪ 私は先に戻って、皆さんの為に温かい食事を用意して貰いますので♡」
そう言って帰っていくソフィアを、全ての兵士達が敬礼で見送るのだった。
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一足早く聖女邸に戻ったソフィアは、トロールの討伐に参加した兵達の為の食事の準備をアンナに頼む。
「畏まりました。ところでソフィア様、今回の討伐に参加したのは何人程でいらっしゃいますか? 人数次第では聖女邸ではなく、王宮の食堂を使わせて頂いた方が宜しいかと…」
アンナに言われ、食堂を見渡すソフィア。
「う~ん… ここだと確かに狭いでしょうねぇ… このえへいの皆さんだけなら入れると思いますけど… それに、王宮の食堂を使わせて貰えるとしても、ぎゆうへいの皆さんは王宮に入っても良いんでしょうか?」
ソフィアの懸念は当然の事だった。
元から王宮に勤めている近衛兵はともかく、平民である義勇兵が王宮に入れるとは思えなかった。
「そうですねぇ… なら、聖女邸の庭で食事会を開催しては如何でしょう? 人数次第では近衛兵は食堂、義勇兵は庭に分かれるかも知れませんが、幸いな事に食堂の外が庭になっております。食堂の窓を開放すれば、互いのコミュニケーションも取り易いでしょう」
アンナの提案に、ソフィアは満面の笑顔になる。
「それ、良いですねぇ♡ 私からも提案なんですけど、りっしょくけいしきってのにしませんか? そうすれば、私も食堂と庭を行き来し易いですし♪」
ソフィアの意見にアンナはニッコリと微笑み…
「畏まりました。では、その様に手配致しましょう。それでは、私は食事の準備に掛からせて頂きます」
そう言ってアンナは食堂を後にする。
ソフィアも食堂を出て行き、後にアンナを呆れさせるのだった。
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