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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第30話 新たなメイド、ナンシー

 国王(エドワード)は武闘大会が終わった(あと)、急いで王宮の聖女邸を(おとず)れてオリビアから事の(てん)(まつ)を聞いた。


「では、何も聞き出せないまま魔王崇拝者(デモニスト)は死んでしまったのか…?」


 国王(エドワード)(あき)れた()調(ちょう)で言うと、オリビアは(ちぢ)こまって(うな)()れる。

 ちなみにソフィアは(いま)だに失神したまま、部屋でベッドに横たわっている。


「まぁ、不可(ふか)(こう)(りょく)と言いますか、ソフィア様の言葉に思わず剣を取り落としちゃったんですよね… で、運が悪かったとでも言うんでしょうか、その剣が魔王崇拝者(デモニスト)(けい)(どう)(みゃく)を切ってしまいまして…」


「それで魔王崇拝者(デモニスト)が死んでしまったと言う事か…」


 国王(エドワード)は脱力し、ソファーに身を(しず)めた。


「それは仕方無い… と言って良いかは分かりませんが、不幸な事故だと(あきら)めるしかありませんね… それにしても、ソフィア様は随分(ずいぶん)と成長なさった様ですね。ほんの1ヶ月程の(あいだ)に何が…?」


 今回の顛末(てんまつ)の感想を()べるフランク・フォン・バドルス侯爵。

 彼は武闘大会を観戦した(あと)国王(エドワード)と共に聖女邸を(おとず)れていた。

 彼の知っているソフィアは(おく)(びょう)で気が弱く、ちょっとした事で失神する少女だった。

 しかし、闘技場で見たソフィアは(りん)としており、とてもフランクの知るソフィアと同一人物とは思えなかった。


「まぁ、(たい)した事じゃないんどけどさ… 武闘大会の初日の観戦を中止して、街で治療(ほう)()をして(もら)ったんだよね… 怪我の治療で血を見る事に慣れたのが切っ掛けで変わられたんじゃないかな…?」


「それだけの事で? いや… まだソフィア様は(おさな)(ゆえ)、小さな事で大きく変わられる事も考えられますな…」


 バドルス侯爵は考えつつも納得する。


「ところでソフィア様は何処(どこ)に?」


 キョロキョロと(あた)りを見回すバドルス侯爵。


「そう言えば、リビング(ここ)に来た時から見当たらんが…? 魔王崇拝者(デモニスト)(とら)えてくれた礼を()べようと思って来たんじゃが… オリビア、ソフィア様は()()()るんじゃ?」


 国王(エドワード)も同じ様に(あた)りを見回しながら質問する。


「…失神なさって部屋のベッドで寝ておられますよ。今回の出来事では、目にした血の量が違いましたからねぇ… (けい)(どう)(みゃく)が切れた場合の出血量は、先日の治療で治した怪我での出血量とは(くら)べ物にならないので… 成長したと言っても、まだソフィア様にはキツかったって事でしょうね…」


「それは…」


「仕方無いでしょうね…」


 オリビアの話を聞いた国王(エドワード)とバドルス侯爵は、ソファーに身を(しず)めながら(つぶや)いた。





 ─────────────────





「アンナさん。オリビア様の話だと、ソフィア様は人が死ぬのを()の当たりにされたんですよね?」


 寝ているソフィアと世話をするメイド達を(こう)()(なが)めながら、シンディがアンナに話し掛ける。


「そうね… 落とした剣が(けい)(どう)(みゃく)を切ったって事だから、相当な血を見たでしょうしね…」


 シンディは自分の首筋(くびすじ)を押さえて(あお)()める。


「ここの血管が切れたら、そんなに血が出るんですか…?」


「出ると言うより()()()()わね… そして脳への(けつ)(りゅう)(いっ)()に減り、意識を失う事になる。意識を失う前に出血を(おさ)えられなければ命取りね。(そば)()る誰かが出血を(おさ)えてくれれば助かるかも知れないけど… ソフィア様もオリビア様も、予想外の出来事に行動が遅れちゃったみたいなのよ…」


 話を聞き、更に(あお)()めるシンディ。

 ソフィアの世話をしていたメイド達にもアンナの話は聞こえており、思わず(くび)(すじ)を押さえていた。

 そんな中、1人のメイドがアンナに歩み寄る。


「アンナさん、今の話を聞くとソフィアは… じゃなくて、ソフィア様は大量の血を見たって事よね… ですよね? 私、ソフィア様は(すご)く気が小さい、(おく)(びょう)過ぎるって聞いたんです… そんなソフィアが… ソフィア様が大量の血を見て、大丈夫なの… なんですか?」


 そのメイドは言葉(づか)いに慣れていないのか、時々言い直しながらチラチラと寝ているソフィアを見つつ質問する。


貴女(あなた)、見ない顔ね…? いえ、最近(はん)()(がい)で見た様な…?」


 (あご)に手をやり、そのメイドを見つめるアンナ。


(はん)()(がい)の奴隷商でソフィアに… ソフィア様に()()められたナンシーと言います。あの(あと)、マッカーシー大司教様にお願いしてソフィアの… ソフィア様のメイドとして(やと)って(もら)ったんです」


「あぁ、あの時の… ソフィア様とは色々あったみたいだけど、ソフィア様は貴女(あなた)に会えて(うれ)しそうだったわね」


 アンナから()()()()()と言われ、ばつが悪そうな顔になるナンシー。


「あはは… 実は、ソフィア……様が奴隷商に()た頃に、()()ってビンタしちゃったんですよね… (あと)でラナさんって人から(すじ)(ちが)いだって言われましたけど… 確かにソフィアの国(ヴァネル王国)私の国(ランドール王国)に攻め込んだ事は事実ですけど、私の両親が死んだのはソフィア様の()()じゃないですモンね… でも、そんな私をソフィアは… ソフィア様は許してくれたんです… 自分の両親も戦争が原因で死んでるから、私の気持ちが(わか)るからって… それに、自分を(なぐ)った私を抱き()めて再会を(よろこ)んでくれて… (すご)(うれ)しかった… だから私、決めたんです。少しでもソフィアの… ソフィア様の(ちから)になるって…」


 ナンシーは涙を流しながら話した。

 そんな彼女の肩をポンポンと(たた)き、アンナは優しく話し掛ける。


「なら、貴女(あなた)はシンディと一緒にソフィア様の(そっ)(きん)として(つか)えなさい。ただ、言葉(づか)いは(さっ)(きゅう)に直しなさいね? ソフィア様や私達メイドはともかく、オリビア様が()(のが)すとは思えないから…」


「オリビア…? それ、誰ですか?」


 ナンシーは涙を(ぬぐ)いながらアンナに聞く。

 (セント)クレア王国内では有名なオリビアも、出身国の違うナンシーが知らないのも無理はなかった。


「確か貴女(あなた)、自分の国はランドール王国だって言ってたわね。それなら知らなくても当然かもね… オリビア様はこの国、(セント)クレア王国の公爵令嬢なの。セルゲイ・フォン・マクレール公爵の3女で、幼い頃から聖女の護衛剣士になるのが夢だったのよ… 聖女の能力に目覚められたソフィア様を(すう)(はい)してらっしゃってね…」


「はぁ……」


 公爵令嬢と聞いて(こわ)()るものの、続く話に困惑した表情を浮かべるナンシー。


「こんな事を言うのは気が引けるけど… オリビア様はソフィア様の事になると、(よく)(せい)()かなくなるのよね… この(あいだ)貴女(あなた)がソフィア様をビンタしたって聞こえた時、貴女(あなた)()ろうとしてたみたいだし…」


 オリビアが自分を斬ろうとしてたと聞き、(あお)()めて(あと)退(ずさ)るナンシー。


「さすがに、それは私かマッカーシー大司教様が止めるけどね… ただ、私もマッカーシー大司教様も()なかった場合、誰もオリビア様の暴走を止められないからねぇ…」


「アンナ殿、私を何だと思ってんだよ…?」


 いつの間にか現れたオリビアが、アンナを()()()()(にら)む。

 2人はソフィアの様子を見ながら何やら話し込む。


(この人がオリビア様… 確か奴隷商でソフィアに会った時、大司教様と一緒に()たっけ… (こわ)そうに見えるけど、ホントは(やさ)しい人なんじゃないかな…? 失神してるソフィアが心配なのか、やたらと気にしてチラチラ見てるし…)


 自分に向けられた視線に気付いたオリビアが、ナンシーに歩み寄る。


「お前、確か奴隷商でソフィア様に抱き付かれてた…?」


「は… はいっ! マッカーシー大司教様に頼んで、ソフィア… 様のメイドとして雇って貰いました、ナンシーと()()()()!」


 (あわ)てて(なま)ってしまうナンシー。


「ぶっ!」


 ナンシーが(なま)ってしまった事に()()()()()()()()オリビア。

 オリビアの(うし)ろでは、アンナとシンディが肩を震わせて笑いを(こら)えていた。


「そ… そんなに笑わなくても…」


 恥ずかしそうに(こう)()するナンシー。

 そんな彼女の(うし)ろを(だま)って指差すオリビア。

 ナンシーが振り返ると、他のメイド達もクスクス笑っていた。


「なんなのよ… ちょっと(あわ)てて(なま)っちゃっただけじゃない…」


 (ふく)れながらも赤くなるナンシー。

 彼女にとって、少々気恥(きは)ずかしいメイド初日となったのだった。

 そんな中、ようやくソフィアが目を覚ます。

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