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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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20/92

第19話 気になるのは仕方無いけど、問い詰めるのは程々に

 暴走しそうになったオリビアを(おさ)える事で負傷した全員を、ソフィアが治したのは勿論だが…

 オリビアだけは(まわ)りの制止で(かん)()させなかった。

 あまりにも大勢が彼女にのし掛かった事で(あっ)()寸前になった為、数ヶ所の内臓破裂は治したが…

 骨折は折れた骨を元の位置に戻し、固定するに(とど)めてある。


「なんで(かん)()させてくれないんだよ…? 治してくれたら、ハルバートの奴隷商人をぶった()ってやるつもりだったのに…」


「だからですよ… 奴隷商人は治外法権で守られてるんですよ? オリビア様が奴隷商人を()ったら、犯罪者として(とら)らわれてしまいます… そうなると、誰がソフィア様を護衛するんですか?」


 アンナが言うと、オリビアはムスッとして言い返す。


「…骨折も治してくれないと、ソフィア様を護衛できないじゃないか?」


「骨折してるのは腕だけですよね? (あし)が無事なら一緒に歩く事は可能です。剣を腰に()して歩くだけでも、充分な威圧効果があります。腕の骨折を固定している()()や包帯は、(そで)の長い服で隠しておけば大丈夫です」


 淡々(たんたん)と語るアンナに、オリビアは肩を落として()(いき)()くしかなかった。

 その頃、ソフィアは…





 ─────────────────





「そこは違います。右上に向かってハネ上げるんですよ」


「こ… こうですか?」


「そうです♪ そうする事で、次の文字へスムーズに(つな)がるんですよ♪」


 文字の書き方… と言うより、単語や文章の書き方をシンディから教わっていた。

 聖女の能力に目覚めた事で、文字や文章を読める様になったソフィアだったが、書く方はまだまだだった。

 しかし、(つら)いとは全く思わず、書き方を覚えていく事を楽しんでいた。

 普通の子供なら、幼少期は本を読み聞かせて貰い、その()(てい)で簡単な単語や文章なら読める様になる。

 5歳前後になると親が読み書きを教え、1人で本を読める様になっていく。

 10歳になったら街の子供は学校に通って勉強し、学校の無い農村部の子供は教会で読み書きや計算を習う。

 ソフィアは8歳なので学校に通える年齢ではなかったが、今まで何の知識も持たなかった為、教わる事の全てが()(あたら)しくて面白かった。


「ソフィア様、楽しそうですね♪」


「今まで何も知らなかったらしいわね。だから、()()()()()()()()()()んでしょうね♪」


「でも、ソフィア様が楽しそうだと、私達まで楽しくなりますよね♪」


「ソフィア様の笑顔が()(テキ)なんですよぉ♪ あの(くっ)(たく)の無い笑顔がぁ♪」


 ソフィアが勉強する様子を(とお)()きに見ながら、メイドの少女達が雑談に花を咲かせる。


君達(きみたち)、そろそろ昼食の準備を。ソフィア様を見ていたい気持ちは、よ~く(わか)りますがね♪」


 司祭の1人が話し掛けると、ハッとしたメイド達は急いで厨房へと向かうのだった。

 そんなやり取りが(おこな)われている事にも気付かず、ソフィアは文字を書く練習に(ぼっ)(とう)していた。





 ─────────────────





「…やっぱり骨折を治して(もら)えないか? この状態だと、食事を()る事も出来ないんだが…」


 手首の少し上から肩の付け根までを()()と包帯で固定され、(ひじ)を曲げる事のできないオリビアがアンナに(うった)える。


「それは… ()(かた)ありませんね… ソフィア様に治して(いただ)きましょう。食事が終わったら、また骨を折って固定しましょう」


「それは(きゃっ)()っ!」


 本気で言ってるとしか思えないアンナの台詞(セリフ)を、オリビアは全力で(きょ)()する。


「それなら、ハルバートの奴隷商人を(がい)する事を(あきら)めて下さい。()(もの)を害する事は、オリビア様が罪に問われる事になり、ソフィア様にとっても望ましい事ではありませんので。それに、奴隷商には一定の需要があります。ある意味では奴隷商に拾われ、そこから買われる事で命を救われる者も居るのです。奴隷商人を殺す事は、そこに居る奴隷達の命をも奪う事になりかねません」


 やはり淡々(たんたん)と語るアンナの意見は正しく、オリビアは(くや)しい気持ちを()し殺して了承するしかなかった。


(今は()(まん)するしかない… だが、ソフィア様を(ぎゃく)(たい)した事は絶対に(ゆる)さん! いつか必ず()(くび)叩き落としてくれる!)


 全身をワナワナと(ふる)わせるオリビアを見て、アンナは彼女の肩にソッと手を置く。


「気持ちは理解します… 私も同じ気持ちですから… ですが、今は(こら)えて下さい… その内、(わな)()めてブチ殺してあげましょう♪」


(この人… 本当はメイドなんかじゃなくて殺し屋なんじゃ…?)


 アンナの冷たい笑顔と怒りに燃える目を見て、(せん)(りつ)するオリビアだった。





 ─────────────────





「オーリャさん、アンナさんと何かあったんですか?」


 部屋に戻ると、ソフィアがオリビアに聞いてくる。


「えっ? いえ、その… ちょっと話をしてただけですよ…」


 オリビアは言葉を(にご)したが、人を観察する事に()けているソフィアの目を誤魔化せるとは思えなかった。


「そうなんですか? なんだかアンナさんに(おび)えてる様に見えましたけど…」


(やっぱり誤魔化せないか…)


 思わずオリビアは苦笑する。


「ソフィア様には(かな)いませんね… (おっしゃ)る通りですよ」


 肩を(すく)め、オリビアはアンナとのやり取りを話して聞かせる。

 オリビアだけでなく、アンナまでもが奴隷商人を殺害しようとしてる事に、ソフィアは表情を曇らせる。


「何故、そんな悲しそうな顔をなさるんです? ハルバートの奴隷商人は、ソフィア様を(ぎゃく)(たい)していたんでしょう? (にく)いとは思わないんですか?」


 ソフィアはフルフルと首を振る。


(にく)くないと言えば(ウソ)になります… 言われた事をするのが遅かったり失敗したりすると、(なぐ)られたり()られたり… でも、それは私の物覚えが悪かったり、言われた事と違う事をしたりとドジだったからで…」


「だからって、(なぐ)()るするのは違うでしょう! いくら奴隷商の中が治外法権だからって、やって()い事と悪い事があります! (ぎゃく)(たい)するのは絶対に間違ってます!」


 ソフィアの身体(からだ)を抱き()め、涙を流しながら叫ぶオリビア。

 ソフィアが(ぎゃく)(たい)されていた事も悲しかったが、今この時も()()かの奴隷商で誰かが(ぎゃく)(たい)されているかも知れない。

 そう思うと、怒りよりも悲しみが(あふ)れてくるのだった。


「はい、そこまで! いつまでソフィア様に抱き付いているんですか!? そんな(うらや)ま… げふんげふんっ! ()(らち)()()は、許されませんよ!?」


 いつの間にか現れたシンディが、オリビアをソフィアから引き()がす。

 突然の事に(ぼう)(ぜん)とするオリビアだったが、(われ)に返るとグワシッとシンディの首根っこを(つか)んで部屋の(すみ)へと連れて行く。


「ななななな、何ですかっ!? オリビア様!? まさか私を()(れい)()ちにっ!?」


「そんなワケないだろっ! 聞きたい事があるんだよ! 素直に答えたら殺さないから安心しろ!」


 とても安心させられない言葉を(はっ)するオリビア。


「わわわわわ、分かりました! 何でも答えますから殺さないで下さい!」


 ()()一言(ひとこと)にビビりまくるシンディ。

 ソフィアに抱き付くオリビアに(しっ)()し、思わず引き()がした事を(こう)(かい)していた。


「よ~し、では聞く。お前はアンナ殿の正体を知っているか? バドルス侯爵家にメイドとして入った頃から彼女の事は見ているだろう? 彼女の(はな)(さっ)()(ただ)(もの)ではない(はず)だ。死にたくなければ()(なお)に答えろ!」


 シンディの頸動(けいどう)(みゃく)に小型のナイフを()て、(さっ)()()ちた目で(にら)むオリビア。


「ししししし、知りません! 私にとってアンナさんはメイド長なだけなんです! 信じて下さい、本当です!」


 涙をダバダバ流し、全身をガクガク(ふる)わせながら言うシンディ。

 ソフィアは2人の様子を見てクローゼットへ入り、やがて何かを持って出てくる。

 そしてオリビアの肩をポンポンと(たた)き、疲れた様に言うのだった。


「オーリャさん、そのぐらいにしておいて下さい… シンディさん、()らしちゃってます…」


 ソフィアの手には、()(あた)しいパンツが(にぎ)られていた…

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