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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第15話 思っていたのと違いました

 ソフィアと王侯(おうこう)貴族達との歓談は楽し()に進み、そのまま会食へと進んだ。

 出された食事はバドルス侯爵邸や大聖堂で出された物と似た感じだったので、ソフィアは迷う事もなく食べながら会話を楽しむ事ができている。

 …と、フランクやマッカーシー大司教は思っていた。

 時折(ときおり)ソフィアの方を見ていたルイーズが、ある事に気付く。

 ソフィアの料理が減っていないのだ。

 気になったルイーズが注意して見ていると、ソフィアの持つナイフやフォーク、スプーンは、何も無い空間をウロウロし、時々ソフィアの口に入っていた。

 当然、スプーンは何も(すく)っておらず、フォークは何も()していないまま…

 貴族達の、自分の子供達に接する様な話し方に打ち解けていたソフィアだったが、会食になると緊張がぶり返したのだった。

 貴族の食事はマナーに(うるさ)い。

 バドルス侯爵夫妻の様に、ソフィアの(しゅつ)()(くわ)しく知っている者の前ならともかく、初めて会った貴族達の前では()(しゅく)してしまうのだった。

 自身の食事マナーが気になって仕方無いソフィアは、料理に全く手を付けられないでいた。


(料理長に言って、ソフィア様の部屋に食事を運ばせた方が良さそうですわね…)


 ルイーズは近くに()(きゅう)()()(くば)せし、自身の(もと)()させるとソッと耳打ちする。


(会食が終わって()が解散したら、ソフィア様の部屋に食事を運ばせて下さいな。緊張なさって、全く食べていらっしゃらない様なので…)


 言われて給仕の女性はソフィアの方を見て(うなず)く。


(承知(いた)しました。間も無く会食は終了となります。他の人に見られない様、先に運んでおきましょう)


 給仕の女性は自然な動きで姿を消し、料理長に伝えてソフィアの為に(あたた)かい食事を部屋に運ばせた。

 (ほど)()くして会食は終了し、貴族達は(おの)(おの)の王都邸へと帰っていった。

 国王はソフィアに(ねぎら)いの言葉を掛けて自室へと向かい、ソフィアはバドルス侯爵夫妻と共に王宮内に用意された部屋へと向かった。


「お疲れ様でした、ソフィア様。ルイーズから聞きましたが、何も食べられなかったそうですね?」


「はい… 緊張と、私の()()()が大丈夫なのか気になって…」


 ガックリと肩を落とし、足を引き()る様に歩くソフィアは、誰が見ても疲労(こん)(ぱい)といった様子だった。


「まぁ、周(まわ)が知らない人ばかりだと疲れますわよねぇ… 給仕に言って食事を用意させてますから、部屋で()()ねなく食べて下さいな♪」


 ルイーズの言葉に、パァッと表情が明るくなるソフィアであった。





 ─────────────────





 部屋で食事を済ませて風呂に入ると、すっかり疲れたソフィアは(はや)(ばや)とベッドに(もぐ)り込んで寝てしまった。


「随分とお疲れの様子で、ベッドに入った()(たん)に寝てしまわれましたわ」


「ソフィア様と話したかったんだけどなぁ…」


「一緒に寝たら… 怒られるわね…」


「明日の朝食まで我慢かぁ…」


 ルイーズの報告に、子供達がブー()れる。

 やれやれといった表情でフランクが話し掛ける。


「これでソフィア様に会えなくなるワケじゃないんだから、今は我慢しなさい。王都に()(あいだ)に限定されるが、私達は他の貴族に比べて会う機会も多い。何故なら、ソフィア様を引き取った時点で私が彼女の後見人(こうけんにん)だからだ。だからと言って、いつでも自由に会えるワケでもないがな」


 フランクの話に、子供達は(いっ)(ぴん)(いっ)(しょう)する。

 コロコロ変わる表情を見て、吹き出しそうになるのをフランクは(こら)えていた。


(まゆ)をしかめたり(ほほ)()んだり… 貴方達、ソフィア様と出会ってから表情が豊かになったわね♪」


 ルイーズの言葉に思う(ところ)があったのか、思わずフランクも(うなず)いた。

 貴族の子供は()てして子供らしさが少ない(けい)(こう)にある。

 (おさな)い頃から(れい)()()(ほう)を教え込まれ、大人達に()じって社交を学ぶ。

 男の子は()(とく)()いだり、家督を継いだ者を補佐、あるいは新たに家を(おこ)す為に様々な事を学ぶ。

 女の子は他家(たけ)(とつ)ぐ為、礼儀作法の他に()(きん)()りも学ぶ。

 その様に勉強漬け、社交漬けの毎日を送る貴族の()(じょ)は、誰もが()()か大人びていた。

 だが、ソフィアと出会ってからのエリック、メアリー、フィリップの3人は、子供らしい表情を見せる事が多くなっていた。


(これも聖女の能力の一端(いったん)なんだろうか…? ソフィア様と出会う前と今とでは、子供達は別人の様に表情が豊かになったからな… いや、出会ったのは能力に目覚める前だったし、その時点で3人は自分の専属メイドにと希望していたな… もしかしたら聖女(うん)(ぬん)は関係無く、ソフィア様には人を()き付ける何かがあるのかも知れないな…)


 ソフィアと出会う前の3人は、日々の勉強に疲れていたのか(ぶっ)(ちょう)(づら)の時が多かった。

 そんな3人がソフィアを(ひと)()見た時から彼女を専属メイドにと望み、(ぶっ)(ちょう)(づら)をする事が無くなっていった。

 ただ()()(れい)になったソフィアを見ただけで、普段から清潔な貴族の子女を見慣れている子供達の興味を引くとは思えない。


(私自身、初めてソフィア様を見た時に不思議な感じがすると思ったからな… 子供達も、何かを感じたのかな?)


 翌日は国王の前でソフィアが魔法を披露する事になっている。

 彼女の魔法には自分達も驚いたが、国王も同じ様に驚くだろうと思うと、今から楽しみで仕方無いフランクだった。





 ─────────────────





 朝になり、朝食の席でエリック、メアリー、フィリップの3人はご機嫌だった。

 ソフィアも(とし)の近い3人が近くに居る事で緊張が(ほぐ)れ、夕食の時と違って普通に食べていた。

 前日の歓談や会食と違い、国王とその家族、バドルス侯爵一家、マッカーシー大司教だけが同席しているのだから、ソフィアとしても気がラクだった。

 朝食が終わると一同は馬車に(ぶん)(じょう)し、大聖堂近くの修練場へと移動した。

 修練場に着くと、ソフィアが驚きの声をあげる。


「えっ? えっ!? 中央の岩… 私が(こわ)しちゃったんじゃ…?」


 そんなソフィアの肩をポンポンと叩き、マッカーシー大司教がにこやかに話し掛ける。


「気にする事はありません。岩の(ひと)つや(ふた)つ、いくらでも用意(いた)しますぞ?」


 ソフィアが岩を破壊した(あと)、大聖堂に(つと)める司祭や司教が修練場の外にある岩から丁度良い物を選び、集団魔法で修練場内に運び込んだのだ。

 先日のソフィアの魔法の威力を見ていた彼等は、彼女が破壊した岩より(ふた)(まわ)り大きく(がん)(じょう)そうな岩を選んでいた。

 その事を聞かされたソフィアは、(とお)()きに様子を(なが)めている司祭や司教に(へい)(しん)(てい)(とう)して(あやま)った。


「ご… ごめんなさい! ごめんなさいっ! 私が岩を(こわ)しちゃったから…」


(あやま)らなくて()いんですよ? むしろ彼等は喜んでいます。これ程の(ちから)を持った聖女様が現れたんですからね?」


「だ… 大司教様ぁ~…」


 マッカーシー大司教に(なぐさ)められ、涙をダバダバ流すソフィア。


「さぁ、それより(みな)さんが待ち兼ねられてます。岩の事など気にせず、魔法を(はな)って下さい」


 大司教に(うなが)され、ソフィアはコクリと(うなず)く。

 そして…


雷撃(サンダー・ボルト)!」


 どんがらがっしゃぁあああああんっ!!!!


 天から稲妻(イナヅマ)が落ち、岩を粉々に打ち(くだ)く。

 破片が飛び散ったが、幸いにも国王一家やバドルス侯爵一家に怪我人は居なかった。

 フランクとマッカーシー大司教はソフィアの魔法の威力を知っていた為、(あらかじ)め国王一家の近くで防御魔法を展開し、修練場の(すみ)に移動していたのだ。

 ちなみに先日の火球(ファイヤー・ボール)では、比較的岩の近くに()た数人の司祭や司教が軽い(やけ)()()っていた。

 と言っても、一番近くに()た者でさえ、20(メートル)は離れていたのだが…

 その時の経験から、司祭や司教は目標(ターゲット)である岩から最低でも50(メートル)は離れ、念の為に防御魔法を展開していたのだった。

 だが、彼等が展開していたのは(ほとん)どが(ねっ)()(しゃ)(だん)する為の魔法であり、破壊された岩の破片を防御するには少しばかり弱かった。

 その為、数人の司祭や司教が防御魔法を突き抜けた破片で怪我をし、ソフィアは彼等に土下座して(あやま)ったのだった。

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