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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第12話 王宮へ行きましょう

「おはようございます…」


 眠そうに()(こす)りながら食堂に現れるソフィア。


「「「「!!!!!!」」」」


 朝食の準備をしていたメイド達は、彼女の髪を見て(ぜっ)()する。

 ソフィアへのスキンシップという名目の髪()で大会(?)が(もよお)された為か、ソフィアの髪は()(ざん)にもボサボサになっていた。

 湯船の中の土下座で窒息(ちっそく)して気絶した為、充分に(かわ)かせなかったのも原因ではあるが、60人近くが()でまくったのが最大の要因であった。


「あれって… 私達が原因よね…?」


「ど… どうしよう… 大司教様や侯爵様に見られたら…」


「やっぱり、怒られるわよね…」


「でも、ルイーズ様も許可してくれたし…」


 ヒソヒソ話すメイド達。


貴女(あなた)達、そんな所で何を… って、ソフィア様!? その髪は!?」


 厨房から出てきたアンナが驚いてソフィアに駆け寄る。


「ふぇっ? 髪… ですか?」


 ボサボサ髪に気付いていなかったソフィアが自身の髪を(さわ)る。


「わぁ~♪ つい最近までこんな髪だったから、なんだか(なつ)かしいです♪」


 ソフィアは喜んでいるが、アンナは大きな()め息を()く。


「喜ばないで下さい… そんな頭じゃ、王候貴族と会うのに相応(ふさわ)しくありません… そもそも何故、そんな頭に…」


 そこまで言って、(ゆう)()の出来事を思い出すアンナ。


「…あれが原因よね… とにかく霧吹きとブラシを持ってきて! 朝食までに調(ととの)えるわよ!」


 アンナがメイド達に指示し、ソフィアのボサボサ髪を()かしていく。

 ようやく髪が調(ととの)った頃、バドルス侯爵達とマッカーシー大司教が食堂に現れた。

 ソフィアのボサボサ髪を見られずに済んだと、メイド達は胸を()()ろしたのだった。





 ─────────────────





「ソフィア様… 本日は王宮にて、ソフィア様を歓迎する(うたげ)(もよお)されます。夕刻から始まり、(かん)(だん)(のち)(おう)(こう)貴族達との会食です。私やバドルス侯爵殿も同行しますので、お気を確かに(たも)たれます様に…」


 朝食を()りながら、マッカーシー大司教が予定を話し始める。

 できるだけソフィアを緊張させない様にした発言だったのだが…


()()()()()()()…? ()()()()…? ()()()()()…?」


 それ以前に、ソフィアは大司教の言葉を理解していなかった。


「そこから説明しないとダメなんですのね…?」


 思わず(つぶや)くルイーズに、思わずソフィアは土下座していた。


「ご… ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! 私、何も知らないんですっ! 店主様から『奴隷は言われた事だけ(ちゅう)(じつ)にこなせ。何も聞くな、何も知るな。質問する権利など奴隷には無い』って言われてたんですっ! だから…」


 そこまで言った時、ルイーズがソッとソフィアの頭を()でる。


「そんな事を言われてたんですのね? でも、もう気にする事は無いんですよ? ソフィア様は聖女に()られたんですから、奴隷だった頃の習慣なんて忘れて()いんですよ?」


 優しく話し掛けるルイーズに、ソフィアは()(うる)ませながら顔を上げる。


「お… お母さ… いや… ルイーズ様…」


 思わず出した言葉にルイーズは(ほほ)()む。


「あら… 私を母と…? ソフィア様にそう言って(いただ)けるなんて、(うれ)しいですわ♪ ねぇ、フランク♪ ソフィア様を私達の養女に…!」


「いや、それは前例が無いし… さすがに許されないだろう…」


 一瞬だが聖女(ソフィア)から母と呼ばれ、はしゃぐルイーズの無茶振りにフランクがダメ出しをする。

 フランクの言う通り、聖女を養女にするのは前例が無く、周囲が認めるとは思えなかった。


「あら、そうですの? 残念ですわ…」


 心底残念そうにするルイーズ。


「王侯貴族とは… 王族と、その縁戚(えんせき)である公爵、そして貴族達の事です。歓談とは、打ち()けて親しく語り合う事です。会食とは、人が集まって一緒に食事をする事です。今のソフィア様には少々(こく)かと思いますが…」


 マッカーシー大司教が言葉の意味を説明する。

 すると、みるみるソフィアの顔色が悪くなっていく。


「そ… そんな(えら)方達(かたたち)と食事や会話なんて、私に出来るんでしょうか…?」


「私も同席しますから大丈夫ですよ。それに、国王陛下は優しい方ですからね」


 不安そうなソフィアにフランクが話し掛ける。


「こっこっこっこっ、国王陛下ぁあああああっ!? はぅっ…」


「「「「「あ… やっぱり…」」」」」


 前日にフランク達が予想した通りの反応をするソフィアに、全員の声がハモった。


「それにしても、不思議ですね… 大司教様の話を思い出すと、聖女の能力に目覚める時に光に(つつ)まれて… その(さい)に様々な知識も(さず)かるんですよね? 何故、ソフィア様は簡単な言葉を知らなかったんでしょう?」


 メアリーが当然とも思える質問をし、(みな)がハッと気付いて大司教に視線が集まる。


「それは単純です。授かる知識は()()()()()()()()()()なんです。それ以外は、()()()()()()()()()()ですから…」


マッカーシー大司教の説明に、誰もが納得したのだった。





 ─────────────────





 ソフィアが失神から()めたのは、昼食の少し前の事だった。

 昼食を食べながらマッカーシー大司教が話し掛ける。


「ソフィア様… 昼食の(あと)、王宮に向けて出発ですが… 大丈夫ですか?」


「だだだだだ、大丈夫ですぅううう~…」


 そう言うソフィアの手はブルブル震えており…

 皿から(すく)ったスープを飲もうとするも、口に運ぶまでに全てスプーンから(こぼ)れてしまっていた。


「ソフィア様、緊張し過ぎですわ? さっきフランクが同席すると言っておりましたけど、私も同席しますから安心なさって下さいな♪」


「ル… ルイーズ様ぁ~… ありがとうございますぅ~…」


 ルイーズがソフィアの頭をソッと()でると、ソフィアは涙をダバダバ流しながらスープを口に運ぶ。

 その手は先程(さきほど)と違い、全く震えていなかった。


(もしかしたら、ソフィア様はルイーズに母の面影(おもかげ)を見ているのかも知れないな… 私としても、ソフィア様が聖女でさえ無かったら、養女に迎えるのも(やぶさ)かでは無いのだがな…)


 ルイーズや子供達は勿論、フランクもソフィアを気に入っていた。

 聖女でさえ無かったら、本気でソフィアを養女にしても良いと考えていた。


(まぁ、それは魔王を倒してから改めて申し出てみるか… 聖女としての役目が終わった(あと)ならば、誰も文句は言わないだろうしな…)


 そんな事をフランクが考えてる(うち)に食事が終わり、王宮から迎えの馬車がやって来た。

 その(つく)りはやたらと豪奢(ごうしゃ)で、外観(がいかん)は金色・銀色に(いろど)られて(かがや)いていた。

 大聖堂がソフィアを迎える為に寄越(よこ)した()()()()()()も豪華だったが、王宮が用意した馬車は、それを(はる)かに上回る豪華さだった。


「あばばばばばば… こんな豪華な馬車に、私なんかが乗っても()いんでしょうか…?」


 キラキラと輝く馬車に、思わず後退(あとずさ)りするソフィア。


「勿論でございます。こちらの馬車は、聖女様の為に()()()(あつら)えた物でして… 遠慮せず、お乗り下さいませ」


 身体(からだ)の小さなソフィアの為、馬車に乗る為の階段(ステップ)までが用意されていた。


「わ… 私なんかの為に… なんだか申し訳無いです…」


 恐縮しながら馬車に乗り込むソフィア。

 その(あと)に続いて乗り込もうとした大司教を、(ぎょ)(しゃ)(おぼ)しき人物が制止する。


「この馬車は()()()()()にございます。大司教様とバドルス侯爵様御一行には、そちらの馬車に御乗車下さいます(よう)に…」


 御者(ぎょしゃ)らしき人物が言って指し示した馬車も豪華ではあったが、聖女専用の馬車と比べると明らかに()(おと)りしていた。

 勿論、通常の馬車と比べるとフランク達の乗る馬車も充分に豪華である。

 単に聖女専用の馬車が豪華過ぎるだけなのだが…

 フランク達は納得して馬車に乗り込んで(くつろ)ぐが、ソフィアは豪華過ぎる馬車に()(おく)れしてガチガチに緊張していた。


(わ… 私、なんでこんな豪華な馬車に1人で乗ってるんだろ… それに、これから国王陛下に|会うんだよね… こ… 怖いよぉ…)


 そんなソフィアの心配を余所(よそ)に、馬車は王宮に向かって出発したのだった。

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