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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第11話 スキンシップ…?

「「大司教様、一大(いちだい)()です!」」


 食堂に飛び込んできたメイド2人の声がハモる。

 ただならぬ様子を見て、マッカーシー大司教の(のう)()に魔王の姿が浮かんだ。


「ま… まさか… もう魔王が現れたのですか…?」


 その言葉に、食堂に居る全員に緊張が走る。

 (あお)()める者、表情を(こわ)()らせる者、椅子を倒して勢いよく立ち上がる者、反応は様々だった。


「ま… 魔王(まお)ぉおおおおおおおっ!? …はぅっ…」


 ソフィアは緊張を通り越し、恐怖のあまり失神した。


「ソ… ソフィア様! 貴女(あなた)達、それは本当なの!?」


 失神したソフィアを(ささ)えながらアンナが2人のメイドに問い掛ける。

 が…


「え… いえ… 私達、まだ何も言ってませんが…」


「ただ、()()()としか…」


 2人のメイドはポカンとした表情で答える。


「「「「…………………えっ?」」」」


 一同(いちどう)は数秒の沈黙(ちんもく)(あと)()の抜けた声を出した。

 そして、顔をマッカーシー大司教の方に向け、ジト目で見つめる。


「え… いや、その… も、申し訳無い! 私の早とちりだった様で…」


 深々と頭を下げるマッカーシー大司教。

 その姿にフランクは()め息を()きながら話す。


「まぁ、一大事と聞いて魔王を思い浮かべるのも無理はないと思いますが… ただ、魔王が出現する(さい)には何かしら(てん)(ぺん)()()が起きると(ぶん)(けん)で読んだ気が…」


 言われてハッとするマッカーシー大司教。


「そ… そうでした…! 記録では地震で大地が割れて現れたり、(ふん)()する火山のマグマから現れたり、雪山の(おお)雪崩(なだれ)から現れたと…」


 勿論、(げん)()(てん)でその様な災害が起きたとの報告は無い。

 なので、バドルス侯爵とマッカーシー大司教の会話を聞き、一同はホッと胸を()()ろしたのだった。

 ただ1人、失神したままのソフィアを(のぞ)いて。


「あの~… 私達の報告なんですけど…」


「そろそろ話しても(よろ)しいでしょうか…?」


 すっかり忘れられていたメイド2人が、おずおずと手を()げる。


「「「「あ………………」」」」


 2人の事を完全に忘れていた一同は互いに顔を見合わせ、()()()()()()()()に緊張を取り戻した。





 ─────────────────





「では、報告を聞きましょう。()()()とは(なん)でしょう?」


 ソフィアが失神から()め、事情を説明して落ち着かせた大司教が報告を(うなが)す。


「はい、実は王宮から連絡が来まして…」


「明日、聖女(ソフィア)様を王宮に(むか)えて歓迎(かんげい)(うたげ)(もよお)すと…」


 ソフィアを王宮に迎えて歓迎(かんげい)(うたげ)とは、確かに()()()()で一大事であった。

 なにしろ気が小さい事では(てい)(ひょう)のあるソフィアなのだ。

 王宮に招待されると言う事は、当然ながら国王に(えっ)(けん)する事になる。

 その時の反応を思うと、ソフィアの性格を熟知していると言っても()(ごん)ではないバドルス侯爵家の面々は不安で仕方無かった。


「間違い無く、また失神するだろうな…」


「その光景が()に浮かびますわね…」


 フランクとルイーズが互いに(つぶや)く。


「凄く動揺(どうよう)しそうですよね…?」


 フィリップも同意する。


「ソフィア様の事だから… 『こっこっこっこっ、国王陛下ぁあああああっ!?』とか言いそうですねぇ…」


 メアリーは悪ノリしてソフィアの物真似をしてみせる。


「メアリー… ソフィア様の前で失礼だぞ…」


 エリックが(あき)れた様に言うと、メアリーはハッとしてソフィアを見る。

 が、当のソフィアはメイド達の報告を聞いた直後から緊張しまくっていて、メアリーの物真似にも気付いていなかった。


「ソフィア様… 大丈夫ですか? 何でしたら、今日はもう入浴を済ませてお休みになられては…?」


 マッカーシー大司教がソフィアを()(づか)う。


「は… はい、そうします…」


 立ち上がるソフィア。

 だが、その場から動こうとしない。


「ソフィア様、どうされました?」


「お風呂の場所が(わか)りません…」


 その言葉に全員が脱力した。





 ─────────────────





 メイド達は1列に並び、浴場へと向かう。

 先頭はアンナ、続いてシンディ。

 2人の(わき)には丸太の様に(かか)えられたソフィアが居た。


「あの~… またですか…?」


 ソフィアに抵抗はできなかった。

 と言うより、まだまだ栄養失調気味のソフィアでは抵抗するだけの体力が無かった。


「「聖女(ソフィア)様を()(れい)に洗うのが私達の使命ですっ!」」


「それ… 何か違う気がするんですけど…」


 ソフィアの(つぶや)きも(むな)しく、彼女は浴場の脱衣所で(またた)()に全裸にされ、何の抵抗もできないまま大勢のメイド達から全身を洗われまくったのだった。


「宿場町でもそうでしたけど、お風呂って疲れるんですね… 疲れを取る場所だと思ってたんですけど…」


 浴槽に()かりながらソフィアの()らした一言(ひとこと)に、メイド達がギクリとする。

 アンナとシンディは別として、他のメイド達は聖女であるソフィアに()れたい(いっ)(しん)(われ)(さき)にと彼女を洗ったのだが…

 その行動が、聖女(ソフィア)()()()()にさせてしまうかも知れないと思い(いた)った。


「ま… マズくない…?」


「お風呂嫌いで不潔な聖女様なんて、考えられないわよ…?」


「それ… もしかして、私達の所為(せい)になるんでしょうか…?」


 風呂が疲れると感じたソフィアが、風呂嫌いになる事は充分に考えられた。

 その際、理由を聞かれたソフィアが今回の出来事──厳密には宿場町での経験を含む──を伝える事は、想像に(かた)くない。

 そうなれば、原因を作ったメイド(自分)達が(しっ)(せき)されることは(よう)()に想像できた。


「「「「ソフィア様! 申し訳ありませんでゴボボボボ…」」」」


 浴槽で土下座するメイド達は、全員がその身を湯に(しず)めたのだった。

 その光景に()(ぜん)とするソフィア。

 何がなんだか理解できず、オロオロしていると…


「「「「ゴボッ! ゴボボボボッ! ぶはぁっっっっっ!!!!」」」」


 息が続かなくなったのか、ほぼ同時に全員が湯の中から顔を上げる。

 そしてノソノソと浴槽から()い上がり、改めてソフィアに向かって土下座した。

 ようやく我に返ったソフィアが(あわ)てて制止する。


「わわわわわ、なんかに土下座しないで下さいっ! 顔を上げて下さブボボボボボッ!!!!」


 今度は逆にソフィアが土下座し、その身を浴槽に(しず)めたのだった。

 しばらく()っても出てこないソフィアを心配したメイド達が彼女を引き上げると、ソフィアは(ちっ)(そく)して気絶していたのだった。





 ─────────────────





「何をやってるの、貴女(あなた)達は…」


 ルイーズは(あき)れた表情で、気絶したままのソフィアをベッドに寝かせる。


「まあまあルイーズ… メイド(彼女)達の気持ちも、(わか)らんでもないだろう? お前や子供達も、聖女(ソフィア)様に()れたくて仕方無いんじゃないのか?」


 フランクに言われ、ルイーズは赤くなって(うなず)く。


「ま… まぁ、そうですわね… この(つや)やかな髪とかスベスベの肌とか… 少し前まで奴隷だったなんて、とても思えませんもの…」


 言って、ソフィアの髪やパジャマ代わりのドレスから出た腕を()でる。


「「「「ああああぁぁぁ………」」」」


 その様子を見て、自分達もソフィアに()れたいのを隠そうともしないメイド達。


「あら、貴女(あなた)達… 散々お風呂でソフィア様の()(はだ)()れたでしょうに… まだ足りないの?」


 ルイーズに言われてピタリと動きを止めるメイド達。

 だが、全てのメイド達がソフィアに()れたワケではなかった。

 なにしろソフィアの世話役として各貴族から派遣されたメイドは、総勢50名を超えている。

 なので、風呂でソフィアの身体(からだ)を洗った者は限られており、大半の者は()れる事すらできなかった。

 その事を(まと)め役のアンナがルイーズに伝えると、納得したルイーズはコクコクと(うなず)く。


「では、1人ずつ順番にソフィア様の髪を()でる… と言うのは(いか)()かしら? それぐらいなら構いませんでしょう?」


 ニッコリと笑い、フランクとマッカーシー大司教に(たず)ねるルイーズ。


「まぁ、その程度なら… (さいわ)いと言うか、ソフィア様は寝ておられますしな…」


「寝てると言うか、気絶してるんですけどね…」


 マッカーシー大司教が同意し、フランクは疲れた様な表情で肩を(すく)める。


「では、まずは僕からソフィア様の髪を()でさせて貰います! 父上、母上! (よろ)しいですね?」


 いつの間に現れたのか、エリックがズイッと前に出る。


「次は私ね♪ ソフィア様の(つや)やかな髪、(さわ)ってみたかったの♪」


 言いつつエリックの後ろに並ぶメアリー。


「僕もソフィア様に()れた事が無かったから… それに、(すご)()(わい)いんだもん…♪」


 フィリップもメアリーの後ろに並び、目を(かがや)かせていた。

 その後ろに、ゾロゾロとメイド達が列を()していた。


「あらあら…♪ じゃ、少しずつですよ? ソフィア様を起こさない様にね?」


 そうしてソフィアに対するスキンシップ大会(?)が始まったのだった。

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