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元・奴隷の聖女様 ~奴隷に堕ちて3年後… 聖女の力に目覚めましたが、染み付いた奴隷根性が抜けません!~  作者: タイガー大賀


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第9話 聖女らしからぬ聖女

 宿(やど)()での夕食を終え、ソフィアの世話役のシンディと(まと)め役のアンナが彼女を浴場へと連れて行く。


「あ… あの~… お風呂、私1人で入れますけど…?」


「「それは分かってます!」」


 アンナとシンディの声がハモる。


「しかし! 私は世話役として一緒に入るのが(つと)めです!」


 ソフィアの上半身を()(わき)(かか)え、浴場へ向かってスタスタ歩くシンディ。


「そして、それを補佐するのが(まと)め役である私の使命です!」


 同じくソフィアの下半身を()(わき)(かか)え、シンディと同様にスタスタ歩くアンナ。

 2人に運ばれながら、自分が(まる)()にでもなった様な気分のソフィアだった。

 浴場の脱衣室に着くと、2人は素早く衣服を脱ぎ、続いてソフィアの衣服も脱がしていく。


「ちょっ… あのっ… 自分で脱げますから!」


 抵抗しようとするソフィアをシンディが(おさ)え、アンナが()(ぎわ)よく衣服を脱がしていく。


「あ… あの~…」


「「私達に任せて下さいっ!」」


 ソフィアを()(ぱだか)にした2人は、再び彼女を(まる)()の様に浴室へと運ぶ。

 浴室に運ばれたソフィアは2人から全身を洗われ…

 何がなんだか理解できない内に、3人並んで浴槽に()かっていた。


「はぁ~… 旅の疲れが(いや)されますねぇ~…」


 お湯に()かりながら大きく()びをするシンディ。


「ホント… 馬車が豪華過ぎて、かえって肩が()っちゃったわね…」


 コキコキと首を動かし、自分の肩を()むアンナ。


「私… なんだか余計に疲れた気がするんですけど…」


 浴槽の(ふち)に頭を乗せ、グッタリとするソフィア。

 やがて世話役2人は立ち上がり、やはり(まる)()の様にソフィアを脱衣室へと運んでいく。


「あの~…」


「「全て私達に任せて下さいっ!」」


 あれよあれよと言う()に2人から全身を()かれ、髪を乾かして貰い、ワンピース型のパジャマを着せられる。


「この()()()()… 旦那様の屋敷で着ていた物と違いますけど…?」


 (ほと)どドレスに近いワンピースに、ソフィアは(こん)(わく)する。


「「あんな物、聖女様に着せられませんっ!」」


 声をハモらせ、目を血走らせて力説する2人。


「〝あんな物〟って… 私にとっては一生着る事が無いと思》ってた高級品なんですけど…」


()()()って… 3着で小金貨1枚の安物なんだけど…?」


「私達メイドの支給品ですからねぇ…」


 (あき)れるアンナに同意するシンディ。


「しょ… 小金貨1枚で…?」


 ニッコリ笑って(うなず)く2人。

 だが…


「小金貨1枚で3着()()買えないんですか!? 私達が… 奴隷が着ていた()()()()()なんて、銀貨1枚で10着も買えるんですよ!?」


「えっ!? あれ、そんなに安いの…?」


 驚くシンディ。


「そう言えば… あのワンピースって、単に2枚の布を()い合わせただけだったわね… それに、()(かた)も適当だった様な…」


 ソフィアの衣服を思い出しながら冷静に(ぶん)(せき)するアンナ。


「あの服でも着れるだけマシだったんですよ。5歳で奴隷商に売られて、その時の服が着られなくなるまで着てましたから」


 その言葉に驚くシンディ。


「じゃ… あの服って、いつから着てたんですか!? 結構、ボロくなってましたよ!?」


「えぇと… 6歳になって少ししてからですかね? 最初は少し大きかったんです。店主様》が『身体(からだ)が大きくなって、すぐに着られなくなったら勿体無い』って(おっしゃ)いまして…」


 今度はアンナが驚く。


「じゃ、2年近くも同じ服を!? もしかして、着替えも無かったんですか!?」


「いえ、2着持ってました。さすがに洗わないとシラミが()きますし、(にお)ったりもしますから。そんな服を着ていては、買い手も付きませんし」


 淡々(たんたん)と答えるソフィアに、2人は顔を見合わせる。


「奴隷の生活って… 私達には想像もできませんね…」


「本当ね… 私には、とても()えられないかもね…」


 ソフィアの歩んできた(きょう)(ぐう)を思うと、2人には〝絶望〟の言葉しか思い浮かばないのだった。





 ─────────────────





「お父様…? アンナはソフィア様の世話役の(まと)め役なんですよね?」


「あぁ、そうだが… どうかしたのか?」


 メアリーがフランクに聞くと、彼女は考えながら質問を続ける。


「ソフィア様って、そもそも聖女様の世話役… 雑用係として、お父様が連れて来られたんですよね…? でも、そのソフィア様が聖女様だった。アンナはソフィア様とシンディの2人を(まと)める役だったのが、シンディだけになって… (まと)める必要、無くなってませんか?」


 フランクはニッコリ笑って答える。


「メアリー、聖女様に仕えるのはアンナとシンディだけじゃないよ? まぁ、雑用係の予定だった人物が聖女様だった事で、()()()()()()()()()世話役が減った事は確かだがね」


()()()()()()()()()?」


 キョトンとするメアリー。


「聖女様の世話役を出すのは我が家だけじゃないんだ。(セント)クレア王国の上級貴族… 侯爵家と伯爵家は世話役を用意する事になっているんだ。2人か3人ずつね」


「えっ… と… それじゃあ…」


 フランクはコクリと(うなず)く。


「だから大聖堂には、最終的に30人ぐらいは世話役が集まるんじゃないかな? 教会に()りた(しん)(たく)では、聖女様は10歳前後と言われていたんだ。だから世話役の年齢も、聖女様に合わせる事になっている。しかし、全員が10歳前後だと()()(ぎわ)があるかも知れないだろ? だからアンナを(まと)め役に(ばっ)(てき)したんだよ」


 メアリーの頭上に多くの?マークが飛び()う。


「まぁ、王都に… 大聖堂に着いたら(わか)るよ。もう風呂に入って寝なさい」


 言われて浴場へと向かうメアリーの後ろ姿を見ながらフランクは思う。


(12歳の子供に理解できる様に説明するのは、さすがに難しいな… それにしても、ここ何日か驚く事ばかりで私も少し疲れてるかな…? 私も風呂に入って寝るか…)


 フランクも男性用の浴場へ向かい、さっさと入浴を済ませるとベッドに潜り込んで眠ったのだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「急いで下さい! 明日か明後日(あさって)には聖女様が王都に来られます! (ばん)(ぜん)の準備で、お(むか)えするのです!」


 王都の大聖堂では、司教や司祭が各侯爵家や伯爵家から集まったメイド達に指示を出していた。

 メイド達は指示に(したが)い、テキパキと作業を進める。

 聖女の為に用意された部屋を掃除したり、食堂や浴場を清掃したりと(せわ)しなく動き回っていた。

 また、聖女が来訪(らいほう)する事を伝えられた王宮も、大慌(おおあわ)てで聖女を(むか)える準備に追われていた。


「急げ! 明日か明後日(あさって)には聖女様が王都に来られるのだ! 大聖堂より王宮に住みたいと思われる様に、万全の準備を調(ととの)えるのだ!」


 反目(はんもく)しているワケでは無いが、王宮と大聖堂では、どちらが聖女に(きょ)(じゅう)して貰えるかで()(れつ)な競争意識が()()えていた。

 王宮は王宮こそが聖女の住まいに相応(ふさわ)しいと考え、大聖堂は大聖堂こそが聖女の住まいに相応(ふさわ)しいと考えており、どちらも聖女が現れると毎回の様に争いを繰り広げているのだった。

 しかし、互いに仲が悪いという事でもなく、どちらも国の危機を救ってくれる聖女に住んで貰いたい(いっ)(しん)での事だった。

 その為、聖女も片方に定住する事を良しとせず、一定の期間で交互に住む事が慣例(かんれい)となっていた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「…と、王宮と大聖堂では毎回の様に争いを繰り広げているのです。まぁ、ある意味では平和な争いなのですがね…」


 王都に向かう馬車の中、マッカーシー大司教は疲れた表情でソフィアに説明する。


「そ… そんな… 私なんかを住まわせるのに(あらそ)いなんて… なんだか申し訳ないです…」


 ソフィアは今にも泣き出しそうな表情で言う。


「ソフィア様が気にする事ではありません。なんだかんだ言いつつも、互いに楽しんでいるんですよ? 結果的に、聖女様は両方に居住なさるのが慣例(かんれい)なんですから」


 マッカーシー大司教が言うと、ソフィアは(ふる)え出す。


「ど… どうなされました?」


「わ… 私なんかが王宮や大聖堂に住まわせて(いただ)くなんて(おそ)れ多くて… 旦那様の屋敷でのメイド部屋でさえ、私にとっては贅沢(ぜいたく)過ぎるぐらいです…」


 フランクが咳払(せきばら)いをしてソフィアのセリフを(さえぎ)る。


「ソフィア様、私の事を旦那様と呼ぶのはお()め下さい。貴女(あなた)様が聖女と()られた今、私の方が身分は下… 貴女(あなた)様の(しもべ)()()いますれば…」


「そそそそそっ、そんな(おそ)れ多いっ! 旦那様が|私を奴隷商から買われた以上、私にとって旦那様は旦那様ですっ!」


 言うが早いか、馬車の中でフランクに向かって土下座するソフィア。

 そんな彼女を一同は苦笑して見つめ、本当に聖女なのかと思ったのだった。

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