巣からの別れ
あれから、時間があっと言う間に過ぎました。
勉強では、この辺りの土地や食べれる物の話等、色々覚えるのが大変でしたが、その分身体に身に付いた気がしますね。
そしてやはり、私達妖怪の事もみっちり教え込まれました。
その過程で、人や物に化ける事が出来る変化の術の練習もしました。
これは妖怪全てが覚えられる訳ではないそうですが、妖獣には出来る者も多い技術だそうです。
私は試しに人に化けるのをやってみた所、なんと!一発で成功する事が出来ました!。
その時の外見は、今の鎌鼬の姿のように真っ白い髪と肌を持つ等違う所もありますが、前世の姿に少し面影がある綺麗な少女になりました。
ただ、見た目がどう見積もっても小学生中学年くらいなのは、妖怪基準の年齢ではこれぐらいという感じでしょうか?
変化の術は自分の認識が肝だそうで、今と前世が合わさった幼くなった外見をしていたのは納得です。
その時は幸い、白いワンピースも一緒に現れたので、その場で素っ裸になる事はありませんでした。
まあ、ここら辺には獣か妖怪ぐらいしかいないので、裸になっても得をする者は居ませんけどね……
それで、飯綱と野鎌も一緒に変化の練習をしていましたが、残念ながら二人は変化する事は出来ませんでした。
どうやら、人に化けれる伝承を持つ妖怪以外は結構大変みたいです。
他には、人の襲い方だとか、人に紛れる方法等の妖怪の基本を始めとして。簡単な四則演算や、ある程度の常識も教わりました。
それで今日は、生後からおよそ三ヶ月程経ち、とうとう巣立ちの日です。
朝一番に早起きして外を見ると、ギラギラとした熱を射している快晴の空が瞳に映ります。
空模様は、絶好の巣立ち日和と呼べるでしょう。
......私的には多少曇っていた方が動きやすいと思いますが、こういうのは雰囲気が大切ですからね!。
そんな事を思っていると、他の二人もやってきました。
「「おはよう〜」」
「おはよう、まだ眠そうですね?」
まあ、イタチって本来夜行性みたいですし、普通はこんなもんなんでしょうね。
ちなみに、何故昼に行くかというと、道中で厄介な妖怪に目をつけられないようにする為です。
夜に行動する妖怪は多いみたいですしね。
一度戻って、お母さんが採ってきた食事を済ませると、再び入口に向かいます。
その過程で、私でも持ち運べる小さな竹筒を持っていく為に、唐草模様の風呂敷に包んで入れておきます。
これは、鎌鼬が使う血止めと痛み止めのは薬だそうで、原材料は暦を焼いた炭だそうです。
これで何故治るかは、オカルトパワーとしか言いようがありません。
黒い筈なのに、塗ったら何故か無色透明になりますし…
最後に、お母さんにさよならの挨拶をします。
『皆が居なくなると少し寂しくなるわね...偶にでも良いから、里帰りに帰ってきてね。お母さんは何時でも歓迎するから...』
「「「はいっ!」」」
『飯綱は慎重過ぎる気がするから、少し大胆に動いてもいいんじゃない?。逆に野鎌はバカなんだからもう少し頭を使って慎重に動くように!』
「「はい…」」
『恵那は、少し人間臭すぎるから上手く妖怪に馴染める様に頑張りなさいね!、それと、貴方は日光に弱いんだから、ちゃんと日陰に入りながら気お付けて行ってね?』
「はい…」
人間臭いの所で少しドキッとしましたが、有り難い助言なので素直に聞き入れます。
『あとは……そうだ!!。巣立ちした後は、継続的に妖力が減っていくので、かなりお腹が空くと思うから早めに人間を襲っておきなさいね?』
「「はい!」」 「はい…」
一通りの準備の確認を済ませると、洞窟と外の影の境目に立ちます。
「それじゃあ行ってきます!!」
『行ってらっしゃい!』
そんな声を背に受けながら、私達は勢いよく外に飛び出しました。